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第19章 隠された事実

「簡単に言うとこの子の属性は光だ」

 ひどくあっさりと結論から話すのは研究者故か。どこか予想できた答えに二人は黙ったまま話の続きを急かした。

「さっきシャドウアタッカーは闇属性しか扱えないと言ったが、それは教団が自衛するためなんだな。強い光の前には闇は存在できない。自分達が消されないように闇だけを深くしていったんだ」

 何となく感覚的に理解できるような気がしたが、ニーナは何故自分がシャドウアタッカーに選ばれたのかを疑問に持った。ビアンカはその表情を読み取り答える。

「逆に言うと光が強ければ反対の闇もより際立つ。戦力強化のための苦肉の策だったんだろう」

 消されるかもしれない恐怖と進化する影に対抗する力への渇望を天秤にかけた結果、知識を植え付けないまま、何も知らせないまま戦わせる。その結論に至ったのは自然な流れであった。


「光と闇は常に隣にいるけど、決して混ざりあうことはできない……」

 ポツリと呟いたニーナの考えは何か思うところがあったのかもしれない。

「私とテオは相性が良いけど悪い?」

 謎の発言にテオは首をかしげた。どういうことだ。

「戦闘では確かにテオの筋力をあげる魔法はとっても有効だけれど、すぐに具合を悪くしてしまうんだよね」

 ビアンカはそうだろうねと相槌を打った。自分と反対の属性の魔力を身体に入れれば、免疫反応のように拒否症状も出る。

「うっ、ごめん」

 理解したようにテオが素直に謝る。自らニーナを苦しめていたことに今まで気付けなかった。確かにこの事実を知っていればニーナを戦闘に出したくないヘレナの気持ちも分かってやれたと思う。


「影を倒してみんなが助かるなら私はそんなこと気にしないよ」

 そして懐からいつも常備しているピルケースを取り出した。ビアンカが覗き込んでくる。

「今思えば私の持病もそこから来てるんだよね、きっと」

 空気中に漂う魔力は影の粒子のようなもので、ニーナにはそれだけで毒になり得る。そう言いたいのだろう。声は静かだったがどこか泣き出しそうに思われて、テオはニーナを抱きしめた。

「テオ……」

 かける言葉も見つからず途方に暮れる。しかし体温から何かを感じ取ったのかニーナから力が抜けるのが分かった。

「ありがとう」


 突然の抱擁だったがビアンカは空気も読まずに話を続けた。

「教団は君たちが知識を得ることを怖がっている。取り敢えずはこの事は誰にも知らせずに心にしまっておくことだね」

 二人は我に返り離れるとそれぞれ真剣な面持ちで返事をした。

「その魔力の粉は君たちにあげるよ。それは魔力の塊だからお互いのものを交換して持っていればそれだけで魔力も筋力もアップするようになる。直接魔法をかけるよりずっと効果は減ってしまうがね。背に腹は代えられないだろう?」

 秘密会議はこうして幕を閉じた。


「じゃあねー。仲間見つかるといいねー」

 手を振るビアンカに二人も手を振り返す。確かに不思議で怪しい部屋だったけどまた来ようと思った。

 そして再度、ドアを開けては閉める作業に戻った。

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