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やがてかしまし大野君  作者: 利苗 誓
第一章 弟との日常
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第20話 「話題はそこにあるものじゃない。作るものだ!」



「私っておしゃべり苦手じゃないですかぁ?」

「知らんがな」


 佐々山の問いに、秋葉が答えた。


「いや、私おしゃべり苦手なんですよぉ」

「かなり得意そうに見えるけどなあ」

「俺もそう見えるわぁ」


 大野が寄って来る。


「いや、おしゃべり苦手なんですよぉ。で、このおしゃべり苦手な私に何か技伝授してもらえないですかぁ?」

「ポシェモンみたいやな」

「秘伝の技を伝授したるわ」


 大野が秋葉と場所を交代した。


「話題はそこにあるんじゃない、作るものだ!」


 立ち上がり、大野が言う。お前演説が話術に有効かまた試しとるやん、と秋葉が茶々を入れる。


「例えば話題がなくなる、ってよう言うやん」

「言いますねえ」

「それはな、周りの物に目を凝らしてないから起こるもんやと、俺は勝手に思っとんねん」

「どういうこですかぁ?」


 佐々山が小首をかしげる。


「例えばな、車とかのっとたら景色が二転三転、すごいスピードで流れていくやん。ってことはな、色んな情報のソースが流れて言っとるわけよ。それなら簡単、目に移る物を口に出していけばええねん」

「じゃあ車乗ってないときはどうすればいいんですかぁ?」

「それもな、会話からどんどん数珠繋ぎで話していくねん。なんでもええねん。例えばこの消しゴム」


 大野は手元の消しゴムを持った。


「消しゴムから適当に話を数珠つなぎで話していくねん。面白くなくても、なんでもええから」

「例えば何ですかぁ?」

「例えば、消しゴムってちっちゃくなるといっつもどっか行くやん? あれ故意に無くしとる訳でもないのに、知らん間に無くなっとんねん。あれ何でやと思う? みたいな」

「なるほどぉ~」


 うんうん、と緩慢な動きで佐々山が頷く。


「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「話題終わってもうたやんけ」


 秋葉が二人に、そっと突っ込んだ。



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