第19話 「記憶違いで、自分の記憶の方法が分かる」
「注文の多い料理店ってあるやん?」
「せやなあ」
「そうですねえ」
大野の質問に、秋葉と伊原が答えた。
「俺前それ思い出そうとしたんやけどさあ、どうしても名前が出てこんかったねん。なんやったっけなあ~、なんやったっけなぁ~、って思って絞り出して出てきた答えが、『山猫のお食事券』やったねん」
「なんか全然違うのに惜しい感じするわ」
「なるほどですね」
秋葉と伊原が頷いた。
「こういう風にな、思い出す時の思い出し方でどういう記憶の仕方しとるか分かる節あると思うねん」
「なるほどなあ」
「あ、じゃあ僕もありますよ。取りつく島がない、ってあるじゃないですか? あれ僕いっつも取りつく島がない、なのか取りつく鳥がない、なのか分からなくなるんですよねえ」
「「あぁ~」」
秋葉と大野が声を揃えて首肯する。
「でさ、これ滅茶苦茶記憶の仕方関係しとるよな? 例えばやけど、物事を絵とかそういう画面で覚えるんって右脳でやるらしいねん。反対に字とか文字とかって左脳で記憶されるらしいねん」
「へぇ~、勉強になりました~」
「どっちがどっちかとかも間違えやすいよな」
秋葉と伊原が言う。
「ほんまそれやねん。あと、最初の文字が『ラ行』やった、みたいな思い出し方もあるやん? 右と左をいう時にどうしてもどっちがどっちか分からなくなる、みたいなんって、やっぱりそういう概念を文字として記憶しとる節があるんとちゃうかな、と思うんよ」
「なんか知的ですね」
「やろ?」
「せやからな……」
「……」
「……」
「……こんなことがあるんやなあ、って俺は思ったわ」
「知的から一転、オチ弱」




