第15章 ドクロの仮面
テオとニーナが部屋から出ると隣の部屋にいたリリーとイグナーツも出てくるところだった。タイミングが同じだなんて奇遇だねとニーナが言えばイグナーツは偶然だよと答えた。
「さて、どうする?出撃するか?」
何も知らない風を装い聞いてみるとリリーが盗み聞きした通りの答えが返ってきた。やはり戦力を集めてから戦うようだ。
問題はその戦力をどこから集めてくるかだ。
「誰に頼もうか…」
テオとリリーがイグナーツをチラチラと見ているが知らないふりをすることにした。年長だからといって年下を甘やかすのは良くない。そういうことにしておいた。大人しくて彼氏持ちのニーナをもう少し見習ってほしいと思う。彼氏もこんな奴だが。
「とにかく頼むしかないだろう。どいつも簡単には頷いてくれそうにないが」
「りょーかい!」
テオとニーナ、リリーとイグナーツで二手に分かれて教団内を捜すことにしたが1時間経っても説得どころか見つけることすらできない。
「ぎゃー、知ってたけどどれだけでかいんだこの建物!」
テオが膝をついて叫ぶ。
部屋数だけでも100以上はあり、その他に厨房や実験室、浴場や談話室など大小様々な部屋が並んでいれば軽く遭難しかけるのは当たり前かもしれない。二人は自分達の部屋とヘレナのいる診察室と生活に必要な場所しか行くことがなく、特にニーナには健康のためとさらに行動範囲を狭められていた。
「テオ、ここでくじけちゃダメだよ」
と次のドアを開けたニーナの目に飛び込んできたのはドクロ。
「いやあああ!!」
突然のことで目を白黒させながら後ずさると、よく見れば骨格標本だった。しかしその部屋からは怪しい煙やコポコポと薬品の沸騰する音、腐敗臭も漂ってくる。
「何なのここー!?」
そのままドアを勢いだけで閉めると中から「いたっ」と声がした。人がいる!と嬉しさ半分、こんなところにいる人とはどんな人だろうと不安半分でドアに再度近付く。
「あ、あのー、勢いよく閉めちゃってごめんなさい」
ドアの向こうに聞こえるように謝ると、ドアが開きドクロ(?)が顔を出した。テオが小さく悲鳴をあげる。
「あー」
ドクロから声が聞こえたがどうやらマスクのようだ。その人がドクロを外すととても可愛らしい顔を曝した。
「こっちこそー驚かせてーごめんー」
ひどくゆっくりとした喋り方をするこの不思議な雰囲気の少女はビアンカと名乗った。