表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同居から!?始まる魔法戦争  作者: 月光月軍
1/38

始まりの日、疑問の日、出会いの日

パソコンの方々見辛いと思いますが、ごひいきにおねがいします。あとは始めの10話くらいは1話ごとが長いのでご容赦を。


 この世界の物事全てに表と裏がある。


 例えばカードやニュース、人の心など。


 あとは神様の心とか。



 始まりの日


「ピピピピッ ピピピピッピピピピッ」


 目覚まし時計が鳴る。

 午後1時起床。今日から高校は夏休みになる。と、言っても何もすることはなく、宿題も全然やる気がしない。昨晩は友達と遅くまで遊んで、まだ寝足りないくらいだ。いっそ寝てもいいかもしれないが、それはなんか贅沢すぎて気が引けてくる。

 外へ散歩するのは面倒臭いが、プリペイドカードが底を着いたはずなのでコンビニに行くことにした。


——


 洗面所にて。

 一応、寝癖を見る。アホ毛以外は全然平気だ。アホ毛は良いよね。トレードマークになる。可愛く見える。ま、可愛さを追い求めている訳では無いので、なくてもいいのだが、切っても切ってもまた伸びてくる。一応、顔も見ておく。あーあ。もーちょいかっこよければなぁ。

 そんな独り言を溢さないようにさっさと家を出た。


——


 コンビニまでの距離は遠くなく、近くない。道中、景色に意識を向けると真緑の木々が、夏を告げていた。とても風が気持ちいい季節になったなぁ。と、思っているとコンビニに着いていた。


「ポテチは量が多いけどなぁ。グミの方が食べやす

 いかな」


 小さな独り言。ゲームをやるにはポテチのように油や粉のつくものは向いていない。やはりここはグミだろうと思ってカゴに入れてレジへ行った。帰ってからはゲーム三昧だ。


——


「寝てた.....」


 起きると午後11時。寝落ちしていたらしい。もう少しくらいはゲームができそうだ。課金しようとすると、新たな事実に気づく。


「あ、昼間に俺プリペイドカード買うの忘れたのか」


 昼間はお菓子に気を取られていた。どうしよう。


「行くか......」


 重そうで、そうでもない腰を上げる。

 部屋を出ようとしたとこで妹に見つかった。俺の部屋の前で待機していた訳ではなく、寝に来たところを鉢合わせたようだ。


「どうしたの兄ぃ。珍しくこんな時間にどっか行く

 の?」


「ちょっちコンビニ行ってくるわ」


 妹はいらない詮索をしてくる。いつもそうだ。でも母にチクるほど腐っていない。深夜(?)にコンビニ。ベタだなぁ。なんて思いながら道を歩いていると、


「ん?」


 こんな時間に出歩いてる人なんてざらにいると思うのにコンビニにはおろか道中にも大人1人いなかった。まぁ、ありえない話でもないと別に気にしなかった。店員さんも1人。本当に誰もいないようだ。

 5000円のプリペイドカードを手にレジに行くと、金の装いをした美しい人がよろけながら入って来た。悟った。これは夢だと。まぁおかしいよな。午後の9時に寝て、午後の11時に起きるなんて俺にとっちゃぁ奇跡に近いことが起きている。成立するならば夢だけだろう。片手には槍? のようなもの。細長くて、鋭い、とても綺麗な金色の槍。

 次の瞬間、胸にその槍が刺さった。


「っ!?」


 夢のはずなのに痛い。現実かよ。槍はすぐに引き抜かれる。俺は患部を触る。吹き出した血を止めるように。生暖かい......。


「血......」


 目眩もしてきた。俺は左腕から倒れ込む。もう生きてられるのも少しだろう。目の前に店員さんらしき女性も倒れてきた。もう目も開けられない。記憶が走馬灯のように蘇るかと思ったらそうでもなく、俺は高校生で死ぬんだという事実しか分からない。悪い事はしてないからやっぱり天国だよな。あ、もしかして異世界転生か? もうこんなことを考えるしかなかった。妹にも母さんにも父さんにも申し訳ない。


