表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やがてかしまし大野君  作者: 利苗 誓
第一章 弟との日常
6/22

第6話 「世界の摂理とは、全てのバランスを保とうとしているのだ」



「佳人薄命って、知っとるか?」

「どうしてん、いきなり」


 部室で課題を進めていた大野に、秋葉から声がかけられた。大野はシャープペンシルを置き、秋葉に対面した。


「おかしいな、って思ったことないか?」

「いや、そもそも佳人薄命って言葉が分からんねん」

「美人は体が弱かったり不幸になって早死にしてもたりすることが多い、ってことわざや」

「へぇ~、勉強なったわ。で、なにがおかしいん?」

「いや、おかしいやろ」


 秋葉は軽く小首をかしげた。


「美人なわけやぞ? なんで早死にすんねん。病弱なんも不幸になるんも、普通おかしいやろ。容姿が良いっていうステータスがあるんやから普通に考えて絶対長生きやし病弱にもなりがたいやろ」

「まあそう言われると、確かに普通に考えたらおかしいよなあ。なんか偉い人に寵愛とかされそうやし」 

「悪銭身に付かずって言葉もあんねん。宝くじとか、苦労せんと取得したお金はすぐになくなってしまう、みたいな」

「へぇ~、勉強なったわ」

「お前何も知らんな」

「ええやろ別に」


 ふん、と大野は鼻を鳴らした。


「これもまたおかしな話やと思わんか?」

「これは確かに。宝くじなんかあたったら絶対常人よりお金持ちなんやから身につかんわけないもんな」

「そうやねん。おかしいねん。おかしいことがあまりにも常識じみた皮を被ってやってくんねん」

「確かになあ」

「でな、俺こういうので世界のバランスが保たれとるんちゃうか、と思う訳やねん」

「どういうこっちゃねん」


 大野は身を乗り出した。


「何かしら人間の能力ってバランス取れとんとちゃうかな? と。例えば美人やったら他のステータスが低かったり、そもそも皆自分がステータス低いと思っとるんは実は自分の隠れた才能に気が付いてないだけなんちゃうかな、と思うねん」

「へぇ~、おもろいやん」

「自分の才能が一般的に人から見て分かりづらいところにあるからバランスが保たれとると思わんかったりするんかなあ、とも思うんや」

「なるほどな。でも、やっぱりそういう才能って必要ない才能もない?」

「……?」


 大野は人差し指を立てた。


「世界って動いとるやん?」

「そうやな」

「だからな、その時々によって素晴らしい才能でも、役に立たんもんにもなりかねんわけやん。滅茶苦茶スケート出来ても、何百年も前の時代やったら何の役にも立ててない訳やん?」

「そうやな」

「だからな、たまたま世界の潮流がええ時にたまたまええ才能を持って生まれてしまった、みたいなところもあると思うねん」

「そうか。難しいな」

「でもな、俺はやっぱり努力するんが一番普遍的でええ才能なんかもしれへんなあ、と思うねん」

「そうやなあ……」


 二人はしみじみと、天を見上げた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