第21話 「君は自分の年齢を覚えているか」
「なあ」
「どうしてん、秋葉」
「俺って何歳?」
「お前っ……」
大野が距離を取り、入江とひそひそと会話した。
「お前、そういう路線で行くことにしたんか!」
「何の話やねん。滅茶苦茶やぞ、話の論理が」
「それはお前や! お前天然キャラ今更なってもう遅いぞ! キャラがあった方がやりやすい言うてもなあ、限度があるぞ!」
「そうスよ、秋君天然キャラ無理スよ」
「いや、違うわ」
秋葉が否定する。
「お前ら自分の年齢覚えとるか?」
「十九スけど」
「俺も十九」
「俺自分の年齢分からんねん」
「「えぇ!?」」
大野と入江が目を合わせる。
「秋君、何があったか知らないスけど、私で良かったら相談乗りますよ」
「そうやぞ、秋葉。何があったんか言え」
「いや、違うねん全然」
秋葉は首を振る。
「年齢って、覚えれんくない?」
「そうなん?」
「さあ」
大野と入江は互いにピンとこない。
「年齢って、ほとんど使う機会ないやん? じゃあ覚えれんやん?」
「いや、覚えれるでしょ」
「じゃあな、入江。お前どこ住んどる?」
「え? マンションすけど」
「ええとこ住んどるな。一〇〇階建てのマンションのエレベーターで、一年前に一緒になった人が降りて行ったんどこか分かるか?」
「いや、分かる訳ないじゃないスか」
「俺にとって年齢っていうのはそのくらいの認識やねん」
「いやいやいやいやいや!」
入江が眼前で手を振る。
「年齢ってそう簡単に上下しないですし、大体の年齢から一年でも一個しか変わらないスよ。大体分かるでしょ」
「じゃあ俺が今から適当に数字言うからお前一年後も覚えとけよ」
「違うんスよ、それは! それに、年齢って他にもたまに使う時あるじゃないスか」
「一年に一回が三回とか四回とかになっても何も変わらんねん。結局覚えてないねん。年齢ってその程度の認識のはずやぞ。他人の誕生日覚えとるようなやつ、ほんまに三六五階建てのマンションで一年前に乗って来た奴の降りた階覚えとるようなもんやんけ」
「いや、私滅茶苦茶覚えてるんスけど」
どうしよう、と入江が大野を見る。
「西暦から誕生日引き算したら?」
「……っ!」
秋葉が大野を見た。
「なるほどな。その手があったか」
「秋君ってごくまれに、すっごいあんぽんたんスよね」
入江は半眼で、そう言った。




