第20話 「話題はそこにあるものじゃない。作るものだ!」
「私っておしゃべり苦手じゃないですかぁ?」
「知らんがな」
佐々山の問いに、秋葉が答えた。
「いや、私おしゃべり苦手なんですよぉ」
「かなり得意そうに見えるけどなあ」
「俺もそう見えるわぁ」
大野が寄って来る。
「いや、おしゃべり苦手なんですよぉ。で、このおしゃべり苦手な私に何か技伝授してもらえないですかぁ?」
「ポシェモンみたいやな」
「秘伝の技を伝授したるわ」
大野が秋葉と場所を交代した。
「話題はそこにあるんじゃない、作るものだ!」
立ち上がり、大野が言う。お前演説が話術に有効かまた試しとるやん、と秋葉が茶々を入れる。
「例えば話題がなくなる、ってよう言うやん」
「言いますねえ」
「それはな、周りの物に目を凝らしてないから起こるもんやと、俺は勝手に思っとんねん」
「どういうこですかぁ?」
佐々山が小首をかしげる。
「例えばな、車とかのっとたら景色が二転三転、すごいスピードで流れていくやん。ってことはな、色んな情報のソースが流れて言っとるわけよ。それなら簡単、目に移る物を口に出していけばええねん」
「じゃあ車乗ってないときはどうすればいいんですかぁ?」
「それもな、会話からどんどん数珠繋ぎで話していくねん。なんでもええねん。例えばこの消しゴム」
大野は手元の消しゴムを持った。
「消しゴムから適当に話を数珠つなぎで話していくねん。面白くなくても、なんでもええから」
「例えば何ですかぁ?」
「例えば、消しゴムってちっちゃくなるといっつもどっか行くやん? あれ故意に無くしとる訳でもないのに、知らん間に無くなっとんねん。あれ何でやと思う? みたいな」
「なるほどぉ~」
うんうん、と緩慢な動きで佐々山が頷く。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「話題終わってもうたやんけ」
秋葉が二人に、そっと突っ込んだ。




