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第41章 開花した力

 アルマを見送った二人は自分たちも出発することにした。ニーナの光魔法が新しい希望になったおかげでその表情も晴れ晴れとしている。テオの両頬も腫れ上がっていたが。

「さて、最初はどこに行こうか?」

 問題は未だに山積したままだ。何をするにしても時間がかかることはよく分かっていた。

 ニーナは腕を組んで考え始める。一番最初にすべきことはなんだろう。

「アンブラを助けにいきたいよね。思いつくのはあの蟹型のアンブラかな……」

「あいつか」

 クラウスを一瞬にして消してしまったあの凶悪な敵は思い出すだけで足が竦みそうになる。しかしいつかは相手をしなければいけないと思っていた。あのアンブラもきっと死んだと伝えられていたシャドウアタッカーの誰かであるはずだ。


「本当は一刻も早くテオも元に戻してあげたいんだけど……」

 じっと見つめられてテオは申し訳ない気持ちになる。シャドウアタッカーでなくなれば魔法が使えなくなり戦力にならなくなる。ニーナも一人でアンブラに立ち向かえるとは思っていないらしい。

「俺も最後まで戦う。ニーナだけに戦わせるつもりはないよ」

 逆に自分ひとりでも戦うと言い出したら怒るところだった。無理をさせたらまたみんなに白い目で見られてしまうし、何しろ守ると決めたのは自分だ。

「身体に異変は無いし、鬱になるような要素もないしな」

 安心させるように笑うとニーナも気丈に笑った。だがアルマの話では鬱状態でなくてもアンブラ化が起こることが分かっていた。二人とも知ってはいたが口に出すのが恐ろしくて黙ったままだ。

 いつかニーナを傷つけるようなことにならないことを祈りつつ、新たに意志を強く持とうと決意した。



「ぐあっ……あああ!」

 暗い部屋の中に辛く苦しそうな呻き声が響きわたる。赤い光だけが唯一の光源だった。

 ベッドは刃物で裂かれたかのようにボロボロになり、枕からは羽が溢れている。机の上にも床にもインクを零したような黒い水溜まりができている。

「うっ……」

 廊下の方からドアが何度も叩かれる。叫び声は最愛の妹のものだ。傷付けたくないという思いを塗りつぶすかのように破壊衝動が首をもたげた。あまりの頭痛に耐えかねて腕を床に叩きつける。

「逃げろ……リリー……!」


 割れた瓶からはたくさんの色の飴玉が転がり出ていた。

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