外伝—人造の人間 fir
私は目覚める。体温確認—平熱。体も上手く稼働する。気温は2度くらいだろうか。とても肌寒い。ベッドから見える窓から外の様子を伺うと昨日までの雪が嘘のように晴れていた。
2度寝をしようとすると、
「寝てないで起きなさい」
「.........」
コーヒーを片手に、もう片方の手に紙を持った黒い長髪の白衣姿の女性が言う。
私は無視して寝る。
「無視してるんじゃないの。起きなさいよ」
私は人造人間だ。だからといって別に人間と全く違うと言われればそうでは無い。なにせ人に造られた人間というだけで、親が子供を産むようなものだと私は解釈している。性別も、思考も、感覚も確立されている。ほぼ完璧だ。しかし、私は欠けている何かを知らない。1つは体、人間のような外見なだけであって、内蔵や、生殖器等の人間の中に当たるものを持っていない。人を再現する(だから人間だってのに)ため、博士は私に人間と同じように「血」だけは与えた。血の基本元素プラス彼女の血を混ぜたものだと言う。だから私はお母さんと呼べと言われているが、
「ドクトル博士。おはようございます」
「おはよう」
私は布団から出る。
彼女は最近になって受け入れてくれるようになった。前までは「ドクトル博士」と言うと、「お母さんでしょ」と、返してきたものだ。
「しっかりご飯を食べてから仕事手伝ってね」
と、言って彼女はここ(リビング兼寝室)から研究室の方へ向かう。
「はい。すぐに行きます」
私の体はしっかり栄養を取らなければ人間と同じように死んでしまう。本物の内蔵がなくても、それと同じような器官を作ったそうだ。もはや人間のようだが、あくまで作ったのは彼女だ。それを私はコンプレックスとは思わないし、人間だからあっておかしくないと思う。あと、傷つけられたときにバレない可能性が高いのは人間を作るなという、魔術協力連合の意に反することからバレづらいのはありがたい。というかそのために彼女がそこまでして作ったのだろう。
私はその場にあった、パンを咥えながら、朝のホットミルクを用意する。
「ふぅ」
朝の一時はとても楽しい。と、いうのもこれからがとても大変だからというオチがある。
「そろそろ時間よー」
私ができる仕事の時間だ。
「はい。すぐに」
——
私の仕事は博士の手伝いだ。ある種博士の作った手伝いロボットのようなものだった。
「やって」
私はその司令を受けるごとに実験体に致命傷を与える。私の仕事はそれだ。
不死の研究。それは、禁断の呪法でも手に入らないだろう。不死の象徴、フェニックスが有名だが、不死といえば○○というものはいくらでもいる。ナメクジや蛇など。
——
彼女は命の尊さを知っている。私も知っている。知らないはずがない。だが、尊さが必要とは思わない。尊さは考え方であって、別にそれが確実に必要なものではない。人の命が有限なせいなのだ。せいというと、あたかも自分は関係ないように聞こえるが、彼女はそれが気に食わないのか、不死を求める。
「永遠に生きられればこんな未練ダラダラの世界に
も踏ん切りつくような時が来るのかな」
だそうだ。
持論としては、知らないことを知っていくうちに自分の無知を知っていく。その連鎖は終わらない。知っていることも、忘れてしまえば知らないこと。永遠に終わらない。しかし、全てを覚えた。全てを知った瞬間には何が起こるのだろう。何も起こらないだろう。神様が降りてきて「次は君だ」とでも言ってくれれば幸せだろうが、そんなもの信じて永遠という時を流れたくはない。何も起こらなかったときはいっその事、宇宙に出るだろう。それでまた、永遠を過ごす。それこそ、死にたくなったらブラックホールにでも飲み込んでもらおう。それで消えれたら踏ん切りつくだろうし。消えれなかったらブラックホールを全て知ってまた永遠。全知全能になって、世界を壊そう。宇宙を壊そう。私はそれによって消えることができるかもしれない。果てが見えない。
永遠とはなんなのだろうか。不死とはなんなのだろうか。
最早、死ねないただの呪いだ。
——
「まぁ〜たダメか」
「そうですね。死にました。絶命しました。絶命さ
せました」
「3回もいわなくていい。私が辛くなる」
彼女は俯く。辛いと言ったくせには少し笑っていたような気もした。
私が今回殺したのは人間の中で1番再生力の高い肝細胞を繁殖させた。いうなれば「合成獣」のひとつ。ネズミを媒体にしたことから、ねずみ男の不死ver.とでも言ったとこだろう。
私はしっかり心臓を刺した。
これで絶命しなければ成功だ。
で、今回は失敗だ。
