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真・仙極無双 戦国破壊伝  作者: 悠樹 久遠
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一の段其の幕間 悠樹美亜





 護法。使い魔。傀儡(くぐつ)にゴーレム。 式鬼。召鬼に式王子。

 そんなものなどありゃしない。それがこの世の常識だ。


 科学の発展や技術の進歩と共に、かつては信じられていた神秘や怪異は唯物論と機械文明の下に当然のごとく否定されていった。

 今では子供まで、そんなものを信じる人間を馬鹿よばわりする始末だ。

 

 だが、街中で出会うことなどありえないと考えているそれらの神秘は、一見普通の人間の顔をして人の間にいるのかもしれない。


 悠樹美亜もまたそうやって人として暮らす人外のものだった。

 感応魔術と仙術そして現代科学技術のハイブリッド。

 久遠が作り出した人造魂魄であり、生体アンドロイドであり、バイオコンピューター。


 人には叶わぬ知性の所有者にして罪を知らぬ無垢なる魂。

 人を超えた存在でありながら人に仕える無償の愛の体現者。

 人の到達できない至高の心技体をもって磨かれし武術の極み。

 人の極限を超えた思考速度と反射速度であらゆる機械を操る者。

 人知の届かぬ精神領域の多元的かつ多重的な使用者にして実現者。


 久遠の相棒(パートナー)である彼女が創られたのは、昭和の終わり、インターネットが一般に普及し初め、クローンや遺伝子の研究解析が民間でも行われるようになった頃だった。


 仙術と科学と魔術。

 三つの技術を融合させることで創られた美亜は、久遠の最高傑作でもあったが、また現代に存在する唯一の道士でもあった。


 確固たる自我を持つ理想的な道士として生まれた美亜は、動物ではなかった為に欲望を持たず本能としての自己保身さえ持たず、道士としての理念と博愛を持ち仙人と人の守護者として生きることになる。


 キリスト教的価値観では、存在の許されないはずの美亜が、彼らの説く神の愛の体現者であることをどう思うかと、かつて久遠が問いかけたことがあった。


 他の文化を否定して、自らの教義こそが唯一の正義と騙る人間達の愚かさを皮肉ったのか、それともただ美亜が自分という存在をどう思っているのかを知りたかったのかは判らない。


 ただ、その時の美亜の答えは、困難な目標のために努力するからこそ人は尊いのでしょう、という実に道士らしい答えだった。


 そういう風にしか生きられない自分より、様々な生き方の中から理想の生き方を選択して苦難に負けずそれを体現しようとする人間こそが尊いのだと美亜は言った。

 久遠はその答えを聞いたとき、少し哀しげに笑ってもっともだと応えた。


 不自由でない事を望むのではなく、安易な生き方を選ばず正しいと思える生き方を望むことこそが自由であることだと久遠は考えている。


 正しくはあったが自由ではなく、しかし自由を得られないと知って尚それを哀しまなかった美亜と、自らを自由であると信じながら自由を得ることができないでいる多くの人の代わりに、久遠は哀しんだのだろう。


 転生した久遠が、社会に対して最低限の干渉しかしなかったそれまでの生き方を変えたのは、自らの研究を進めるにはどうしても必要であったというだけでなく、こういった人の不自由さを憂い、少しでも自由な世界を創りたいという考えがあったのかもしれない。

 

 戦国の世で生まれ変わった美亜は、久遠の計画を聞いて、そんな考えへと思い至った。

 そのために出る犠牲を最小限に抑えるのが自分の仕事だろう。


 美亜はそう考えて自らに刻まれた膨大な知識を使って、自発的に久遠の計画をサポートする方法を考え始める。

 それは、美亜という存在が単なるプログラムで動くロボットではない証だった。


「それでは、わたしは以前のように久遠様の妻としてふるまえばいいのでしょうか?」

「……いや、私はまだかぞえで二歳になったばかりだ。直ぐに手伝ってもらいたいので仙人に遣わされた弟子ということにしてくれ」


 久遠の命に肯いた彼女は、それを少し残念に感じながら、全裸のままその美しい肢体をチェックし始めた。


 そんな相変わらず羞恥心などとは無縁な彼女を見ながら、久遠は美亜の(さと)デビューの演出を考えていた。






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