第4章 正義のヒーロー
「僕達シャドウアタッカーはね」
ニーナが落ち着いたのを見計らってテオが話し始めた。安心させるためか手を繋いだままである。ニーナは少しドキドキしながら話しを聞いた。
「人を襲おうとする影を倒すんだ。ニーナは影を見たことがある?」
ニーナは頷いた。影を見たことがない人間はいないはずだ。どこでもたまに起きてしまう現象であるので何回か見る機会があった。
正直見ていて気持ちの良いものではない。黒い影がモンスターのように人を襲うのだから。シャドウアタッカーはその度に駆けつけてくれて住民の避難などに尽力していた。
「シャドウアタッカーはみんなの危険に立ち向かうヒーローみたいだった」
素直に感想を言うとテオは恥ずかしそうに頭を掻いた。
「そうだよね、格好いいよね。ここは彼らの養成や研究をしたりしているところなんだ。多分これはニーナも知ってると思う」
またもニーナは頷く。
「それでね、まずシャドウアタッカーになるためにはここで半年の訓練を受けないといけないんだ。いきなり実践は慣れないからね」
「訓練……。私にもできるかしら?」
ニーナの不安げな声にテオは満面の笑みを浮かべた。そして自分の胸をドンと叩く。
「心配要らないよ。シャドウアタッカーには女の子もたくさんいるし、何かあったら僕がちゃんとアシストしてあげるから」
フンと鼻を鳴らして自慢げにしているテオを見てニーナも微笑む。
「そうそう、言うの遅れちゃったんだけど、僕達これからコンビを組むんだって!なかなか僕達くらいの歳の子がいなくって困ってたんだ。改めてよろしくね」
テオが一緒なら大丈夫だと思った。いきなりの環境で心細いのはお互い同じなのかもしれないと思いながらニーナはよろしくねと返事をした。
ニーナが自分の瞳のことを質問すると、それも安心してと言われた。
「初めて見るときはびっくりするよね。赤い瞳はシャドウアタッカーの証。魔法を十分に使えるように団員さん達が頑張って研究したんだ」
「ニーナの瞳は色が薄いけど多分これから馴染んでくると思う。ここの人達はみんな技術者としてすっごく優秀だから、何かあったら相談するといいよ」
心配事も杞憂のようであったのでニーナはそっと胸を撫で下ろした。
「他に何か聞きたいことはある?」
テオは少し質問が多い気がする。本人はきっと気づいていないだろうなと思いながら部屋の中の時計を見た。
「これからのスケジュールはどうなってるのかな」
窓がないせいで正確な時間は分からないが、体内時計曰くきっと今はお昼間だ。
「本当に何も知らされてないんだね」
ため息をついて腰に手をやる動作を見届けたあと、とんでもないことを知らされてしまった。
「あと数分で始まるよ、訓練。僕は君を迎えに来たんだから」
ニーナの目が丸くなったのは言うまでもない。