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第10章 未知への恐怖

 テオはニーナの処置が終わるまで扉の外で座って待つことにした。教団の床は団員の手でピカピカに磨かれており、掃除が行き届いているのがよく分かる。

「あーあ、もっと気を使ってあげなきゃな」

 ニーナが自分から痛がったり不調だったりを言うことは滅多にない。いつもどこか我慢しているのは分かるのだが、やっぱりパートナーの自分にはちゃんと言ってほしいとテオは思う。ニーナに無理をさせないのも自分の仕事だと思っていた。


 しばらくそのまま髪をいじったり欠伸をしたりしていたが、廊下を歩いて近付いてくる2人の人物に目を向けた。

「ああ、おかえり!随分時間かかったようだな」

 すると片方の男が向こうもテオに気付いたのか手を振ってくる。もう片方の女の子は走ってきてテオに抱きついた。

「テオーっ!ただいま!」

 テオも腕を背中に回してポンポンと叩いてやる。結んだツインテールがゆらゆらと揺れた。

「リリー、首しまってるから離れような?」

 追いついた男イグナーツがリリーの腕を掴んでテオから引き剥がした。リリーはバタバタと手を振り回して抵抗するがイグナーツの鍛えられた腕に敵うわけもなかった。

「ぷぃー。せっかく半年ぶりに会えたっていうのに!イグナーツのケチ!」

「まあまあそう怒るなって」

 ぷんぷん怒るリリーにテオが頭を撫でてやる。そうするとおとなしく撫でられた。時折ここがいいとばかりに頭の角度を変えてくる。

「ほわああ……」

「テオ、いつもごめんな。リリーにはもっと団員に頼られるシャドウアタッカーになってほしいと思っているんだが」

 イグナーツはやれやれと手を放して腕を組んだ。リリーとお揃いの赤い髪が印象的だ。


「戦績がいいんだからもう十分頼れる存在になってるさ。それで何で今回こんなに時間がかかった?似合わないじゃないか」

 テオはいつになく真剣に聞く。いくら遠方への討伐だからといって半年も帰ってこなければ心配もする。シャドウアタッカーが死亡したら通知がくるので何処かで活躍しているのは分かるのだが。

「ああ、面倒なことになってな」


 嫌な予感がしていた。

「影が人型から変形して襲ってきた。巨大化するし速くなるし力は強いわで思った以上に手こずった」


 今まで見てきた影はすべて、それまでの人間が凶暴化しただけで無理さえしなければ難なく倒せるものだった。

「モンスター化してしまったらシャドウアタッカーでも討伐は難しい。上は見つけ次第まずは指示を仰げと言ったが、そんなのを待っていたら街が壊滅しちまう」

 テオの真っ青な顔を見てリリーがそっと抱きつく。

「テオも気を付けてね。リリーとっても怖かったよ」

 震える身体を感じながら頭を撫でる手に力がこもった。

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