不思議な女学生2[推理編]
私は、さっそく確認作業に入った。
「ねえ、その子の家庭環境って分かる?」
「うーん……そこまでは知らないかな」
「じゃあ、その子の友達に聞くことはできる?」
「うん、できるよ。ちょっと待ってね」
酒井さんはスマホを操作し、連絡を取ってくれる。
――十分ほどして。
「返信きたよ。その子の家庭は母子家庭で、お母さん以外に近くに家族はいないみたい」
「お母さんはどんな人か、分かる?」
「体は弱いけど、優しくていい人だって」
「ありがとう」
私は、心の中でその情報を反芻する。
(体が弱くて、優しい母親……)
性格に問題はない。
でも、どうしても引っかかる言葉があった。
体が弱い
「もしかして……お母さんが倒れてて、看病してるとか?」
佐藤君が言う。
それも一瞬考えた。
だが、私は首を横に振る。
「お母さん、今は元気なの?」
「うん。特に問題はないみたい」
「じゃあ違うのか……余計に分からないな」
「仮に看病だとしても、昼休みにトイレにこもる理由にはならないからね」
「確かに……」
私は、別の角度から切り込むことにした。
「酒井さん。その子、友達に何て言ってはぐらかしてたの?」
「えっとね……高校に入ってから夕食は私が作ってるから、急いで帰らないといけないって。昼休みも献立を考えてるって言ってた」
「……それは、嘘だね」
「だよな」
佐藤君も即座に同意する。
ただ――私は、そこで思考を止めなかった。
(本当に、全部が嘘?)
人は嘘をつく時、無意識に真実を混ぜる。
全部を偽るより、その方が自然だから。
例えば「今日の夕食はカレー」と言って、実際はルウだけを買った場合。
半分は本当で、半分は誤魔化しだ。
だから、その子の言葉も――
(“夕食を作っている”部分は、本当かもしれない)
「斉木さん?」
考え込んでいた私に、酒井さんが声をかける。
「あ、すみません。少し考えてました」
「何か分かった?」
「いえ……まだ確信はありません」
「俺は完全にお手上げだな」
佐藤君はそう言って、肩を伸ばした。
私は、一つ確認したいことを思い出す。
「あの……酒井さん。その子の家の場所って分かる?」
「大体なら。どうして?」
「家の近くにスーパーってある?」
「えっと……確か、一軒だけあったと思う」
「名前、分かる?」
「スーパー松田、だったはず」
「ありがとう」
私はスマホで、そのスーパーを調べた。
――そして、ある情報に目が止まる。
(……やっぱり)
すべてが繋がった。
「酒井さん。今から言うこと、その友達に伝えてもらえますか?」
「え、うん」
私は、佐藤君には聞こえないように、酒井さんに耳打ちする。
「なるほどね……」
「え? 何だよ、俺だけ分かってないじゃないか」
「まだ予想だから。間違ってたらごめんなさいって付け加えて」
「分かった」
酒井さんは、私の言葉をそのまま送ってくれた。
――結果は、すぐに返ってきた。
「友達が言ってた。斉木さんの言った通り、全部正解だったって」
「……よかった」
私は、ほっと胸を撫で下ろす。
「で、結局どういうことだったんだ!?」
我慢できなくなった佐藤君が、身を乗り出す。
「その子はね――」
私は静かに言った。
「優しいだけだったんだよ」
「は? どういう意味だ?」
「今から説明する」
そうして私は、佐藤君に真相を語り始めるのだった。