——


 何も無い。白い空間。あれはなんだ? 光の塊か?いや火の塊か? 飛んでくるみたいだ。大きい。あれは鳥か? 突っ込んで来る。火の鳥が俺目掛けて突っ込んでくる。


「熱いなぁ。まだ苦しめというのか。死んでいるの

 に」


 その炎に焼かる。かすれているが、意識はある。痛みや熱は感じないが、焼ける。手を見ると、黒く黒く炭になっている。もう崩れそうだ。やめて欲しいな。いくら地獄でも。高校生だよ。まだ世の中知らないんだよ。楽しかったけど友達と一緒に死ねたら良か——


 俺の意識は途切れた。




 疑問の日



 起きるとそこはコンビニだった。目の前には倒れている女性がいるはずなのにいない。

 自分の周りにあったはずの水溜まりのようになっているはずの血もなくなっている。

 俺は立ち上がった。が、


「やべぇな......。また意識が......」


 最後の力で時計を見た。てかもう足も手も力が入らなくて目の前の時計みているだけだが。俺はまた倒れる。午前4時35分。

 そのまま意識が消えた。


「大丈夫ですかー大丈夫ですかー」


 朦朧としている意識の中、誰かが話しかけてくる。


「......う、ん、はい」


 今思えばなんて言えばいいのか分からなかった。だって母さんがいれば「母さん......」でいいし妹だったら「ニコか?」みたいな感じでいいはずだけど隊員さんだとして分からない。


「お、気がついたみたいだな。ここ病院だよ。いやー

 良かった。お母さんさっき忙しいって帰っちゃった

 んだけどまた呼ぶ?」


「ありがたいですが大丈夫です。多分仕事なので」


 来て欲しくないという思いもあったが、本当に迷惑は掛けられないという思いが大きかった。


「びっくりしちゃったよ。 貧血を起こした高校生だな

 んて。どうしたの君?」


 全く知らない情報ばかりで整理が追いつかない。


「あ、大丈夫だよ急がなくって。全然整理つかないだ

 ろうし。でも君あのコンビニであった殺人事件の容

 疑者扱いだから後々警察に事情聴取されるかもしれ

 ないけど」


 はいまた新情報ー。ほんとこういう時ってどうするべきなんだろう。


「わかりました。ちょっと整理するので考えさせてく

 ださい」


「じゃ頑張って」


 おしゃべりなおっさんは帰って静かになった。てか、「頑張って」ってなんなんだよ。まぁいいや。まとめてみよう。


昨日 11時頃

 家を出発し、コンビニに向かう。


11時過ぎ

 コンビニに到着。ここまでは順調。


11時30分頃

 金の装いをした美少女降臨。刺される。同時にコンビニ店員が刺されて死ぬ。


 この間に焼かれる? 意味わからん。


今日 4時半頃

 起床? と言うよりは生き返った感じ。貧血でまた倒れる。


 どうしよう。よくわかんない。


「あーもーやってらんないなぁ」


 頭をわしゃわしゃかきながら独り言をつぶやく。今の時刻は午前7時半前。案外時間が経ってない。よく分からないので情報収集のため人をよんだ。


「あ、さっきの」


「今田だよ。急にどうしたんだい? 聞きたいことな

 ら言って」


「じゃあ俺っていつここに運び込まれたんですか?」


「6時頃かな。でも変だったよー。だって衣服には綺麗

 に切られたように傷があったし、血が普通の貧血よ

 り全然酷かったからね。もう逝っちゃったかと一瞬

 思ったよ」


 笑えねぇ。でもこんなすぐ意識が戻るんならそうでも無いのでは?


「これで終わりでいいの? 気になったらいつでも呼

 んでね。ちなみに早めに退院できそうだって言うの

 と、今日の8時半から事情聴取らしいから頑張って

 な」


 あのおっさん他人事みたいに言いやがって。


「1時間かぁ。暇の極みだな。あれ?携帯は......ガサガ

 サゴソゴソ。あったぁ。やべぇ母さんからもニコか

 らも連絡来てる。面倒臭ぇな」


 返信などをしているといつの間にか時間が経っていた。


「すみません。桐山ニクス君いますか? 」


 忘れていた。8時半から取り調べだった。


——


「ありがとうございました」


「いえいえこちらこそありがとうございました」


 やっと終わった。


 情報をまとめてみると、コンビニ店員は死んでしまい、俺と店員を殺した人を映していたはずのカメラは午後10時に既に何者かによって壊されていて、発見には至らなかったこと、俺は11時にコンビニに行ったが、その姿は確認されていなくて、最初に目撃されたのは午前5時頃だったこと、店員さんは0時には発見され、その時俺はいたはずなのだがこの世界にいなかったことになっていたという情報だった。


