18 思い起こす事実
遅くなってしまいすみません。
諸事情により続けられなくなりました。
中途半端なまま放置はしたくないので、強引に終わらせることにします。
本当にすみません。
「そういえば、私……」
奴隷になって死んだことはなかったかしら?
いや、あった。
あらゆる死に方を経験した私は、逆に死んだことのない死に方がないぐらいだ。奴隷も経験しているはず。
随分前で、もう別の恐怖ですっかり塗りなおされたけれど……。
徐々に記憶がよみがえってくる。
血なまぐさい牢屋、気持ち悪い感触、同じ境遇で仲の良かった人間が死んだ絶望。
結局、ご飯が滅多にもらえなかったから、私もその子を追うように衰弱して死んだのだ。
そうだ、ここに似た路地裏に引きずり込まれて、それで、ロープで巻かれて、袋に詰められて。
犯人は私が王族だとは気づかなかったようす。少し身なりの良い、ただの平民だと思ったようだ。
車か何かに乗せられたらしく、長い間振動が伝わった。
そのあとその乗り物を下ろされて、下品な男に引き渡された。
しかし、なぜ王族の私が奴隷になったのだろう。
すぐにでも捜索隊が国中を探すと思うのだが。
まさか売られたのが外国だったとか。
犯人の顔は……。そうだ、覚えてる。思い出した。そうだった。
暗闇の中、月明かりが照らした顔を思い出した私は、その顔を青ざめさせた。
「どうしたの?」
フィリアルが何か言っているようだが、それを気にする余裕もなかった。
周りの音が聞こえなくなる。
甲高い音だけが、私の耳をつんざいた。
目の焦点が合わなくなる。
ああ、こんなところにもいたなんて。
今日は再開してばかりだわ。
先ほどと同じ恐怖が体を支配する。
なんで、私ばかりこんな怖い思いをしなくてはいけないのか。
もう、いやだった。
やっぱり、家に引きこもっているのが一番安全だ。
なにも、考えることすらもうしたくない。
回れ右をすると、走り出した。
誰かが何か言っていたような気もするが、今私の目に映っているのは、城へ戻るための道。階段のその先。
まったく、それにしても今日は厄日だ。
蘇った記憶に衝撃を受け、混乱し、先程、私はなぜあの男たちから逃げられなかったのか。私は忘れていた。
ガクッ、と。
階段に差し掛かった時、いきなり足が機能しなくなり、体が傾く。
またか。
崖、屋上、気球、船、屋根。階段以外にも、いろんなところから落ちた私にはわかる。
私、死んだな。
なんで、こうなるの。
* * *
「せっかく、せっかく、長生きできたのに、最悪」
ベットの上で、布団をたたきながら一人愚痴る。
「今度こそ、何か変わると思ったのに」
期待は、しない方が自分のためだ。
叩き続ける布団には、大粒の染みがいくつも作られていった。