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やがてかしまし大野君  作者: 利苗 誓
第一章 弟との日常
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第4話 「テンポで名前決めとる節あるな」



「フランスパンってテンポに頼りすぎた名前やと思わへん?」

「……」


 朝、例によって大野が秋葉に声をかけた。


「フランスパンって名前おかしいと思うねん」

「何がやねん」

「ほら、フランスパンってフランスのパンやからフランスパンなわけやろ?」

「多分」

「いや、他にもそんなんあるやろ! と」

「なるほど」


 秋葉は軽く頷いた。


「フランスのパンがフランスパンやったらオレンジとかもドイツミカンとかにしなあかんやろ! と思うんですよ」

「まあフランスパンだけフランスパンなんはなんでなんかと思わんでもないな」

「めっちゃなんなん言うやん。ナンはインドパンや。ということで、今日はフランスパンを持って来ました」

「料理番組か」


 鞄の中から、大野はフランスパンを取り出した。


「そもそもフランスのパンがフランスパンなんやったらナポリタンはフランスパスタなんかって話やねん」

「ナポリタンはイタリアやぞ」

「こういうのってテンポで名前決めとる節あると思うねん、俺」

「というと?」

「ほら、フランスパンってなんか言いやすいやん。テンポ的にすげぇ言いやすいんやって、フランスパン。言いやすいから最初に名前つけた人がなんかテンポ気に入ってもてそのままフランスパンにしたと思うんやんな」

「まあ言葉の名付け方っていうのは得てしてそういう一面もあったりするかもなあ」

「なあ」


 大野はフランスパンを食べた。


「おはざ~っす」

「おお入江」


 大野がフランスパンを食べ、部室に一時の静寂が訪れた時、不意にドアを開ける音がその静寂を壊した。


「あ、大野パイセン」

「フランスパン食うか?」

「いや、食う訳ないじゃないスか。なんで部室まで来てフランスパン食わないといけないんスか」


 入江は少し離れた位置に鞄を置き、座った。


「入江、俺フランスパンってテンポでつけられた名前やと思うねん」

「何スかそれ。フランスパン美味しいスよね。部室で食べるようなものじゃないと思うスけど」

「せやなあ」

「征先輩はどうスか」

「フランスと言えばラフランスが好きやな、俺は」

「またフランスあったやん……」


 大野は茫然とフランスパンを食べていた。




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