表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

■ 第1話:最速の騎士と、最遅の勇者

本日から新連載スタートです!


本作は『『神様ざまぁ』シリーズ ~理不尽な設定は、主人公たちが規格外の手段で粉砕します~』の第4弾となりますが、完全に独立した物語ですので【本作から(本作だけでも)100%楽しめます】! 初見の方もどうぞご安心ください。


魔王討伐? なにそれ美味しいの? と言わんばかりに、異世界を全力で遊び尽くす規格外のマイペース勇者の物語です。肩の力を抜いて、クスッと笑いながら楽しんでいただければ幸いです。


それでは、ヒナタによる異世界スローライフ蹂躙、開幕です!



【場所:異世界・王城「グランベル」謁見室】

「おお、勇者よ! よくぞ参った!」


玉座の間にて、国王の威厳ある声が響く。

さらに、天界からも荘厳な声が降り注いだ。

この世界を司る『激動の神・ドラマス』の声だ。


『勇者ヒナタよ! 魔王軍の脅威が迫っている!』

『貴様には「最強の加護」を与えた! さあ、仲間と共に疾風の如く駆け抜け、世界に平和をもたらすのだ!』


召喚された青年、日向ヒナタは、リュックを背負ったままニコニコと頭を下げた。


「はい、初めまして神様。素敵なご招待ありがとうございます」

「世界を救うボランティアですね。お散歩がてら、頑張らせていただきます~」

『うむ、素直で良い子だ! では頼んだぞ!』

『私は忙しいのでな。……また忘れた頃に、貴様らの勇姿を見に来よう!』


神の声は、期待と信頼を残して途切れた。

残されたのは、ヒナタと、彼を護衛する一人の騎士だった。


「勇者ヒナタ殿」


鋭い眼光の女性が、カカッと音を立てて跪いた。

王宮騎士団長、ヴァレリア。

「剣聖」の異名を持つ、国内最強にして最も生真面目な騎士だ。


「私の剣は貴方のものです。……さあ、行きましょう! 一刻も早く魔王城へ!」


ヴァレリアは立ち上がるなり、キリッと城門の方を指差した。


「私の足なら、次の宿場町まで半日で到着できます。勇者殿も『神の加護』があるならついて来れるはず!」

「あ、はい。よろしくお願いしますね、ヴァレリアさん」


ヒナタは穏やかに微笑んだ。

この時、ヴァレリアは確信していた。

この素直な勇者となら、最短記録で魔王を討伐できるだろう、と。


【場所:王都から続く街道(出発から数時間後)】

「……あの、勇者殿?」


ヴァレリアが足を止めて振り返る。

先頭を歩く彼女と、後ろを歩くヒナタとの距離が、どんどん開いていた。

ヒナタが遅れているのではない。

止まっているのだ。


「どうされましたか? 足を挫きましたか?」


ヴァレリアが慌てて駆け寄ると、ヒナタは道端の草むらにしゃがみ込んでいた。


「見てください、ヴァレリアさん」


ヒナタが指差したのは、なんの変哲もない野花だった。


「この花、花びらが3枚で可愛いですねぇ。図鑑に載ってる『ミチシルベ草』かな?」

「は、はあ。そうですが……」


ヴァレリアは困惑した。


「そんな雑草を見ている場合ではありません。魔王軍は待ってくれませんよ?」

「でも、急いで歩くと、こういう小さな出会いを見落としちゃいますよ?」


ヒナタはスケッチブックを取り出し、サラサラと花の絵を描き始めた。


「せっかく異世界に来たんですから。景色を楽しまないと損です」

「ぐっ……。し、しかし……!」


ヴァレリアは反論しようとしたが、ヒナタのあまりに無垢な笑顔に、言葉を詰まらせた。


(神様も「お散歩がてら」という言葉を許していたし……少しくらいなら……)


「……わかりました。では、10分だけ休憩しましょう」


「ありがとうございます~。あ、お茶淹れますね」


【場所:王都から「徒歩2日」の地点・風の丘】

そして、出発から2日後。

本来なら、とっくに次の街へ到着し、最初のクエストを受けているはずの時間だ。


しかし一行は、まだ王都の尖塔がうっすら見える距離にある、景色の良い丘の上にいた。


「ふぅ……」


ヴァレリアは、岩の上に腰掛けて、遠くの空を眺めていた。

鎧のベルトを少し緩めている。


(おかしい……。私の計画では、今頃ダンジョンに潜っているはずなのに)

(なぜ私は、こんなところで風に吹かれているんだ?)

焦る気持ちはある。

あるのだが――。


「ヴァレリアさーん。スープできましたよ~」


ヒナタの声に、ヴァレリアのお腹が「ぐぅ~」と正直に鳴った。


「あ、すみません……」

「ふふ、いい音ですね。さあ、どうぞ」


ヒナタが差し出したのは、道中で採取したハーブと野菜を煮込んだ、特製ポトフだった。

一口飲むと、優しく濃厚な味わいが、疲れた(といっても殆ど歩いていないが)体に染み渡る。


「……美味しい」


ヴァレリアの口から、無意識にため息が漏れた。

騎士団での規律ある生活、終わりのない訓練、魔王討伐のプレッシャー。

それらが、この温かいスープと、ヒナタの纏う空気によって溶かされていくようだ。


「ここ、いい風が吹きますねぇ」


ヒナタがコーヒーを飲みながら、目を細める。


「今日はここでキャンプにしましょうか。星も綺麗に見えそうですし」


ヴァレリアは、いつもの自分なら「野営など危険です! 進みましょう!」と叫んでいただろう。

だが、今の彼女は、ポットから立ち上る湯気を眺めながら、こう思ってしまったのだ。


(……まあ、一日くらい遅れても、世界は滅びないか)


「そう……ですね。勇者殿がそう言うなら」


ヴァレリアは、自分でも驚くほど穏やかな声で答えた。


「じゃあ、私はテントを張る場所を確保しましょう」

「お願いします~。僕はデザートの準備をしますね」


夕日が沈んでいく。

王都からたった2日の場所で、世界最強の騎士は、剣ではなくペグハンマーを握り、かつてないほどの「充実感」を味わっていた。


まだ誰も知らない。

これが、世界を救う旅ではなく、世界一優雅な「ピクニック」の始まりであることを。

そして、この光景をまだ神様が見ていないことが、後の悲劇(神様にとっての)を生むことを。

(第1話・完)


第1話をお読みいただき、本当にありがとうございます!


緊迫した世界に放り込まれたのに、まったく空気を読まない主人公ですが、これからさらに異世界の常識を(スローに)破壊していきます。


「こいつふざけてるな!」「魔王軍が不憫で面白い!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップして星評価を入れて応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!


ブックマーク登録も、ぜひよろしくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