第15話 「女の胃袋を掴め」
「男の胃袋を掴め、ってよく言うじゃないですかぁ?」
「そうやなあ」
「確かに」
佐々山の一言に、大野と秋葉が返答した。
「あれ、てんで見当違いな話だと思うんですよねぇ~」
「なんでや!」
大野が大声で訊く。
「なんか男の人って味とか分からないじゃないですかぁ?」
「なんでや!」
「朱莉やっぱり女の子が料理するべきじゃないと思うんですよねえ」
「なんでや!」
「お前武器少なすぎるやろ。なんでやだけでどこまで会話進める気や」
秋葉が会話に入り込んでくる。
「いや、じゃあ大野先輩とか秋葉先輩味分かります? 絶対分からないですよねぇ?」
「……」
「……」
「図星じゃないですかぁ!」
「なんでや!」
「なんでや!」
大野と秋葉は声を揃えた。
「そもそも女の子って集団で暮らして男の人を待つ暮らしが続いたと思うんですよぉ。それに料理とかして味がよく分かるのも女の子だと思うんですよぉ。じゃあ普通に考えて男の人が女の子の胃袋を掴むべきじゃないですかぁ?」
「俺は賛成やわ」
「えぇ、そうかぁ?」
賛成する秋葉と反対に、大野はきな臭い物を見る目になる。
「いや、俺美食家やからやっぱり女の子には俺の胃袋掴んで欲しいわ」
「俺は正直食べ物なんでもええわ」
「くっそ~……」
大野は歯噛みする。
「やっぱり五感系って女の子の方が優れてるから男の人に頑張って胃袋掴んで欲しいって思うんですよぉ」
「でも男は味覚鈍いんやったら美味しい物も作りがたいんじゃ……?」
「確かに……」
佐々山は声の調子を落とした。
「なんか私こういうの見たんですけど、恋人を作りたいときは『恋人を作る方法』じゃなくて『彼女を作る方法』で調べた方が良い、とかなんとか」
「目的へのアプローチの違いやな。確かにそっちの方がはるかに確立高そうやわ」
「だからぁ、なんか騙されてる気がしてならないんですよねぇ、男の胃袋を掴めっていうの」
「なんかそう言われたら俺も違う気してくるやんけ」
大野が貧乏ゆすりをする。
「男の胃袋を掴もうとしてる女の子を炙り出す手段なのかとすら考えちゃいますよぉ」
「どんだけ荒んだ世の中やねん」
秋葉は突っ込んだ。




