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同居から!?始まる魔法戦争  作者: 月光月軍
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外伝—人造の人間 fin


起床。私は体を起こす。起動確認はそれだけでいいだろうと、博士に言われたことを思い出す。


「あ」


体温—平常。いけないいけない。忘れるところだった。しーんとした部屋にもなれた。といっても1年。1年かかった。すぐになれると言っていた博士もいないし、博士が言っていたのかさえ明確に覚えてはいない。私は彼女がいなくなってからすぐに片付けをした部屋は思ったより広く、スッキリした。

私はこの1年、1人で朝起き、買い物に行き、食事を作り、おしゃれというものに触れ、人情というものに触れた。とても良い経験だった。気がする。恋に引き込まされそう(正確には夜の店に引き込まれそうになっただけだが。しかも、それを力ずくでひっぺがして帰った)にもなったことはあまりいい思い出ではない。

本を手に取る。見た事のある題名。私は部屋にある本を全て読んだ(博士の記憶に無いものだけ)。魔法のことはあまり勉強できなかった。でも、この世界で生きていくための知識はしっかり備わった。

私は朝ご飯を用意する。


——


「ごちそうさまでした」


この国ではご飯後にこう言うのが定石らしい。

私は最近健康志向なので(本の流行りに乗っているだけだが)、ジョギングに行く。ピッタリの寝間着から少し大きめのジャージに着替えて靴を履く。ドアを開けると、日光がとても眩しい。1度戻ってサングラスをかけてから行く。


私の家の近くにはあまり家がない。というか博士はしっかり人里離れた場所で買い物をしていたのかと初めての買い物の時に驚いた。

走っていると、地面が少しぬかるんでいるところがあり、走りづらい。水溜まりも軽やかにジャンプして避ける。山中は結構足場が悪く、鍛錬になる。まぁ、目的がないのであくまでただの鍛錬だ。強いて言うならもしかしたら私も選定戦争に参加するとき、山中に逃げたら私のほうが有利になる可能性もある。私はいつも来る、山の中にひとつ、ぽっかり穴が空いたように木がない場所に来る。近くにある木を正面にして集中する。


「『衝撃拳(ショックナックル)』」


木が私が触らずに、私の手の周りに3ミリにも及ぶ激しい波によって破壊される。見た目としては分解に近い。


「お? 」


やばい。木がこちらに倒れてくる。


「ズドーン! 」


多くの鳥が羽ばたく。木の葉がまう。

私は簡単に避けた。華麗に避けた。

こんな感じで毎日のように木を倒すことで穴が空いた。今日はもう1発。近くにある木の枝を取って構える。


「『衝撃波(ショックウェイブ)』」


正面の木に当てようとしたが、少しズレてしまい、別の木に当たる。

私の手にあるはずの木も崩れる。


「ズドーン」


「やっぱりダメね。全然定まらない」


やっぱりもっといいもの使わないとね。と、また独り言。生憎、私の魔力は音だし、博士はあまり多くのものを遺してはいかなかった。強いて言うならあの槍だが、全然使い物にならなかった。スーパーに行って似たようなものを売っていたので使ってみると、技を打った瞬間に崩れてしまい、またこれも使えなかった。


「帰ろ.........」


こんなことをして怒られないかと言われたら、1回だけ怒られた。でも、私には博士の記憶の中にここの土地を結構買収していたので、土地の権利書を見せたら静かになった。まぁ、どうせ1人じゃ何も出来ないからその人や、他の人に土地を貸していたりして、結構収入がある。

持つべきものは土地だなぁ。と、(金銭面では)思った。


——


「おー。おかえり」


私は家に帰ると、そこにはいた。白衣で、黒髪、長髪の女性が。博士が。ドクトル博士はそこにいた。この1年、やっと普通の生活に慣れてきたというのに帰って来てしまった。いっその事、帰ってこなかったらそれはそれで割り切るつもりでもあった。


