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第6章 押し寄せる無力感

 やっとのことで外に出るとそれはひどい有り様だった。

 白目をむき口から涎を垂らしながらゾンビのように人を追いかける人間だったもの。影は食らった人間の身体を乗っ取り、本能のままに破壊行為を繰り返す。一度こうなってしまってはもう助ける術はない。せめてもの安息を与えなければならない。


 遠くからも物音は聞こえてくる。数は多いようだ。

「じゃあ、さっき言った通り僕のそばから離れないようにしながら、住民の避難を手伝ってくれ!」

 テオは早口でそう言うと目の前に黒い火の玉を6つ展開して影に投げつけた。戦闘開始だ。

「とは言ってもこれどうすればいいの…?」

 この街は大型都市ではないものの、住民の数は十数万居たはずだ。道という道に人が溢れかえり地面も見えない程であるので前に進むことも難しかった。ニーナは混乱の渦の中立ち尽くしていたが意を決して流れに突っ込んだ。少なくとも関係のない人がテオの魔法に巻き込まれるのを防がなくてはならない。

「みんな!どうか落ち着いて!押さないで!」


 パニックの中、人に声を届けるのは難しい。努力も虚しくニーナの叫び声は騒音に吸い込まれていった。

 近くで轟音が響き渡る。テオの黒い火炎放射だ。周りに大量の火の粉が舞う。熱くはないが肌がチリチリとする気がした。

「これじゃ何もできないじゃん」

 せめて魔法が使えればとニーナは唇を噛む。シャドウアタッカーになれる素質があるというのなら、その片鱗でも見せてくれても良いのにと悔しい思いで人々を見ていた。


 さすがに一般人を巻き込まないように気をつけながら大量の影相手に一人で戦況を保つことはできない。テオは額に汗を浮かべながらひたすら炎を投げ続けていたが、ついには疲労で片膝をついた。

 こんなことではシャドウアタッカーの名が泣く。だがまだテオも見習いの身であるがゆえ、一人ではここまでが限界だ。いつもより成果を残せたほどだ。


 ここまでかと思ったその矢先、ニーナから空気を捻じ曲げる程の魔力が放射されていることに気がついた。

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