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第11章 気休めの言葉

 リリーが落ち着くまで待っているとドアが開いてニーナが出てきた。家族の帰宅に顔をほころばせる。

「リリー、イグナーツおかえり!」

「ニーナだ!ただいまー!」

 リリーはテオから離れてニーナにも抱きつく。ニーナもぎゅっと小さな身体を抱きしめた。

「ニーナ、身体は大丈夫か?気付いてやれなくてごめんな」

 心配そうなテオを見てると幻想の尻尾が萎れているのが見えそうになる。また心配かけちゃったなと反省した。

「もう、そんな顔しないで。テオがサポートしてくれてるからだいぶ楽なんだよ?」

「まーたテオが何かやらかしたのか!お前彼女を悲しませるんじゃないぞ!」

 今日は怒られてしかいない気がするよとボソボソと言うしかできなかった。


「……ということなんだがニーナもやっぱり見たことないよな?」

 4人は場所を変えて共有スペースの円卓に座っていた。先程の影のモンスター化について再度イグナーツが説明したところだった。ニーナは信じられないとばかりに首を振る。

「聞いたこともない。それが本当ならこれからの戦いがもっと激化するんだね……」

 腕を擦るニーナにテオが肩に手を置いた。一瞬視線が合う。俺がいるから大丈夫と訴えていた。イグナーツとリリーも目を合わせる。この二人の仲の良さには敵わないねと。

「今のところ見つけ次第上に連絡するようにと言われているが、俺はすぐに戦わなきゃならないと思ってる。二人も十分気をつけるんだぞ」

 机の上を指で撫でていたリリーも真剣な目で頷く。

「あれはイグナーツの槍でも簡単には貫けなかった。リリーの炎も効かなかった。あいつらは強いよ」

「ちょっと待て、二人はそいつを倒していないのか?」

 話を聞く限りいくらなんでも攻撃が効かなさすぎる。テオの嫌な予感を否定できないようにイグナーツは視線を逸らした。

「そうだ。逃がしてしまったんだ」


 イグナーツとリリーと別れてからニーナは何も言わなかった。テオは声をかけたかったが言葉が見つからない。

 敵の進化はそれだけ衝撃的で恐怖を抱く現象だった。前例のない事態に途方に暮れている場合ではない。けれどももしかしたら自分が、自分の大切な人が死んでしまうかもしれないと思うと足が竦んだ。

「行こう」

「えっ?」

 ニーナの小さな声にテオが聞き返す。

「戦わなくちゃ。私達が出来ることをしよう」

 何度も聞いた言葉は重い責務に押し潰されまいとする気休めのようにテオに響いた。


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