第5章 襲撃とアラーム
すると突然けたたましいアラームが鳴り響いた。訓練開始の合図だろうか。ニーナがテオを見るとその驚いた顔に自分も驚くことになった。
「このアラームは何なの?」
焦って聞くとテオが繋いだ手に力を込める。
「襲撃だ!影がこの町で発生したんだ!」
ニーナは突然引っ張られたテオの手について行けず床に手をついた。テオはすぐに戻ってきて立ち上がらせる。そして改めて手を握った。
「シャドウアタッカーは今大半が遠征してるんだ。僕達も手伝わなくちゃ」
ニーナは突然のことで混乱していたが、戦闘員の人数が少ないのはよく分かった。ドアに向かって走り出すがすぐに問題に直面した。
「待って!私魔法も何も分からない!戦力にならないわ」
「え、嘘だろ?」
二人はドアをくぐり抜けて長い廊下を走っている。テオの表情がどんどん暗くなるにつれて、ニーナの自信も萎んでいった。外からは人々の悲鳴や物が壊れる音が聞こえてくる。アラームも鳴りやまずにその仕事をまっとうしている。
「分かった」
テオの手から黒い炎が伸び上がる。魔法だ。
「君の身体能力を最大まで引き上げる。足も速くなるし筋力も上がるからそれで住民の避難を頼みたい。分かった?」
黒い炎はニーナにまとわり付くとフッと消えた。確かに力が湧いてくる気がする。
「これが魔法!すごいね!」
ドクン。
ニーナの感動していた顔が強張る。目の奥が針を刺したように痛み、また発作症状に似た動悸が起こる。先程のように。
「うっ」
暴れる心臓を押さえて呻くと、テオが走る足を止めてニーナの肩を掴んだ。
「どうしたの?!」
「元々身体弱いんだ。でもいつものことだから大丈夫……」
ニーナは汗が頬を伝って落ちるのを目で追いつつ、また足を前に出した。
「行こう。私達にできることをしないと」
何故こんなにも身体が弱いのだろう。自分を呪いながらゆっくりと這うように進み始めた。