■第159話:彷徨う怨炎・叢原火(そうげんび)! ……えっ、燃え移る前に「熱効率の悪さ」と「炎の管理不足」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……カチャッ、ウィーン。うむ、休憩室の大型パナソニック製冷蔵庫は、今日も完璧なパーシャル温度を保っているな。極上のコールドチェーンだ」
神ドラマスは、古庫裏婆のエピソードから導入した最新家電から、キンキンに冷えたミネラルウォーターを取り出し、非常に満足げな顔でモニターを見下ろしていた。
画面の中では、ヒナタたちが夜の冷え込みが厳しい、京都の古い寺院の裏山を歩いているところだった。
「ほう! 『お段』の第3弾、『そ』の刺客だな! その名は業火に焼かれる怪火、叢原火!」
ドラマスは、艶消しマットのボトルを傾けながらニヤリと笑った。
「生前に寺の油を盗んだ罪で、死後も炎に包まれた首だけの姿となって永遠に彷徨い続けるという、悲惨にして不気味な怪異! 物理的な『熱』とオカルトな『呪い』が融合したこのファイア・ハザードに、ヒナタのロジックはどう立ち向かうのだ!?」
【場所:人間界・夜の古い寺院の裏山】
「う〜ん、今夜は空気が乾燥して冷え込んでいますねぇ。火の取り扱いには十分に注意が必要な気候ですよ」
ヒナタは、四次元リュックを背負い、ランタンの光を落として周囲の安全を確認していた。
ボワァァァッ……!!
「ゆ、勇者殿……! 前方の暗がりから、不気味な赤い火の玉が……! し、しかも、炎の中に苦悶の表情を浮かべた『お坊さんの顔』が浮かんでおりますぞ……!!」
宰相セバスチャンが、震える杖で宙に浮く火の玉を指差した。
『……アツゥイ……熱イィィ……。油ヲ盗ンダ罰ジャァァ……』
空中にフワフワと浮かぶ叢原火が、炎を周囲の木々に引火させんばかりに撒き散らしながら、ヒナタたちにゆっくりと近づいてきた。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 叢原火ですぞォォッ!! あの炎に触れたら丸焦げになってしまいます!! 山火事になりますぞ!!」
セバスチャンが悲鳴を上げて木陰に飛び込む。
『グオォォォッ!! 貴様ラモ、コノ永遠ノ業火ニ巻キ込ンデ、共ニ燃エ尽キテクレルワァァッ!!』
叢原火が、自身の熱量を最大まで引き上げ、周囲の酸素を奪いながらヒナタに突撃しようとした、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、燃え盛る怨念を完全に鎮火させる「凄腕の熱力学エンジニア&防火管理者」が裏山に響き渡った。
『……エッ?』
叢原火は、空中で炎を揺らしたままピタリと固まった。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相で叢原火の「空中にむき出しの炎」をビシッと指差した。
「あなた!! 密閉された燃焼室(炉)も持たずに、野外の空中でただ無秩序に燃え続けるなんて、せっかくの熱エネルギーが大気中に逃げていくばかりで『熱効率』が完全にゼロじゃないですか!! 貴重なカロリー(燃料)を垂れ流すなんて、エンジニアとして絶対に許せない『最悪のエネルギーロス』です!! しかも、乾燥した山の中で火を漂わせるなんて『消防法違反(火気取り扱い不備)』ですよ!!」
『ね、熱効率がゼロ……!? 消防法違反……!?』
叢原火は、自慢の恐ろしい業火を「ただの燃費の悪い違法な野焼き」として熱力学的に詰められ、炎をシュンと小さくした。
「大体、その熱い熱いと苦しむだけの単調な燃焼!!」
ヒナタは今度、炎に包まれた首そのものを指差した。
「炎の本当の価値(UX)を全く分かっていませんね!! 炎というものは、ただ無闇に燃やして熱がるためのものではありません!! 家の中に立派な『薪ストーブ(燃焼炉)』を設置し、空気穴をミリ単位で調整しながら『炎の大きさと揺らぎを完璧に管理・コントロールすること』、そして耐熱ガラス越しに『その美しい火の姿をじっくりと観察すること』こそが、炎の持つ最大のエンターテインメント性であり、至福の喜びなんですよ!! 野晒しで燃えているだけのあなたには、火を愛でる知性が決定的に欠けています!!」
『ほ、炎を管理して観察する喜び……!? 炎のエンターテインメント性……!? いや、俺は罰で燃えている怪異で……』
叢原火は、自らの呪われた運命を「ただの火気管理の怠慢と、ロマンの欠落」として全否定され、戸惑いのあまり火の粉をポロポロと落とした。
