■ 第3話:地球の神様は「高みの見物」、王国の宰相は「現実逃避」
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■ 第3話:地球の神様は「高みの見物」、王国の宰相は「現実逃避」
【場所:地球の神界・管理室】
『ん? 通知が来ているな』
地球の神様は、デスクの上の端末を操作した。
『異世界転移の報告書……。ああ、あの暑苦しい「激動神ドラマス」か。私の管理下から一人人間を引き抜いたようだな』
地球の神は、ドラマスが苦手だった。
「人生はドラマだ!」とか言って、人間に無茶な試練ばかり与えるからだ。
『誰を持って行ったんだ? ……えっ』
プロフィール画面を見て、地球神の顔色が変わる。
【氏名:日向】
【職業:無職(散歩人)】
【特技:どこでも寝れる、野草の知識、美味しいお茶を淹れる】
【戦闘力:2(スライム以下)】
『おいおいおい! 駄目だろコイツは!』
地球神は慌てて立ち上がった。
『コイツは私の世界でも「天然記念物」扱いしていた、争い事皆無のピースフル市民だぞ!?』
『魔王と戦わせる!? 無理無理! 瞬殺される!』
『ドラマスの奴、なんて酷いことを……! 今すぐ抗議して連れ戻さねば……!』
地球神は慌ててモニターを「ヒナタの現在地」に合わせた。
悲惨な光景(モンスターに追われるヒナタ)を想像して、目を覆いそうになる。
しかし。
モニターに映ったのは――。
『……ん?』
小川のせせらぎ。
楽しそうに焼き魚を頬張るヒナタ。
そして、その横で完全に「野生」を失い、だらしない顔で昼寝をしている最強の騎士と天才魔導師。
『…………は?』
地球神は、別のウィンドウを開いた。
そこには、頭を抱えてのたうち回る激動神ドラマスの姿があった。
『動けェェェッ! なぜ動かんのだァァァッ!!』
『私のシナリオが! 魔王軍のスケジュール調整がもう限界なんだよォォォッ!!』
それを見た瞬間。
地球神の顔から「心配」が消え、代わりにニヤァ……と意地の悪い笑みが浮かんだ。
『ふっ……ふふふ。なるほど、そういうことか』
地球神は深く椅子に座り直し、おつまみのポテチを開けた。
『戦闘力2のヒナタ君が、あの傲慢なドラマスを精神的に追い詰めている、と』
『これは傑作だ。映画より面白いぞ』
『行け、ヒナタ君。その「鈍感力」で、あの暑苦しい世界を「お昼寝天国」に変えてしまえ』
地球神は、最前列でこのコントを見守ることに決めた。
一方、その頃――
【場所:王都グランベル・玉座の間】
国王は青ざめていた。
「連絡が……ないだと?」
「はい」
兵士が震えながら報告する。
「ヴァレリア団長が出発してから12日。後を追ったエイル殿が出発してから2日。……どちらからも、定期連絡が途絶えました」
広間がざわつく。
国内最強の剣士と、至高の魔導師。この二人が消息を絶つなど、国家の緊急事態だ。
「まさか……王都のすぐ近くに、強大な魔族が潜んでいたのか?」
「あの二人を音もなく消し去るほどの化け物が!?」
国王は決断した。
「宰相! 直ちに近衛兵を率いて現地へ向かえ!」
「最強の二人がやられたのだ。心してかかれよ! 王国の存亡がかかっておる!」
「はっ! お任せください!」
王国の頭脳と呼ばれる宰相、セバスチャン(厳格な老紳士)は、悲壮な決意で出撃した。
【場所:王都から徒歩2日ちょっとの「せせらぎの川辺」】
ドドドドドド……!
地響きと共に、宰相セバスチャン率いる精鋭部隊が現場に到着した。
「全隊、戦闘態勢! 敵は最強の二人を飲み込んだ化け物だ! 油断するな!」
セバスチャンは馬から飛び降り、草むらをかき分けた。
(ヴァレリア……エイル……。無事でいてくれ……! せめて遺体だけでも……!)
「覚悟しろ魔族め! ここにいるのはわかって……」
バッ! と藪を抜けたセバスチャン。
彼の目の前に広がっていたのは――。
「あ、焼けたかな? どうぞ、ヴァレリアさん」
「うむ、良い焼き加減だ。……んっ、美味い!」
「エイルさん、おかわりのお茶です」
「ああ、すまんね。……ふぅ、生き返る」
川辺で円になり、楽しそうにBBQパーティーを開催している勇者一行だった。
「…………」
セバスチャンの後ろで、抜剣していた近衛兵たちがズコッと体勢を崩した。
「……な、何をしているのですかァァァァッ!!」
セバスチャンの絶叫が響き渡る。
「む? ……ああ、宰相か」
ヴァレリアが、口元に魚の食べかすをつけたまま振り返った。
その顔は、王城で見せる「鬼の団長」の面影もなく、休日の親戚のおじさんのように緩みきっている。
「『宰相か』ではありません! 消息不明で大騒ぎになってるんですよ!?」
「全滅したと思って、国王陛下が泣いておられたんですよ!?」
「まあまあ、落ち着いてくださいお爺さん」
ヒナタがニコニコと近づいてきた。
「血管切れちゃいますよ? ここに来るまで大変だったでしょう」
「貴様が勇者か! 貴様が二人をたぶらかしたのか!」
セバスチャンが杖を突きつける。
「今すぐ王都へ戻り、陛下に謝罪を……」
「あ、これ。焼きマシュマロです。甘くて美味しいですよ」
ヒナタは、杖の先にフワフワのマシュマロを刺した。
「は?」
「熱いうちにどうぞ。甘いものを食べると、怒るのが馬鹿らしくなりますから」
「ふ、ふざけるな! 私は甘いものなど……」
セバスチャンはマシュマロを振り払おうとした。
しかし、甘く香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。
王宮での激務。予算会議でのストレス。反抗期の孫娘。
疲れた脳が、糖分を求めて悲鳴を上げた。
(ひ、一口だけなら……毒見として……)
パクッ。
「…………!!」
トロリと溶ける甘さ。炭火の香ばしさ。
セバスチャンの目尻が、みるみる下がっていく。
「……うまい」
「でしょう? さあ、宰相さんも座ってください。今、特製のシチューも煮えてますから」
ヒナタが手際よく椅子(切り株)を用意する。
「い、いや、私は職務が……」
「セバスチャン殿、座られよ」
エイルが、いつになく穏やかな目で手招きした。
「王都の政治も大事ですが、たまには『空を見る時間』も必要ですよ。……私はここで、魔法の真理を見つけました」
「ぐぬぬ……」
王国の頭脳が揺らぐ。
目の前には、楽しそうな勇者、幸せそうな最強騎士、悟りを開いた天才魔導師。
そして、美味しそうなシチューの匂い。
「……30分だ」
セバスチャンは咳払いをして、切り株に座った。
「現状確認と、事情聴取のために30分だけ同席する。……あくまで、公務だぞ?」
「はいはい、公務公務~」
ヒナタは笑って、宰相の皿に山盛りの具材をよそった。
こうして。
王都から派遣された捜索隊(宰相含む)までもが、この「魔のピクニック・トライアングル」に飲み込まれた。
王城への報告は、「現在、勇者一行と接触中。状況は……極めて『平和』なり」という、意味不明なものになった。
(第3話・完)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!
ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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