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斉木光の観察記録  作者: マモシ


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9/11

泳げないはずの男2[推理編]

私たちはテーブルに座りみんなでさっきの話を整理していた。


「改めて聞くけど、多田君は昔泳げないと証言していた。これは間違いない?」

「ああ、確かに聞いたぞ」


そうなるとまず、考えないといけないのがなぜ泳げないのにプールに浮いていたのかだ。


「そもそも、泳げない人間がプールにいるのも不思議だけどな」

「そうだね」


佐藤君と酒井さんの疑問はもっともだ。泳げない人間がプールに来ていること自体おかしい。


「泳ぐ練習をしに来ていたんじゃないのか?」


佐藤君がいいポイントに気が付いた。


「それかも!」

「でも、泳いではなかったぞ?」


そうここが不思議なのだ。

泳げない。泳ぐつもりもなかった。

それでも彼はプールに来ていた。

つまり、目的は「泳ぐ」以外にあった。


「そうか、それなら違うね」

「でも、プールに来る目的なんて泳ぐ以外何があるんだ?」

「そうだな」


私は考える。なぜプールに人は来るのか。

プールは夏限定である。もちろん屋内であれば冬でも行けるが基本多いのは夏だ。

ではなぜ行きたいのかは人それぞれだ。


「ねえ、みんなプールはどんな時行きたい?」

「うーん。遊びたいときかな?」

「思いっきり泳いで体を動かしたい時だな」

()()()()()


佐藤君の理由に私は引っかかった。


「暑いからか……」

「そりゃ誰だってこれだけ暑ければ冷たい水につかりたくもなるだろ?」

「言われてみたら当たり前で考えなかったね?」

「ああ」


暑いから来たかった。多田君もそれの理由なら来たのは分かる。

だが、謎はまだある。


「仮に暑いから多田君がプールに涼みに来たとしたら矛盾があるんだ」

「なんで泳げないのに来たのかだな?」

「うん」


そう、泳げない多田君は何でプールに来たのかである。


「そもぞもなんで浮き輪とか使ってなかったんだ?」

「確かにそうだね。何も使わずただ浮いていただけだったよ」

「俺もそう見えたな」


私は仮定を立てる。


「必要がなかったのかも」

「必要がなかった?」

「そう」

「何でなんだそれは?」

「そこまでは分からないけど何か理由があって必要がなかった可能性はあると思う」


私はもう一度頭で考える。

だが今一つ何かが足りない気がしていた。


「まあ、考え込み過ぎても良くないしとりあえず休憩にして飲み物でも飲まないか?」

「そうしようか」

「ああ、いいと思うぞ」


そうして皆で飲み物を買いに行くことになった。


「いらっしゃいませー!ご注文お決まりですか?」

「はい。俺はサイダーで」

「私はメロンソーダ」

「俺はオレンジジュース」

「私はアイスコーヒーで」

「かしこまりました!」


佐藤くん、三船君、酒井さん、私の順で注文を終えて、店員からそれぞれの飲み物を受け取る。

そうして私たちはテーブルに戻り飲み物を飲んで休憩する。


「ぷはー!オレンジはいいな!」

「ふふ、三船君はいつもオレンジジュースだね?」

「や、やっぱかっこ悪いかな?」

「むしろかわいいよ」

「お、おう」


三船君は真っ赤になっていた。

そして緊張からかオレンジジュースを一瞬で飲み干す。


「おいおい。飲むの早いな」

「い、いや、これが少ないだけだ」

「そうだね、氷で水増しされているからね」

「氷が解ければ自然と多くはなるけど薄くなるからまずいしな」


私は多く見えていたはずの飲み物が少なくなっていくのを飲みながら感じる。


「少なくなっていく?」

「うん?斉木さんどうかしたか?」


この瞬間足りなかったものが完全にそろった。


「分かったかもしれない」

「え、ほんとか!?」


みんなの目線が私に注がれる。


「うん。いつも通り予想だけどね」



その時のプールには増減という名の重要なものが、確かにあった。









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