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十二の試練  作者: 笹の葉
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プロローグ

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 この世界は危機に瀕している。


 強大であった大国はその殆んどが滅び、落ち延びた人類もあと僅か・・・


 我ら人類の希望となり得た英雄は既に死を遂げ、強大なる敵を打ち滅ぼす新たな英雄は現れない。


 世界が絶望に満たされようとしている中にあっても、私だけは諦めない。


 諦める事は許されない。


 友を、家族を失う度、託されてきた。


 人類を、この世界を、必ず守ってくれと・・・


 その都度、私の心は悲鳴を上げ、託されたものの重みに歯を食いしばり、戦いに赴く。


 だが、私の決意に反し、この世界は滅びの道へと(ひた)走る。


 戦局は既に極まり、どうにも止められない。


 それでも私は諦めない。


 現在、滅びゆく未来しか拓けないのなら、私はそんな現在(いま)を否定する。


 私の大切な人々が死した世界も、大切な者達から託された未来を守れない自分も、その全てを否定しよう。


 その為に、私は私のすべてを捧げよう・・・





 これより行うは十二の英雄を救う冒険の旅にして、より良い現在(いま)を拓く冒険の旅、そして失われたものを取り戻す冒険の旅だ。


 例えこの身が滅びようと、私と言う存在が消滅しようとも、必ず拓いてみせる。 希望に満ちた世界を!



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 私は、最後になるであろう自分の手記をそう締めくくると、人生最後の大きな賭けに出る事にした。


 世界は既に魔王に滅ぼされる寸前で、対抗しうる英雄は既にいない。


 世界は絶望の闇に閉ざされ、人類は滅びを待つだけの憐れな存在に成り下がった。


 そんな中ですら、私は諦める事が出来ず、必死に足掻いた。


 その結果、一つの希望を見出した。


 それは過去を変える魔法。


 (いにしえ)に封じられた禁断の魔法だ。


 その名は《十二の試練》という。


 あまりにも古い文献にあり、所々(ほつ)れていたので具体的な内容は分からなかったが、幾つかの過去に干渉することで事象を改変し、術者の望む現在(いま)を、未来を引き寄せる可能性を秘めているという事だけは分かった。


 滅びゆく現在(いま)を知る私からすれば、何と希望に満ちた魔法であろうか。 この魔法を見付けた時、私は唯一の希望を見出した気がした。


 だが、その魔法は時空を操る事が前提となっており、既に廃れ、形骸化した系統であり、適正を持つ者はほぼ皆無と言っていい程であった。


 そんな中、幸運にも私は適性を持っていた。 それを知った時の私は、居もしない神に感謝し、運命すら感じた。


 そしてそれらを知ってからの私の行動は決まっていた。


 廃れた時空系魔法の習得に全精力を注ぎ、寝る間を惜しんで習熟に勤しみ、ついに実現可能な実力を身に着けた。


 その時の私の喜びようと言ったら、さぞかし滑稽だったであろう。


 何せ世界が滅びを憂い、打ちひしがれている中、狂人のように歓喜し、咽び泣いたのだから・・・


 まぁ、お蔭で周囲の者からはついに狂ったのかと正気を疑われる日々を送る羽目になった。


 しかし、それもこれまでだ。


 私はこれから世界を変える魔法を行使する。


 私の名はチャールズ・グリム。


 絶望に突き進む世界に在って、運命に抗い、希望に満ちた世界を切望する男の名だ。




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