「どうすればいいだろうね」
「わかりません。私、博士の知っていること以外ま
ず知らないですし」
「そりゃそうだわ。自慢の娘だものね」
彼女は私の背中をボンと叩く。その反動で私は転びかける。
そして、私のクローンのようなものだしね。と、付け足す。
私の知能は彼女より優れていない。まずまず、私は外の世界に行かせて貰えないから実際のところ、外のことは本でしか知らないくらいだ。
「ねぇ。生まれてからどのくらい経つんだっけ? 」
「私は1年です」
私の容姿は12歳くらいで止まっている。何故この姿にしたかと、博士に聞いたら、
「いかにも子供らしい姿が私は好きなのよ」
と、言っていた。私としては、手伝いのための身長が足りなかったり、早く走れなかったりすることが少し大変だ。
「1年か.........。もうそんなに経ったっけね。嫌だね
ぇ。歳は取りたくないもんだ」
「貴方は十分若いですよ。少なくとも容姿は変わっ
てないですし」
「そうかな? 嬉しい言葉だね」
彼女は素直に笑ってくれた。疲れが感じられないとれなかった。
「そろそろ私の体、変えて貰えませんか? 」
私は殺したネズミの死骸を虫かごに入れる。
「ん? それは無理だ。今作り途中だからね」
それは初めて聞いた。私は驚きを外に出さずに。
「ありがとうございます」
と、一礼。
しかし、博士は私の体をどこで作っているのだろうか。この古い小屋のどこに秘密の研究室があるのだろうか。ちなみに私はその場に行かせて貰えない。私はこの家の中の掃除やらなんやらを全て担っているが、私はここ以外の研究室を知らない。
彼女は少し暇になったのか、久しぶりに、
「ねぇ。あんたは、名前はいらないの? 」
「私はいらないと思います。私は貴方のことを博士
と呼んで、貴方は私をあなたと呼べばこの2人の家
ではいらないのではないでしょうか」
「ふーん」
この会話も一年以上繰り返している。私は鬱陶しいと思うが、反論するほど。「鬱陶しいな! 」と、いうほどの事でもない。
彼女はよく分からない薬品を調合し始める。ふと、思ったのは「魔女みたい」だったが、声に出せば半殺しもいい所だっただろう。
「ねぇ。そろそろあなた、魔法覚えない? 」
私は魔法と聞いて驚いた。ファンタジーの中でしか(私の知識ではなく、彼女の読んだ本だが)知らなかったので、私は正直面食らった。
「は、はぁ」
「どう? 1年すればちゃんとこの世界に慣れているは
ずだし」
「いいですけれど、方法は.........」
「私の血を受け継いでるあんたなら楽勝よ」
と、彼女は私の可能性を信じている。私にそんな力が.........。私は小さな両手を開いて見る。
——
「じゃあ、この石を握りなさい」
「は、はい」
虹色の石が渡される。綺麗だなぁと、思っていると、
「それ、逃げちゃうからしっかり持ってて」
「は、はい」
私は急いで石を両手でしっかり握る。逃げるというのはどういう意味か分からなかったが、従った。それが私の仕事だ。
「『解除』」
その瞬間、私は体の中でながれていた音楽を感じた。不思議だった。
「凄いじゃない。魔力結晶なしでこれの魔力消費に
耐えられるのは」
「違うんですよね。博士」
「はいはい。謙遜するなんて子供らしくないじゃな
い」
私はそんな言葉をいにも介さず博士を見つめる。
「そうよ。私のせい。私のおかげよ。私の魔力量の7
割近くあげちゃってるせいね」
一体の人形に使いすぎだといいたかったが、私はそれを使えと言われているということなので従った。
「私の適正って何だったんですか? 」
「あれ? 分からなかった? もちろん、音魔法だよ」
私の体には音の力が備わっているそうだ。
ここで、私の体に、脳に残っている知識を語ろう。
音魔法とは、基本的に空気を振動させる魔法だ。その波の幅を調節することが魔法の練習だそうだ。
「私はどこで練習すれば.........」
「大丈夫よ。すぐできるから。また次の実験体にでも使ってご覧よ」
私の血が入っているあなたなら力を使いこなせないはずがないからね。と、続ける。
私の力は博士の力だ。そして私の力は彼女に献上するためにある。一心同体ならばもっと効率的かもしれないが、2人いることでの効率化もありだろう。
私の存在意義は博士の為でしかない。それ以外にありえない。私は博士の為に死ぬ。そう誓ったのを思い出す。
「ねぇ。少し手伝って」
「はい。少しお待ちを」
博士の為に死ぬけれど、今のまま生きていたい。今のまま生活していたいと思う。
いつものように。