 なんとも信じられない。それにしてもあの子は誰なのだろう。高校生くらいだった。......気がする。


「じゃあ思い出したり気になることがあったらこの電

 話番号に電話して」


 警察の人はそう言って去り、入れ替わるようにしておしゃべりな今田のおっさんが入ってきた。


「お疲れ様。君ちょっといいかな? 退院のことなん

 だけど予定だと明後日なんだ。まぁ結局は軽めの貧

 血だからね。なんか警察の人は君に色々聞いていた

 けど君お金と携帯以外なんにも持ってなかったから

 殺人なんて できる気もしないし、証拠不十分で大丈

 夫だと思うよ」


 まぁ刑事ドラマの知識だけどね。と、付け足す。

 いつまでも口が減らない。まぁ悪い人ではないことはわかる。


「え、でもさっき酷い貧血って言ってましたよね?」


「あ、あれ? いやいや本気にしてたの? すぐ意識

 が戻るんだ、あんまし酷くないとわかってると思っ

 てたよ」


 コイツめ。お喋りはいいが、本当に笑えない冗談だったのでやめて欲しい。

 そう思っていると部屋のドアが勢いよく空いた。黒のツインテールが揺れる。まだ幼い顔つきの女の子。剣道帰りか、右手には大きなバッグを持っている。


「このぉバカ兄ぃぃぃ!」


 くぅ。うるさいのが来ちまった。幸いここの部屋に入院している人は俺一人しかいない。迷惑でしかなくなるとこだった。

 アレ? 今田のおっさんは......。あ、逃げやがったな。


「どうしたんだよバカ兄ぃ。昨日夜出てってからなに

 やってたんだょぉぉ」


 怒鳴ったり、心配して泣いたり。俺の妹はとても忙しくって感情豊かだ。俺としては嬉しいのだが、なんともうるさいのは欠点だ。


「んーえーとまぁ、ごめんなさい」


「感情がこもってない!」


 仁王立ちすんなよ。

 本当にこういうのが苦手だ。感情を入れるっていうのが。どうやっていいかわからない。


「外に行ったきりで心配させたあげく、事件に巻き込

 まれてしまいすみませんでした」


「よし! まーいーだろう! で、大丈夫?」


「うーん。ま、今は大丈夫だ。色々あって大変だった

 けど別にすぐ退院できるし、お前の顔見たら安心し

 たよ」


 俺は真顔で言ってしまった。かっこいいやつはこういうところで笑って見せるのだろうな。


「なんか損したなー。こんな元気になってるから。も

 う入院とか初めてでしょ? だからどんなくらいか

 なんてわかんなくて心配したー」


 ニコは可愛く笑って見せた。ニコッと笑った。どうしよう。こういう可愛いのに慣れてないからどうしていいのか分からない。妹は恋愛対象ではないが、可愛いとは思うのだ。


「ありがとう。あと帰らんの?」


 可愛いと思ってしまったら、だんだん一緒に居づらくなってきた。よし、帰らせよう。という魂胆だ。


「ふっふっふー。私は今日何もすることがなくて暇な

 のだ! ということでゲームで遊ぶぞ!」


 あー厄介。どうすれば帰らせられるんだ?


「いいだろう、大○闘で勝負だ」


 面倒臭いが付き合ってやることにした。


——


「あっという間だな。もう午後7時だぞー。そろそろ帰

 れば?」


「やだ。いま125勝129敗で兄ぃの勝ち越しだろ。逃げ

 るなんて卑怯だぞ!」


「卑怯で結構。母さんも心配するだろうし、さっさと

 帰れ。また今度戦ってやっから」


「そろそろ面会時間終了なのでよろしくお願いしま

 す」


「ほら看護師さんも言ってるだろ」


「約束だよ!」


 ムスッと顔を膨らませて帰った。


「やっと帰ってくれた......」

 

