第7章 希望の誕生
自分とは違う種類の魔力にテオは目を丸くした。
「やっぱりニーナもシャドウアタッカーの素質があったんだ…!」
白いオーラを身に纏う姿は暗い世界の希望のようにも見えた。まだまだその光は弱々しく頼りないものであったが、少なくとも今のテオにはニーナが救世主に見える。
「ニーナ!魔法に必要なのは強い思い!」
ニーナは呼びかけに気付いたようで縋るような目でテオを見た。
ニーナの人を助けたいという強い気持ちが光となって力になる。自分の状態を見てニーナは拳を握った。
「魔法は使う人のイメージでその性質を変えるんだ!集中して!」
眼を閉じて頭の中を空っぽにする。耳から入ってくる轟音も外に追い出した。暗い視界に雲間に射し込む光を焼き付ける。
「影を断ち切る剣となれ!」
眼を開き焼き付いたイメージをそのまま再現しようと試みた。
誰が教えたわけでもない言葉が出てくるがそんなことはお構いなしに光の炎を右手に集中させる。デタラメにも程があったがうまくいったようだ。ニーナのイメージ通り右腕の延長として剣のようなものが形成された。
「その調子!一緒に戦おう!」
テオの嬉しそうな声にニーナは頷いた。
右腕を振るえば影はあっさりと両断される。黒い粒子が人から抜け落ち霧散した。
ニーナが攻撃されそうになればテオがその背中を守り、ニーナはテオの攻撃をアシストした。
自分の力が人々を救うという達成感にニーナは震えた。そしてこれからの戦いに精一杯頑張ろうと思った。
数時間もしないうちに街は静かな戦いの終わりを迎えていた。
初めての戦闘に疲れ切った二人は支え合うように地面に座り込んでいた。お互いその表情はとても穏やかだ。
「訓練もなしにここまで出来るなんてニーナは本当に才能があるんだね」
「そんなに難しいことなの?」
嫌味っぽさのない心からの褒め言葉にニーナはくすぐったそうにする。
「難しいよ。僕は攻撃魔法と補助魔法1個ずつ覚えるのに1年かかった」
天才の感覚はよく分かんないやと呟きながらテオは眼を閉じた。
「これからもきっと影との戦いは続く。けれどニーナがいればどんな敵でも倒せる気がするよ」
新しい希望の誕生から5年の月日が経った。