第14話 「知能が高くなると、楽しめる娯楽が少なくなる」
「知能が高くなると楽しめる娯楽が少なくなる、って思うんやけど、どう思うお前ら?」
「お前の話いっつもなんか頭良さそうな感じから始まるな」
「考えさせられますね」
秋葉の放った言葉に、大野と伊原が返答した。
「どういう意味やねん、えぇ!?」
「なんでそんな喧嘩腰やねん。なんか頭のいい人ってあんまり笑わんイメージないか?」
「確かにお前全然笑っとらんなぁ!」
「褒めながらキレてくるん何やねん」
おらおら、とドスを利かす大野に、言う。
「それに、犬とか猫とかってなんかボール取りに行ったり、猫じゃらしでじゃらじゃらするだけで喜ぶやん? 人間やったら全然そんなんで笑わんやん?」
「お前いまさっきナチュラルに犬と猫ディスったぞ」
「いや、そんな意図はないねん」
悪い悪い、と秋葉は眼前で手刀を切る。
「それに赤ちゃんとか、同じことで何回も笑ったり、いないいないばあとかで何万回でも笑えるやん? あれはやっぱり脳がまだ未発達やから、知能がまだ育ってないからそうやって笑えるんやと思うんやんな」
「そうかもしれないですねえ」
難しい顔で伊原は言う。
「でも逆にな、映画とか赤ちゃんに見せても面白くないと思うねん。なんかそういうのって内容を理解出来る人しか楽しめんやん? あと、IQって20以上離れた人同士で話しても楽しめんって言うやん?」
「誰がIQ貧民や!」
「言うてへんわ」
「まあでもIQはそんなに上下激しい訳でもないですよね」
「まあなあ」
少し間を置き、
「つまりはな、知能が上がっていけば上がっていくほど楽しめる娯楽が減っていっとんちゃうんか、って思うんよ」
「なるほど……」
「子供の頃とかクリスマス、バレンタイン、夏祭り、年末年始、全部が全部滅茶苦茶楽しかったやん? でも今とかもうそうでもないねん。なんなら嫌いやとすら言う人もおるやろ?」
「俺は年末年始今でも楽しいぞ」
「いや、俺もそうなんやけどさ。でもこういうのって、すげぇ勿体ないことやと思わん?」
「せやなあ……」
「……」
沈黙が下りる。
「でな、知能が高いって言うんはほんまに幸せな事なんかって問題提起を俺はしたいよ。知能は低い方が人生楽しいんちゃうんかなあ」
「俺みたいにか……」
「せやな」
「そこは違うよ、じゃろがい!」
「あははは」
三人は静かに、笑った。




