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便利屋へ参加

『あの全身義体(サイボーグ)……かなり性格悪いわね』


 接続した途端、幾重にもホログラムウィンドウが展開し、その上を文字と数字が埋め尽くす。記憶を失っているからか、元々この分野は疎いのか、俺にはほとんど理解できなかった。


『ソフィア? どんな感じなんだ?』

『すごいセキュリティーね。古いタイプの防壁が五層。その下に最新の防壁が三層。さらにその下には攻性防壁が二層……大企業の極秘情報並の厳重さよ』

『有線とはいえ、それを五分で解除……できそうか』

『朝飯前よ』


 とのことなので、俺は黙ってソフィアに任せることにした。

 数分間、目まぐるしく顔色を変えるホログラムを眺める。すさまじい速度で防壁を突破していることは何となくわかるが、ただのサポートAIにこれほどの処理能力があるとは思えない。ソフィアはオンリーワンAIとの話だし、他にも特殊な能力があるのかもしれないな。機会があれば色々と訊いてみるか。


『ええと……はい、終了』

 三分かそこらで、ハックは終了したらしい。防壁に守られていたデータを、俺の電脳へとコピーする。

『ありがとなソフィア』

『ふふん、もっと褒めてもいいのよマスター』

 彼女の人工知能とは思えぬ言動にもある程度慣れてきた。俺の電脳にソフィアがインストールされていた理由は不明だが、頼りになることには変わりない。これからも遠慮なく力を借りよう。


「終わったぞ」

 全身義体(サイボーグ)の女に向き直りながら、俺はハックの終了を宣言する。

「早いな。もう終わったのか……中身を開いてみろ」

 言われた通り、データの中身を確かめる。どうやら何かの画像のようだ。

「どれどれ――へぇ、なかなかいい写真じゃないか」

 中の画像が俺の網膜に投影され、色を伴って像を結ぶ。感嘆の声をもらしながら、力強く頷く。それだけよく写った写真だった。

「そうだろう? ご褒美にそれはお前にプレゼントだ。有効に使ってくれ」

 とのことなので、遠慮なくもらっておこう。寂しかった電脳も、少しずつ賑やかになっていくな。


「すごいですね青葉さん。この試験もクリアしちゃうなんて。――ところで師匠、ブラックボックスの中に入れておいたデータってどんなものなんですか? わたし知らないんですけど」

「ん? なに、たいした物じゃない。……お前が入浴中の盗撮写真だ」

「なんてもの入れてるんですか!」

 和佳菜は意外と着やせするタイプらしい。


「そう怒るな。――さ、それじゃあ、改めて歓迎しよう六道青葉。今日からお前はあたしたちの仲間だ。あたしはアガット。アガット・ラングレーだ。全身義体(サイボーグ)で、ここのボスをやっている。よろしくな」

「ええと……改めてよろしくお願いします青葉さん。やることは色々あって大変ですけど、すぐに慣れますよ。――あと、さっきの写真は消しておいてくださいね……約束ですからね?」

 二人に歓迎されながら、仕事と家を見つけられた喜びを噛み締める。この祈崎市で野生児のように野宿するのは危険すぎるからな。


『……で、これからどうするのマスター?』

 俺の歓迎会ということで、酒の準備をしている全身義体(サイボーグ)の女――アガットをぼんやりと眺めていると、ソフィアが声をかけてきた。

『しばらくはここで働きつつ、情報を集めるさ。便利屋なんて、いかにも情報が舞い込んできそうじゃないか。記憶を取り戻す有力な情報が手に入るまでは、地道に貯金しておくのも悪くない』

『りょーかい。私はマスターの意志に従いますよ』

『ありがとな。これからも世話になる。よろしくソフィア』

 ソフィアとの会話を打ち切り、俺は新たな仲間に向かって穏やかに笑いかけた。


 大きな不安と僅かな期待を胸に、記憶を取り戻す旅が始まった。

とりあえずここで一章は終了です。

今のところ全五章構成の予定。

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