第10話 「人は三番目に好きなものを訊かれると、フェチシズムが出やすい」
「朱莉、フェチシズムの特定方法分かったんですよぉ」
「いや、知らんがな」
部室の片隅で、一年目になる女子大学生が、そう言った。名を佐々山朱莉と言う。
大野は佐々山の質問に、難しい顔をして答えた。
「大野先輩のフェチって何ですかぁ?」
「えぇ、何やろ。あんまり気にしたこともなかったから分からんなあ」
大野は考え込んだ。
「最近って音のフェチみたいなの結構話題になってきたじゃないですか。朱莉、ああいうフェチって、三番目に好きなものを訊かれたときとかに出やすいと思うんですよねぇ」
「というと?」
「恋人のどこが好きか上から三つ上げて言ってね、って言われたらやっぱりフェチとかってあんまり人に言うもんでもないんで、一番目とか二番目とかに挙げられないじゃないですかぁ?」
「そうやなあ」
「でも三番目くらいになってくると、まあ一番ってわけじゃないしいいかな、的な側面が出てきだすんですよ。それに、一番目と二番目に好きな部分って結構共通するんですけど、三番目は案外ばらつきやすい側面があると思うんですよねえ」
「なるほどなあ」
大野は頷いた。
「因みに朱莉は上から匂い、声、頭脳ですよ」
「めっちゃ抽象的やんけ」
大野は佐々山に突っ込んだ。
「だから人に好きな何かを聞いて、それが好きな理由を上から三つ答えさせていくんですよ。それで三つ目にあたるのがフェチの可能性が高いですねぇ」
「俺は食べ物とか言われれば確かにある気するわ」
「マジですか?」
佐々山が身を乗り出す。
「俺が食べ物に求めるの、味、見た目、次は食感な気するわ」
「あぁ~、食感ですかぁ。食感は確かにフェチっぽいですねぇ~」
佐々山は嬉しそうに自身の手を揉んだ。
「大野先輩、これで卑猥な話いっぱい出来ますね!」
「いや、なんで俺が他人のフェチシズム調査隊みたいなことせなあかんねん」
大野は苦笑した。




