11 この夢にない世界に妖精を
「……それで、カシオは無事ナルシッサを含む七人の集団を引き入れることに成功したの。これは私のアドバイスの賜物なの」
「まぁ!凄いわねぇ」
「ふふん、もっと褒めてもいいの」
小さな体を限界まで反らして胸を張るフィリアル。
耳にかけていた長い髪が、揺れて肩に落ちた。
暗くて少し見にくいが、これが日向であればこの髪は宝石のように輝いていただろう。
私はそれを、地べたに座り微笑みながら見守っていた。
可愛い。もう可愛いとしか言いようがないぐらい可愛い。語彙力が消える。
この子は地上に舞い降りた天使か何かなのかしら?と思うほどの可愛さだ。
最後にあったのがずいぶん前だったから忘れていたけど、昔から可愛かったのを思い出す。
「お手柄だわ。フィリアルちゃんがいなければ、その七人とは一緒にお仕事ができなかったでしょうね。きっとカシオさんも感謝していると思うわ」
「むふふふふ」
照れつつもにやけ、もっと褒めてと強請る姿はまるで小動物。
彼女のお尻にはち切れそうなほど揺れる尻尾が見える。
なんですか。可愛すぎですか。お持ち帰りしていいですか。
柄にもなく身もだえながら優雅な笑みを浮かべる。
心情と表情が一致してないのは、感情を抑えようだなんて馬鹿な試みのおかげで得られた唯一の特技だ。
おかげで、この千回の死に戻りがいさえあったようにも思われる。いや、それは大袈裟かもしれない。
その後もその可愛らしい姿が見たくて、褒めちぎりまくった。
「あら、フィリアルちゃん薬学の勉強もしてるの?凄く賢いのね。将来は薬剤師さん?それともお医者さん?有望ね」
「フィリアルちゃんがいてくれて、カシオさん含む商業グループの人たちは幸せね。きっと仕事も捗るわ」
「フィリアルちゃんってとっても可愛いわ。この商業グループのアイドルと言われても納得するどころか、むしろアイドルじゃないことに納得できないもの」
「フィリアルちゃんには弟君がいるのね。私は一人っ子だけど、フィリアルちゃんみたいな妹が欲しかったわ」
後ろ二つは本音がたっぷり混ざった腹づもりだが。
その度にフィリアルは可愛らしい照れ顔を見せる。なにこの子、尊い。
仄かに顔を赤らめたフィリアルちゃんも可愛い。もう可愛すぎてしんどい。無理。
この子がずっと一緒にいてくれるなら私はいくらでも死に戻りに耐えられ……る、かしら?さすがにそこまではできないかもしれない、けど、それは決してこの子が可愛くないとかそういう意味ではなく、単にあの死に戻りが想像を絶する苦しみなだけで……。
「……白雪、どうかしたの?」
「いいえ。フィリアルは縁の下の力持ちだと思ったのよ」
コテンと首を傾げたフィリアルの可愛さに、先程までの思考回路は遮断された。一段と緩んだ表情筋のまま笑いかける。
フィリアルのただでさえ大きな眼が更に大きく見開かれた。
「で、でも、白雪は美人さんなの。髪もとっても綺麗なの」
いきなり身を乗り出し顔を近づけると、必死そうに話を逸らした。
私は驚いて目を瞬かせる。
どうしたのだろうか。もしかして、褒めて褒めまくったため段々と本当に照れてしまったのだろうか。
そう予測して自分の髪を一筋掬ってみる。
「そうかしら。ただの黒い髪じゃない?」
「でもでも、そこまで純粋な黒は見たことがないの!サラサラだし」
「あら?」
「あっ……やってしまった、なの」
小さな口を小さな手で押さえ小さな頬を上気させる姿は正しく妖精……じゃなくて。
「口調がさっきと違うみたいだけど、そっちが本物かしら?」
そう問いかけて、いたずらっぽく口角を上げた。
フィリアルは眉を下げて困ったような顔をしていたが、口にあてていた手を下すと躊躇いながら声を出した。
「カシオが、最後に“の”をつける喋り方にすれば萌えるからって……」
燃える?よくわからないが、カシオさんが問題のようだ。
怪訝な顔になるのが自分でもわかった。
「カシオさん?カシオさんに強制されてるの?」
「そういうわけじゃないけど……成り行きというか、うーん」
手を顎に充てて悩みだしてしまった。
口調なんてそこまで気にするようなものではないし、 言いたくないのなら言わなくてもいい。
この話題には触れないべきだったろうか。
少し心配に思った直後、背後から声がかかった。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
インフルエンザ(A型)に罹りました。もう熱は下がっています。
最近流行っているようなので皆様もお気を付けください。




