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十二の試練  作者: 笹の葉
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第7話 チャールズ・グリム 2

 そう言った訳で1つ目の試練が始まったのだが、私はまだ少年とコンタクトを取ることが出来なかった。


 正確に言うと、私の声が少年に届いていなかったのだ。


 私は何度も少年に対し、伝心の魔法の要領でコンタクトを取ろうと少年に声掛けをするが、手応えが全くなかったのだ。

 それ以前に少年がどこにいるのかもわからず、焦りが募る。


「むぅ・・・、どういうことだ?」


 憤りを感じ、不意に零れた独り言に対し、思いがけない返答があった。


『解。 あなたは《天堂(てんどう) 輪廻(りんね)》との(えにし)を結びましたが、それはあなたが認識しているのみで《天堂 輪廻》自身は貴方の存在を認識していないからです』


 まだこのアナウンスが有効だったとは思わなかった。

 しかし、その言葉を聞いた私は顔が青褪めるのを止められなかった。


「と言う事は、私から呼びかけても少年は気付くことが出来ないと言う事か?!」


『肯定』


「そ、それでは先程聞いた私の役割である少年の補助(サポート)も糞もないではないか!!」


『否定。 方法はあります。《天堂 輪廻》が活動中に声を掛けるのではなく、彼が眠りについた後、夢の中で声を掛ける事でコンタクトが可能になります』


「なんだと?! それでは伝心の魔法と違うではないか?」


 伝心の魔法とはお互いが意識がある状態でしか使えないのだ。 発信側はもちろんだが、受信側が寝ていたり、気絶していた場合は繋がらないのだ。


『肯定。 これは《十二の試練》の手順(シークエンス)の1つであって、伝心の魔法ではありません。あくまでも呼びかけ方が伝心の魔法と酷似している為、説明に引用しました』


 淡々とした答えに、自分が早とちりをしていたと知り、少し恥ずかしくなるが、まだ聞かねばならない事がある。


「で、では、呼びかけは少年が意識のない時にすれば良いと言う事だろうか?」


『肯定』


「しかし、そうなると少年がいつ眠るのかがわからないのだが、何か手は無いのか?」


『解。 これから私が行う説明を聞けば疑問は解消されます』


 その答えに私は自分が思っている以上に気がはやっている事を自覚する。


「どうやら1人で焦ってしまっていたようだ。申し訳ない」


 私はそう頭を下げる。


『謝罪は不要ですが、あなたの気持ちは受け取りました。 それでは《十二の試練》についての説明を始めますので御清聴願います』


「よろしく頼む」


 そう一言声を掛け、私はアナウンスの声に集中した。










































 説明を受けた後、私は変わらず薄暗い部屋にいた。 アナウンス曰く、請願者は試練中はこの部屋から出る事は出来ない。との事。

 試練は通常、数日~数カ月、との事だが、過去には1年を超える長期の試練もあったらしい。そんな長期間この部屋から出られないのは苦痛ではあるが、世界を救えるのなら願っても無い。


 それに試練中は請願者は食べたり着替えたりする必要は無いそうだ。

 空腹になる事は無く、肉体は試練中は封印凍結されているらしい。 精神体となっている私には確認する術は無いのでそう言う事なのだろうと納得するしかない。

 この2点については試練と言う難題を前に非常に有り難い事ではあったのだが、睡眠だけは必要との事だった。

 なんでも睡眠も本来は必要ないらしいが、精神に異常をきたす事があるらしい。 精神体であるのに休息は必要と言う。良くわからない理屈だが、拷問の1つに眠らせないと言うのがあったような無かったような・・・と言う古い記憶が蘇って来たので、なんとなく納得してしまった。

 あと、アナウンスは最初に意思疎通が可能になった時点で干渉しなくなり、後は各試練の発動と終了時のアナウンスだけとなるらしい。


 と、話が逸れたが、私はその後チャンスを逃すまいと何度か少年に声掛けをしたのだが、繋がる事は無かった。


 最初のチャンスはアナウンスからの説明中だったが、声を掛けると、少年の呻き声が一言聞こえた後は何の言葉も聞こえなかった。

 アナウンス曰く、『恐らく気絶したものと思われます』と言う事だったが、少年が過去に介入した直後だったそうだ。 一体何があったんだ?


 その後、暫らくしてもう一度チャンスがあったのだが、こちらは一瞬だけだった。

 アナウンス曰く、『恐らく物理的衝撃を受け、一瞬意識が飛んだものと思われます』と言う事だった。 一体少年に何が起きているのだ?!

 私は驚愕と共に少年に何が起きているのか不安になり、少年の無事を祈らずにはいられなかった。

 試練が始まって早々2度も気を失う程の事態に陥るとは、どれ程厳しい試練なのだ・・・ そんな思いが更に自責の念を募らせる。


 それから暫らくチャンスは無かったが、少年も人であるからして、夜は寝るだろう。 そう考え、私は1番のチャンスである夜を主眼に捉え早めに眠る事にした。

 一応、アナウンスに少年が眠ったら知らせて貰えるようお願いしたが、それは杞憂に終わった。


 何故なら、少年は寝なかったのだ。


 介入直後に2度も意識を失う事態に陥り、その後寝る事も許されない状況とは・・・一体どれ程の過酷な試練なのだろう。

 私は巻き込んでしまった少年に対し、申し訳ない気持ちで一杯になり、激しい自責の念に駆られた。


 暫らく葛藤し続けたが、私は後悔だけはしないと決めたんだ。 仲間に託された未来を、私が失ったものを、それら全てを取り戻す方法はこれだけしかなかったのだ。 どれ程良心の呵責に苛まれようとも私は前に進む。

 少年には申し訳ないと思うし、罪悪感は募るばかりだ。だが、その程度の事、既に覚悟はしていたのだ。


 私は自分の心に活を入れると、少年とのコンタクトに集中する。






 そして、その時は訪れた。






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