 あれほんとに中2か?って思うくらい中身が心配だ......。もう寝よう。なんか今日は疲れた。昨日はどこかで気を失ったけど、今夜はちゃんと寝れそうだ。




 出会いの日


 午前9時


「これで晴れて退院だな。二度と来ないようにしろ

 よ」


 ここは刑務所かっていうくらい送り方独特だな。でも今田のおっさんには世話になったので、


「お世話になりました」


 と、とりあえず言っておいた。おっさんは送り終わったらすぐ病院に戻った。


 病院から家までは少し遠い。夏の日差しは眩しく、蝉の音が一層暑さを引き立たせる。

 ふと周りに意識を向けると、


「ん? ここは確か市立第2公園。だっけ? 久しぶり

 に来た」


 俺は昔遊んだ記憶はそうそうないが、なんとなく。礼儀のような感じがして中に入る。

 開けているその公園には遊具と呼ばれるものはもう無いようだった。滑り台は手入れがされず砂塗れ、ジャングルジムも錆が凄い。ブランコは危険と書かれた張り紙と共にぐるぐる巻かれている。

 誰か女子がいる。高校生くらい?だ。1人でベンチに座っている。こっちを振り向く。

 俺はその子と目があった。

 気不味い雰囲気になりそうなのでさっさと退散しようと女子に背を向ける。歩幅を大きくして歩き出す。


「そこの君! ちょっといい? ねえ! まって!」


 大声で叫んでいる。まさか俺のことだとは思わず、無視していた。


「君」


 気にならない声が真後ろから聞こえる。

 ある程度離れたから普通の歩幅に戻そうかと思っていた時、既に俺の真後ろにいた。緊張感がはしる。足音がしなかった。......気がする。怖い。日本は目を合わせるだけで犯罪だったっけ?


「何のことでしょうか? 」


 もう関わりたくない。一刻も早く帰りたい。


「もう1回殺すよ。嫌ならついてきて」


 小声で言う。完全に脅迫じゃないか。しょうがない。ついて行かないと殺される。次生き返る保証なんてないからついて行くしか無かった。


「ついたよ」


 そこは数年前に廃屋となった工場だった。フェンスは飾りかっていうくらい簡単に入り込める。外は雑草がボーボーだが、中は案外キレイだった。


「ここに座って」


 対に置かれた椅子を指さす。


「まず、質問。なんで生きているの? 」


「名乗ったらどうだ。俺を拉致監禁する訳でもないだ

 ろうし、そのくらい教えて貰ってもいいだろ」


「ん? まー、そうね。言っても大丈夫でしょう。手

 塚アナ。高校生よ。今はこっちに遊びに来てる。じ

 ゃあこっちの質問に答えて」


「一応名乗っておく。桐山ニクス。質問の答えは分か

 らない。こっちも火の鳥に飲み込まれる夢を見たく

 らいで、なんも分からない」


「なるほどね。そりゃ〜死んでも生き返るわけだ。

 君、 憑かれてるね。これで確信がもてた」


「憑かれる? 何に。悪霊か? 悪魔か? ファンタ

 ジーは2次元だけにしてくれよ。......。マジ?」


 「はぁ」とため息をついてから、


「多分マジ。もう1回殺されてくれれば確信が持てるん

 だけど」


「いやいやいや。ないないない。絶対にない。この3次

 元で、化学が進歩してるこの時代で、もののけの類

 ですか?」


「うるさいわねー。じゃこれでどう? 装具解放! 

 アテナ!」


 彼女の体に金色の装身具がまとうようにしてなんというかくっついていく。次の瞬間目の前に現れたのは俺を殺した金の装いをした女性だった。


「マジかよ。当たってる」


 小さくつぶやいた。


「ん? 何? 聞こえなかった」


「いやいやなんでもない。考え事してた」


「ならいいわ。次は魔法を使って見せようか?」


 彼女は自信があるのだろう。もう既に顔がにやけている。


「じゃ、じゃあお願いします」


「音魔法『衝撃波(ショックウェイブ)』」


 彼女は槍を前に突き刺しながらそう叫ぶ。その槍の先から見えないが、分かる。空気の移動が。その直後、壁には小さな凹みができていた。驚いた。異世界に行かなくとも、こんなことができる人がいてしまうなんて。