「今日から、徹底的な『熱エネルギーの完全キャプチャ』と『シン・薪ストーブ(炎の管理・観察)プログラム』を行います!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「光を反射しない艶消しマットブラック仕上げの、最高級鋳鉄製・薪ストーブ」「超高透過・ドイツ製セラミック耐熱ガラス」、そして「高精度な空気量調整ダイヤル(ダンパー)」を取り出した。
「ゴズさん、叢原火さんが山火事を起こさないように防火毛布で周囲を完璧にガードして! ヴァレリアさん、このお寺の庫裏にそのマットな薪ストーブを設置し、叢原火さんを炉の中に1ミクロンの熱漏れもなく神速で格納して!!」
「ブモォッ!(おう! 火の不始末は一番怖ぇからな! ちゃんと炉の中に入れ!)」
「ふむ。この荒ぶる炎を、分厚い鋳鉄の箱の中に一切の傷をつけずに封じ込める……結界術の極意だな」
「【究極の熱効率管理&シン・ファイヤー・オブザベーション(炎の観察)プログラム】です!!」
ヒナタたちの手により、お寺の一室に「艶消しマットブラックの重厚な薪ストーブ」が設置され、空中で無駄に燃えていた叢原火は、その炉の中へとスッポリと収められた。
『おおっ……!? な、なんだこれは……! 空中で風に煽られて無駄に燃え尽きそうになっていた体が、この分厚い鋳鉄の箱に守られることで、信じられないほど安定した燃焼を保っている……! しかも……』
ヒナタが、ストーブの「空気量調整ダイヤル」を少しだけ絞った。
『……っ!! こ、これだ!! 空気の流入量を緻密に管理されたことで、苦しむだけの暴走した炎が、ゆっくりと優雅に揺らめく「オーロラのような美しい炎」へと変わった……! 自分自身の火の形が、ガラス越しに見てもめちゃくちゃ美しい……!!』
「はい! 熱効率が最高化され、炎のコントロールが完了しました!」
ヒナタは、ストーブの前に極上のロッキングチェアを置き、耐熱ガラス越しに揺らめく叢原火(炎)をうっとりと見つめた。
「これが『炎を管理し、観察する喜び』です。あなたはもう罰で燃える存在ではありません。完璧な熱効率で部屋を暖めながら、人々に極上のリラックスタイム(癒やし)を提供する、最高の『インテリア・モビリティ』なのです!!」
『……俺は……美しい炎……。この完璧な燃焼室の中で、自分の炎の揺らぎをコントロール(管理)されるのが、こんなに心地よいなんて……!!』
叢原火は、自らの呪いが「究極の熱力学とロマンの結晶」へと昇華されたことに感動し、パチパチと心地よい音を立てて静かに燃え続けた。
数日後。
そこには、夜の山で油を盗んだ怨念を叫びながら山火事のリスクを撒き散らす怪火の姿はなかった。
艶消しマットの最高級薪ストーブの中に鎮座し、完璧な空気管理によって極上の炎を揺らめかせ、**「王都認定・最高峰のヒーリング・ファイヤー(兼・薪ストーブ愛好家協会の名誉会長)」**として、炎を観察し管理する喜びに魅了された王都の大人たちを、体の芯から温め続ける姿があった。
『チロチロ……(空気量最適! 今日もガラス越しに美しい炎のダンスを見せてやるぜ! 極上の熱効率を楽しんでくれ!)』
元・叢原火は、一切の火災を起こすことなく、完璧な熱管理で人々の心と体を癒やしていた。
「……ゆ、勇者殿。怨念の火の玉妖怪が……『熱効率の悪さを指摘され、薪ストーブの中で完璧に管理・観察される極上のヒーリング炎』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、ストーブの前で温かいお茶を飲みながら、ガラス越しに揺らめく叢原火の炎をいつまでも飽きずに眺め続けていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、自らの神殿の床暖房(電気ヒーター)を無言でオフにした。
『叢原火が……「空中で燃えるのは熱効率ゼロのエネルギーロス」と指摘され、鋳鉄製の薪ストーブに格納された……』
『罰の業火は「炎を管理・観察するロマンの欠如」と怒られ、空気量調整ダイヤルを与えられて極上のヒーリング炎になった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「古典的な怪火」すら「熱力学の敗北と薪ストーブのロマンの欠如」としてエンジニアのロジックで論破してしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「艶消しマット仕上げの最高級・鋳鉄製薪ストーブ」と「煙突設置キット」を即座にポチり、自らの神殿のリビングにもストーブを導入し、夜な夜な炎を管理・観察する至福の時間を設けることを固く誓うのだった。
(第159話・完)
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