天下の日—フィーア
「『空間転移』」
聞き覚えのある声だった。
私はその言葉を聞いた瞬間、手から冷たさが無くなる。カランと、大きな破片が落ちる音がする。少し遠くから。恐る恐る目を開けると、目の前では鎧が着々と組み上がってる姿を傍観していた。ふと、気配を感じ、右を見るとアブァさんが笑っていた。
彼は私を見て直ぐに杖を構える。
「おーい。鬼! 避けろよー! 」
アブァさんは鬼に危険を知らせた。
「いわれなくてもよけるわ! 」
と、言ってからカメオは膝を折って力を貯め、少ししてから近くの木に飛び移る。
「では、お仕置だ。僕の目の前で少女を傷つけよう
とするとはいい度胸だが、それは死に値する。『爆熱』」
鎧は組み上がっていく。
小さな火種がアブァさんの杖から出て来て、それは破片の中心行ったかと思ったら、私は目の前から見えなくなる。
「.........? 」
と、思ったら急に
「下がるよ」
『空間転移』と、アブァは付け足して言う。私達は道場の中に移動した。さっきまで見ていた門の方向を見ていた。
ボガン!
門の前、鎧がいたろう場所を中心に轟音と、火柱が上がる。
一体何が起こったのかと、私は驚いた。私は生まれて初めて目を丸くした気がした。後から聞いたが、あれは1日で溜まる魔力の5分の1ほど使う大技らしい(あの出力を1日で使えるようになるなんてどんな体よ。チートね)。
「さっさと行くぞー! 鬼ー! 」
「.........」
無言でカメオは木々をまるで地面かのように素早く追いついてきた。
「ねぇ。ニクスは? 」
「おっと忘れていたね。じゃあ行こうか」
当たり前かのように門の方向に歩き出す。
「え? 『空間転移』は? 」
「僕の魔力も制限がない訳では無いからね。あと、『空間転移』はそれこそ魔力を食うんだ。そうそう
連発していいものでは無いんだ」
あと、結構地球の法則変えてるからもしかしたらリバウンドがすごいかもだしね。と、怖いことを言う。地球の法則を変える? そんなこと出来ちゃうんだ.........。流石天才ってところか。
カメオは走り出す。
「何しに行くのよー! 」
「とってくればいいんだろー! 」
と、言ってすぐに加速し、門を抜けた。2秒ほどだった。ここは化け物しかいないらしい。空気蹴ったり、超火力を簡単に打ったり。主人公とヒロインが目立たないストーリーなんて作ってどうする気なのか分からない。
「ねぇ。アブァさん」
私は彼を見上げて言う。
「なんだい? 」
「いや、あーたんはどうしたの? 」
「あっちでおじいさんとタイマン中だよ。大丈夫。
心配しなくても死なない程度で頑張るさ」
何もすることが無いせいからか、彼は伸びをする。
「.........」
伝説の王がタイマン中ねぇ.........。
また、話がなくなってきたところでカメオは帰ってきた。持ってきたっていうよりは起こしたのだろう。
——
ペシペシペシペシ。頬を叩かれている。痛い。アナがやっているのだと思って目を開ける。
「おきたか。にんげん」
「? あ、ああ」
唐突な童顔。少し面食らった。
じゃあいくぞ。と、言って俺の体を小さいながら持とうとする。
「おいおい大丈夫だ。足の速さだったら遅いけどよ」
「ならむしろこのほうがいい」
と言って座っている俺の目の前にすわり、俺の足を手で持って自分の背中に背負う形—おんぷでスっと立ち上がる。
器用にカメオはクラウチングスタートの構えを取り、
「よーい、ドン! 」
と、掛け声は小学生風に走り出す—速!
俺の体はまるでアニメか! 漫画か! と、言わんばかりに風圧で後ろに倒される。そんな、腹筋が強いわけではないので、背骨がイかないようにするための最低限の力しかない。
足を持たれていることで、安心はできるが、それこそ首の皮一枚だ。
「ついたぞ」
俺はやっと降ろされた。まぁ、さっきの首の皮一枚をあっさり千切られ、尻もちを着いた。
俺は船酔いというよりは、酸欠気味で気分が悪い。
「お帰り。ニクス、カメオ」
「あ、うっ。おう。寝てたわ」
俺は少しの吐き気と目眩を我慢して言う。
「じゃあ行こうか。ニクス君。鬼。アナ君」
なぜ鬼? あー昨日あたり2人(アブァとあーたん※雨の日参照)に任せた時か。
——
師匠(絶対呼びたくないけど、名前が出て来ない)家の中に入ると、案の定防具(残り50体くらいかな? )がいた。アブァとあーたんが倒してもこれまでしか減らなかったみたいだ。
「ニクス君。ここには全員いる。切り刻めるかい? 」
「ん? ああ。魔力のほうは、無くなっていいか? 」
「僕の媒体をあげるからいいよ」
「んじゃ、『炎爪演舞』」
とりあえず、考えてみたさっきの技名。必殺技。ていうか、魔法っぽい攻撃はこれしかない(殴る、ジャンプする等はなんか違う)。
数十秒後。
「? なんでだ? 」
鎧は呆気なく全部壊れた。さっきの再生能力はどこへ行ったのだろう。
「ニクス君。こいつらは全員、神様だよ」
「え? は? 」
「だから、神様。物に憑く神。付喪神。正確には付
喪神にしたのかな? ただの神を」
「は? え? マジで何言ってるの? 」
「だーかーらー。神を魔法陣で、鎧に定着させた
の。だからその魔法陣を壊せば良かったのよ」
「アナ君の言う通りだ」
先程、俺は壊し方が雑だったということだ。
一体でも残してしまうと、神は他の力でどんどん強くなれるらしい。捕食みたいな感じだ。
そろそろ夜が明けるのだろう。月は西にかかっていた。
——
家の方ではあーたんと、師匠はいなかった。
「てことは.........」
ということで、俺らは道場に着く。前回戦ったのが家だったから居るものだと思って入ってしまった。
アナと俺が2人でドアの前に立ち、アブァとカメオは後ろにいる。
開けようとすると、
「でっ! 」
「うるさい」
「うるさいって.........」
開けようとしたら何かに弾かれただけなのに.........。少し痛かったんだけどなぁ.........。なーんて言ってないから分からないだろうけれどさ。
「アナ。ならお前が開けてみろよ」
「いいわよ。『解除』」
満を持して唱えた魔法は、効果をなさなかった。そして、手を弾かれる。
「効かない.........? 」
自分の魔法が効かなかったことに驚いてやがる。
どんだけ自身があったんだよ。
「ダメだよ。僕が開ける。『絶対解除』」
俺の肩を押しのけてアナと俺の間に立ち、手に紫色の何かを纏う。恐らく、魔法の効力だろう。それで触ると、容易にドアを開けてしまった。
「お前はなんでも出来るな」
「それは皮肉かい? 」
当たり前だろ。と、心の中で言う。
「それなら後にしてもらおうか」
聞こえてたの忘れてた.........。ホントになんでも出来るな.........。
入ると、それはそれは大きな音が中で響いていた。