「確かに本当にみたいだな。凄い。うん、凄いしか感

 想が出てこない。あ、でもなんで俺を殺したの? 」


 でも魔法ねぇ......。百聞は一見にしかずの実践をしてよく分かったつもりだが、なんだろう。わからないことが上手くわからない。


「うう。覚えてたのね。凄い軽い理由よ。まぁ私にと

 っては重大事項だからあれなんだけど。理由は見ら

 れたから。私の姿を。正しくは私のこの姿を。あな

 たも能力者ならば、わかるでしょ? 神具や魔法を

 見られたらいけないことくらい」


「でもなんでコンビニなんて行くの? それじゃあ普

 通見つかると思うけど」


「あそこには結界があって普通あの結界の中には誰も

 入れないはずなのよ。魔力を持つ人間しか入って来

 れないし、元々入っていたら寝てしまうはず。ちな

 みにあのコンビニ店員は魔力適正があるとても珍し

 い人だったていうだけだと思う」


「ちょっとまって。能力者って何? 俺も能力者? 

 魔力の適正?」


「あんたまさか知らないの!? 能力者なのに!? 家系

 は? 桐山なんては聞いたことないし。母方の姓

 は?」


 こいつ、もう俺が1回死んだという件、どうでもいいと見える。ていうか家系ってもう完全にファンタジーじゃん。少し楽しくなってきた。


「母方の姓は本堂家です」


「本堂家!? 魔術家系の王道じゃない。それこそ今回

 の戦争に参加できるだろうし、勝つことが出来ると

 思う。しかも君の神具は『フェニックスの炎』別名

 命の火。詳しくは知らないけど不死ってことね。火

 の鳥の夢から推測するにそのはずよ。でも不思議ね

 ぇ。私なんて中2のとき長女だからって神具アテナを

 受け取った時にもう詳しい話を聞いたのに」


 話がどんどん分からなくなっていく。


「俺はこれ(命の火)を貰った記憶は無くって、たぶん

 教えてもらってないのは祖父祖母は早くに亡くなっ

 たし、母さんからはそんな話を聞いたことない」


「そうね。その感じだと本当に教えてもらってないみ

 たいね。じゃ適正でも測ってみる? 測っといて損

 はないから。この石を握って」


 そう言って彼女は小さな虹色の石を握らせた。その石はとてもキレイだった。


「ちゃんと握ってないとそれ逃げるから注意してね。

 じゃあいくよ。あと危険だからちゃんと後ろに倒れ

 るのよ」


 マジで言ってんのかこいつ。危険て。てか了承なしでトントン拍子。前に倒れちゃいけないのもなんで? もうどうでもいいからはよ終われ!


「『解除(キャンセル)』」


「おいおいなんかこれ動いてねぇか? てか、え? 

 なんだよこれ?」


 俺の手元は、なんというか揺れた。どんどん体の力が抜けていく。


「大丈夫? まぁ無理もないわ。悪魔の石を握ってる

 しね」


「おいおいおい。なんちゅーもん握らせてんだ。おか

 げで今は一歩も動けねぇ。どうすれば治る。まさか

 俺を殺すためか?」


 どうやっても体は動かない。倦怠感だけが俺の体を作っているようだ。


「殺すわけないでしょ、未来の仲間を。ものの5分程で

 治るわよ。でね、結果はあなた力魔法の適正よ! 

 使うのは難しいけど頑張れば最強の魔法。練習して

 みる?」


「ちょっと待て。トントン拍子で進まれてもこっちが

 困る。まず、魔法のまの字も知らない俺に何を言っ

 ても分からないし、とりあえず5分待って」


ー約5分後ー


「で、動く?」


「とりあえずは」


「じゃあ何から知りたい? なんでも知ってることな

 ら教えるわよ?」


 情報が多すぎて何から聞いていいか分からない。


「魔法ってどうやったら使えるようになる? 」


「えーと、難しいわねー。力魔法なんてもう試す実験

 場なんてないしね。じゃあジャンプしてみて」


 超全力でジャンプする。


「30センチくらいかしら? 結構すごいんじゃな

 い? じゃあ次はこの石を持って『高く飛びたい!

