Ⅲ-Ⅹ 謎の部屋と近づく狂気
俺は彼女に命を救われた。
護衛に着いていたほかの騎士は残念ながら何人かが死んでしまったが、数名の若手騎手と俺は何とか生き延びることが出来た。
「私の名前はしの……メリエラよ。宜しくね」
メリエラはそう言うと森の奥へと行こうとする。
「ちょっ!待ってくれ!そっちは危険だ!……いや、君のような強さがあるのなら大丈夫だとは思うけど……何か用事があるなら手伝う!」
俺がそう言うと彼女は一瞬、呆けた顔をしたが、直ぐに気を取り直し言った。
「フフ、ありがとう、でもごめんね?まずこの先は君たちには危険だし、この先へは用事があるんじゃなくて、ただ家に帰っているだけだから」
その笑った表情は先程魔物と戦っていた時のような堅さはなく、1人の女性としての魅力を感じるようなものだった。
だがそれよりも。
「帰る?」
「ええ、この先に私の家がある。わたしは普通じゃないからね、そこで暮らしてるの」
「待ってくれ!普通じゃないってどういう事だ?」
立て続けの俺の質問にも彼女は嫌な顔1つせず、答えた。
「聞いた事ない?私、”迷える森の魔女”って呼ばれてるんだ」
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身体中に青い光が迸る。
先程新しく手に入れたスキルを使ってみたのだが、やばい、ちょっと吐きそう……だがおかげで辺りに魔物の気配はなくなり、暫くは安全そうだ。
「ぜェ……はァ……ミライ……大丈夫?」
「ウップ……これで大丈夫だと思うなら病院行った方がいいよ……と言うよりよく着いてこれたね……」
結構全力で(加減の仕方を知らないとも言う)スキルを使用したのにきちんとフェリは着いてきた。
だがこれはちょっと反動が強すぎる……いざと言う時以外は使わないようにしよ……
この新しく手に入れたスキル。
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最速蒼雷
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ちょっと工夫して使って見た感じが地獄だったよ……え?どういうものが見せて欲しい?……またいつかね……
さて、能力の試用はこのくらいにしておいて、何か途中からちょっとやばい事になってるかもしんない。
地図と全く構造が違うのだ。
地図が間違ってるとかそんな感じじゃなくて、空間が歪んでいるって言うか。
廊下はうねっており、別の扉を潜っても同じ部屋に出たり、時にはまた王様の部屋に戻ってたりするのだ。
めんどくさいなー
手な訳でフェリに協力をしてもらい、何とか少しづつ先へ進むことに成功している。まぁ今まで通り、風を読んでルートを探しているだけなのだが。
「ねぇ、ミライ?何だかそのへや、変だよ?」
「変?何か感じたの?」
「ううん。その逆。他の部屋からはちょっとした魔力を感じてたけど、この部屋からは全くなんにも感じない。多分、元からここにあったんだと思う」
元から?ということはこの謎現象の影響を受けていないということか?それなら何かしらありそうな気もするかな……
という訳で入ってみることにした。
そこにあったのは、ちょっと豪華なだけの、だがどこか質素な感じのする恐らく誰かの私室と思われるようなところだった。




