第2章 空の色
空の色は何色だったか。
ずっと昔、人間は少しでも自分が楽になるように魔法を開発した。火を一瞬でつけたり天気を操ったりそれはそれは便利であった。人間は魔法で一気に繁栄した。
だが急な環境の変化に世界はついてゆけず、水は汚れ、風は止まった。
もっとも変化があったのは人の心だ。魔法の副作用かそれとももともとの人間の性質なのかはわからないが、心の浮き沈みが激しくなり、鬱病患者が恐ろしく増えた。
しかしその鬱病患者で留まるならまだいい方だ。この世界の空気には行き場を失った魔力が溶け込んでおり、それに反応して患者は自分の影に呑まれる。
そして狂う。
自分の影が足元から伸び上がって頭から主を食べようとするのだ。
その感情は、嫉妬、後悔、憤怒……などで、その負の感情が心の闇となる。多くの人間が影に呑まれ、狂い、周りの物や人を破壊した。
さすがにこの不可解な事態を放っておくことはできないので、急遽有志の手によって対策本部が設置されることとなった。
それがこの教団である。名前はない。しかしその高い功績からいつしか「シャドウアタッカー」と呼ばれるようになった。
彼らは魔法の力を使いながらも確実に影による被害を減らしているのだ。
「空の色は何色だったか」
正しい答えを持つ者はいない。