「は、はか.........せ? 」


「どうしたの? アナ」


私は涙を流していた。初めての感覚で気づかなかったが、泣いていた。もちろん嬉し泣きだ。

涙を拭ってから、


「おかえりなさい」


私も博士も帰ってきた。


——


「はいこれ。選定戦争は辛いね。だめだった」


「勝てなかったんですね.........」


私は久しぶりにコーヒーを入れる。暑いのでアイスたっぷりで。


「ありがとう」


と、彼女は微笑み、


「はい」


と、私も微笑む。


「どうだったんです? 誰に取られたんですか? 「奇跡

の輝石」は」


「え? 」


彼女は驚いたような顔でいる。私はそんな変なことを聞いたつもりはなかったのだが、以外だったらしい。


「えっとね.........。そうそう。サリエルとかいう堕天

使風の奴にとられちゃったんだよね」


と、彼女は苦笑いで言う。というか上手く笑えてさえいなかった。口元はそうでも目は笑っていなかった。.........気がした。


「博士、でもどうやって逃げてきたのです? お仲間

もいたでしょうに.........」


「だから、私は勝ち組ではあるの。勝利したチーム

なんだから」


「え.........。でも」


「そう。勝った。勝ち組だった。でも叶えられるの

は1人だった。そして、ひとつだった。私以外の1

人は先に死んでしまった。他の2人は生きていた

が、サリエルと対立し、死んだ」


で、私はあいつに譲った。譲るしかなかった。と、悲しそうで、悔しそうに言う。でも、こころなしか口角が上がっていた。—2人?


「2人って博士以外に4人も仲間がいたのですか? 」


「ん? やだなぁ。聞き間違いだよ。1人だ。1人」


聞き間違え.........たのか。私は聞き間違えたのだろう。


「ねぇ。私の願い、受け継いでくれない? 」


と、彼女は切り出してきた。


「なんでしょう? 私は不死なんてごめんですよ」


「いや。違うよ。私が受け継いで欲しいのは神具だ」


と、言って彼女は綺麗になった部屋を荒らし出す。本を棚から出し、薬品を適当な試験管に入れ、いつもの風景に一瞬(正確には1分くらいだったが)キレイだった、いつもと違った家を。私の家を、すっかりいつもの博士の家に戻してしまった。

そして、本棚と全く関係の無いクローゼットに私が閉まっておいた鉄の槍と盾を引き寄せられるようにして探し当てた。


「ダメじゃない。こんなとこ入れたら」


「.........」


まぁ返す言葉もない。強いて言うなら、「邪魔でした」の一言だろう。—言わないけど。


「よし、じゃあさっさと始めますか」


「何をですか? 」


「契約だよ。女神とね」


——


私はとりあえず、禊をする—なんてこともなく、何もせずに魔法陣の中に2つの道具を入れる。


「心の準備ができたら『起動(スタップ)』ね」


「はい」


深呼吸をして、あまりにも強い神性に耐えるための準備をする。

魔法陣をなぞり、


「『起動』」


と、唱える。何も起きないな.........。と、思った次の瞬間、魔法陣は槍と盾を吸い込んだ。そしてその勢いは留まることを知らず、私までも吸い込んだ。


——


「ここは.........」


私は見慣れない神殿の外にいた。


「え.........」


考えろ。吸い込まれたんだ。魔法陣の世界? いや違う。おそらくあの槍と盾の持ち主の槍だ。


「さっさと済ませよう」


私は意識を前に向ける。玉座には博士? いつもの白衣じゃなくて、金装束だけれども.........。


「え、ここは.........」


いきなり、神殿の中に入ってしまったようだ。正確には転移な気がするが。物のない、質素なのか、貧乏なのかわからない部屋だった。そしてだだっ広い。1aくらいありそうだ。