 』と思ってジャンプしてみて」


 次は青い透き通った大きめの石を後ろにあるバッグから出して俺に手渡す。


「また魔力吸われないよな?」


「大丈夫大丈夫。はいはいさっさとやっちゃってー」


高く飛ぶ高く飛ぶ高く飛ぶ。そう念じて強く飛ぶ。


「!? うおっ高っ!」


「ニクス! 上! 上! 手を上に上げて! 」


 ゴン!

 彼女は大爆笑した。


「あーおもしろwそこまで飛べるとはね。全く考えて

 なかったわ。まぁ何メートル? 5メートルくらい飛

 んだかな? 」


「痛ってぇぇぇぇぇぇえええぇぇー?」


 何もしなくても下降していく。当たり前だ。あんな勢いで頭打ったらすぐに落ちるに決まっている。俺は地面にトマトのように弾け飛ぶかと思ったらアナにガシッと受け止められた。

 俺、こんな危険なものと知らずにやっていたことが急に怖くなる。


「あ、ありがとう」


「どういたしまして」


「......」


 心拍数が上昇し続けているようなので、


「そろそろ下ろせ」


「はいはい」


 と、命令した。

 お姫様抱っこをされていたのだが、そのまま離された。まぁ言ってしまえば尻餅ついて、背中を強打し、後頭部を打ちかけた。


「いいなー力魔法。そうやって飛べるの羨ましいな。

 音魔法じゃそんなこと出来ないもの」


「君の音魔法はとても強いからいいと思うけど? あ

 と、はいこれ。凄いねこの石のおかげ? 」


「そうよ。この石は魔力媒介で、これを持っていれば

 あなたの魔力とこの魔力を使うことが出来る。これ

 はあげる。でも制限付きだから注意して。この魔力

 結晶無くなるとあなたのまだ微力な魔力しか使えな

 いから。無くなったら言って。貯める方法があるか

 ら。そんで、明日から特訓よ! 色々教えてあげ

 る。私はここにずっといるから明日朝9時からここで

 特訓。いい?」


「わかった。だけど、なんでこんな場所にずっといる

 の? まぁ練習には適してるけど。ホテルにでも泊

 まれば? 」


「お金がないのよ」


 小さく言った。変な空気になってしまい、申し訳なくなった。

 これは言ったからには言うべきか......。


「......うちに来るか? 」


「いいの? お家の人とかは?」


「父さんと母さんは今日からヨーロッパ旅行。夏休み

  だし、妹がOKだしてくれればいいよ。もう日も暮

 れたしもうさっさと行くぞ」


「でも、やっぱりダメだよ。ほぼ初対面で、その人の

 家に上がり込んで寝かせてもらうなんて」


 全く持ってその通りだ。俺は度をすぎたお人好しなのかもしれない。


「そうだね。まだ君のことを完全に信用できると認め

 られる理由がないから泊まるのは確かにやめておこ

 う。でも欲しいものとかはある程度集めるよ」


「そうね。じゃあ5000円貸してくれない?」


「じゃはい。これは魔法の講習代だ。でもしっかり教

 えてもらうから覚悟しとけよ 」


「あ、うん。わかった。ありがとう 」


 今思えば気のない返事だった。


「じゃあ俺、妹が「おそーい!」って言って待ってる

 と思うから帰るわ。明日9時ここで集合。L○NEかメ

 アドある? 連絡取りたいとき便利だから教えて」


「ちょっとまってて紙に書く。 はいどうぞ。」


 彼女は話しながら手際よく書いた。


「じゃまた」


「遅れるんじゃないわよ。あと......なんでもない。ま

 たね」


「おう。やっべぇ、ご飯に遅れるとあいつ怒るから

 な。急がないと」


 俺は夏の涼しい夜道を走る。


「夜道は危ないから気をつけてね」


 彼女はそう言っていた。殺害予告にしか聞こえなかったが。


 明日からが楽しみだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 良い点は、、探すのが難しい! [気になる点] ダメだし希望とのことなので(笑) あくまで1話を読んだ感想です。いや、正直に話しましょう。1話の途中で読むのを止めてしました(泣) 文章が読み…
[一言] TwitterのRTありがとうございます。せっかく、RTしていただいたので、第一話部分だけですが、読ませていただきました。 ダメ出し希望とのことなので、一話目だけではありますが、 気になった…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