第18章 秘密会議
採血のあと、ビアンカは何度も何度も透明な液体をかけては抜き、かけては抜きを繰り返し、ようやくこちらに小さな試験管を差し出してきた。
「信じられないよー。君は一体何者なんだいー?」
それぞれの試験管にはサラサラとした宝石を砕いたような砂が入っていたが、その色が大きく違っていた。
テオの方は闇属性を表す黒みがかった紫色だったが、ニーナの方は薄いピンク色を帯びた透明であったのだ。
「違う属性なの?」
ニーナは何回か試験管を振っていたが特に変化はない。
「シャドウアタッカーは闇属性しか使えないはずなのにこの結果とはー。これはもしかしたら教団の極秘事項なのかなー?」
「そうだよ」
テオの暗い声音にビアンカもニーナも注目する。
「ヘレナ……俺達の担当医なんだけどさ、ニーナのことについて聞いたら俺達が知っていてはいけないんだって言ってた」
初めて聞く事実にニーナは固まった。あのヘレナが隠し事なんてするんだと悲しくなった。それからテオはニーナが自分にとって危険な存在であることを伏せたまま話を続けた。話が終わる頃にはビアンカの心に火がついたようだ。鼻をふんふんと鳴らし机を叩いた。
「知らないことは罪たー!そんな勝手なことで知りたいという気持ちは止められんー!」
勢い余ってそのまま机の上に上がるとテオとニーナに顔を近付けた。口のつけられていないティーカップが倒れて中身がこぼれようがお構いなしだ。そして恐ろしいことを囁く。
「教団には内緒にしておけばいい。何も知らないまま操り人形にはなりたくないだろう?」
テオは少しの危なさを感じたが、ニーナが間髪入れずに知りたいと答えたことでビアンカが片方の口角を釣り上げた。
「え、ニーナ?」
「だって自分のことだもの。知りたいと思うのは当然のことだよね」
教団の考えていることは何も知らないが、確かに考えてみれば知る権利くらいはあるだろう。そこからは本人が考えることだ。
「よーく聞いとけよー」
事の重大さはよく理解していたが悪の組織の秘密会議みたいでわくわくしている3人であった。