「じゃあこれを持って」


そう言って彼女は槍と盾を私に持たせる。この前の鉄の槍とただの盾だ。でも、いつものより、結構重い。まぁ、身体能力は少し上がっているので大丈夫だが。


「大丈夫? 重くない? 大丈夫ならいいけど」


私は何も反応しなかった。なぜかと言われれば重めだったというのと、思いが少し重かったからだ。


「じゃあさ、持ったら『契約(コントラック)』」


よし。さっさと終わらせよう。

深呼吸をして、


「『契約』」


——


「.........? 」


「お、やっと起きた」


「博士.........? 」


ただの博士だった。訂正、いつもの博士だった。

私は体を起こすと、違和感を覚えた。少し体が重い。


「え? 」


私は金装束だった。右側には金の槍、左側には盾がある。まぁ、盾はいつもの、ただの盾は綺麗で、透き通ったガラスのようなもので出来た盾だった。

盾を手に取って見ていると、


「あー。それはね、イージスの盾って言って凄いん

だよ〜。なってったって私が使ってたのと全く一緒

なんだしね」


「ふぅん.........」


いつからあったものだろう。イージスの盾といえばやはりアテナの盾ってことだろう。


「バリン! 」


博士の定位置ともいえる、いつも座ってるの近くの窓が割れる。まるで、博士を狙うように。次の瞬間、黒い玉が入ってきて、博士の体をいとも簡単に貫いた。

彼女は驚いたような顔ではなく、笑っていた。

死ぬ間際も笑うのかこの人は.........。幸せな人だとも、恐ろしい人とも感じた。


「アナ。あれ.........」


最後の力で彼女は外を指さす。私はすぐに駆け寄り、外を見る。黒き翼、黒い槍、黒い装束、仮面までもがのいかにも堕天使のような人だった。否、その体はもう、神具そのもののようにも感じた。人ではなく—神。ただの神。ある意味人外だ。


「お前、博士を.........! 」


私は怒りという怒りを振り絞って力に変える。


「そう焦るなぁ。いくらでもぉ、やれるようになる

さぁ」


やれるねぇ。いくらでも殺らせてもらえればいいのに。まぁ、いくらでも()りあうという意味だろうが。

でも、私の力はそれだけでは収まらない。収集つかない。私は精一杯の力を尽くして叫ぶ。


「『衝撃波』!!! 」


私の放った魔法はあいつが手で、立派な装飾品で相殺した。


「だからぁ。またでいいでしょぉ? 」


「.........」


私の技は、遠距離技はこれしかないので万策尽きた。勝てない。殺されるかと思ったら、


「またねぇ」


彼か彼女かさえもわからない、あいつは空気を蹴るようにして飛んで行った。

まんまゲリラ豪雨のように一瞬で終わった。激しく、短時間で終わった。


私は家に帰る。アイデンティティのはずの人が死んでも、私は何も思わない。こういう時、小説ではどうしてるのだっけ.........。


泣いていた。


その物語では。


私は泣かない。


泣けない。


泣き方、泣く理由が、


全くわからない。


ああ、


私は


不完全だった。


「悲しみ」という


感情がない。


まるで


人形のように。


「あなたは人になりなさい。そして、選定を受けな

さい。そうすれば分かるはずよ.........」


と言って彼女は事切れた。


——


起床、体温確認—平常。動作確認をしようとすると後ろに気配を感じた。


「.........」


鼻息? まさか.........。振り向くとニクスがいた。


「k、き、キャー! 」


おっと先に手が出た。どうしよう。どうしよう。平手打ちしちゃった。

逃げるかな。


「あ、ごめん。つい.........。じゃ、じゃあ。先にリビ

ング行かせてもらうわ」


どうしよう.........。どう誤魔化そう.........。


「ニコちゃん。おはよう」


「あ、アナさんだったんだ。やっぱりねー」


私は生まれてから3年半がたった。もう1人前にこう戦っている。私は博士を忘れない。あの堕天使—サリエルも忘れない。


ありがとう。博士。


最後に言えたら良かったと、よく思う。しかし、私の悲しみは伝わらない—だって悲しくないのだから。そんなありがとうを彼女は喜んでくれるだろうか。


私はいつまでも考え続ける。でも、それが終わるのもそろそろだと、私はまだ知らない。


会いたいなぁ。


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