二度目の鮮烈[違和感]
「暑いな。やっぱり…」
私は今年も待っていた。
「おーい!光ちゃん!」
「酒井さん」
「わあ、今年も可愛いね!」
「うん。ありがとう。酒井さんも可愛いよ」
「ふふ、ありがとう」
そうして20分ほど佐藤君たちを待っていた。
「にしても二人とも遅いね?」
「そうだね…」
二人にしては珍しいと思っていたら、見知らぬ男の人たちが近づいてきた。
「ねえ、君たち今暇だよね?」
「暇じゃありません」
「えー、嘘だよ。暇そうにしてたじゃん?」
「あの!」
体が勝手に動き、酒井さんを守らなくちゃと前に出て少し声を張る。
「人を待っているので!」
「え、そうなの?じゃあ君はいいわ」
男は私を押しのける。
「え?」
私は急だったこと。そして草履だったこともあり、こけそうになる。
だが、こけることはなかった。
太い腕が私を支えてくれていた。
体が触れた瞬間、ほんのわずかに心臓が跳ねた。
「三船君?」
「大丈夫か?光さん」
「う、うん」
見ると佐藤君が酒井さんを助けに行っていた。
「俺の連れに何か用ですか?」
「え、本当に待ってたんだ……し、失礼しました!」
男は一目散に逃げていく。
「光ちゃん大丈夫!?」
「う、うん。三船君が助けてくれたから。ありがとう」
「おう、気にすんな」
「そうだぞ、こわもてが生きるのはこういうときだけだからな?」
「お前は失礼過ぎだ」
みんなが笑う。
「すまん遅くなった」
「そうだよ!」
「すまん、すまん」
「まあ、酒井さん二人も慣れないことで時間がかかったんだよね?」
「おう。うん?俺達、遅くなった理由話したか?」
私は首を横に振る。
「でも、その浴衣を見たらわかるよ」
「ああ、なるほどな」
「確かにどうしたの、その浴衣?」
「いや、前はみんな浴衣だったからな俺達も合わせようってなってな」
「わあ!すごくいいじゃん!」
「だろ!」
その事実は私の胸を温かくするには十分だった。
「いいね」
「…だな」
「ほら、お前ら行こうぜ!」
「うん」
そうして会場にくことになったのだが……
「……やってしまった……」
どうもまた今年もはぐれてしまったみたいだった。
私は例年と同じく道を少し外れた場所にいた。
ただ去年とは違いそこは明るく照らされていた。
さて、どうやって合流しようかと悩んでいると腕が引っ張られる。
「み、見つけた」
息を整えながら三船君が私の手を掴んでいた。
「早かったね?」
「ふ、そりゃ去年のこともあるからな念の為こまめに見てたんだよ」
「ふふ、ありがとう」
「……礼を言うのはみんなに合流してからだな…」
「え、もしかして……」
「ああ、俺たち二人とも迷子だ」
三船君は妙に落ち着いていた。
不思議に思って聞いてみた。
「何でそんなに落ち着いてるの?」
「え、いや、光さんが冷静だから何となくかな?」
「ああ、自分以上に慌ててる人を見るとってみたいな話に近いってこと?」
「そうそう!」
まあ、それなら落ち着いた二人がいるのだ。
なんとかなる。
「まあ、とにかく近くを回ろう」
「うん」
そうして少し見て回ることにした。
足が痛くなってきた頃だった。
「見つからないな?」
「うん…」
佐藤君と酒井さんは見つからない。
「何かヒントになることがあればな……」
「確かにね」
だが、この人が多い中見たことのない人を人に聞いてっ回るのは無謀だ。
「すべて知っている人なら…」
そうして人混みを見ているとさっきのナンパ男たちを見つける。
あの人達なら知っているかもしれない。
賭けだが、迷子になったのは私のせいだ。
やるしかない。
私は一直線に男たちのもとに向かう。
「あの」
「あ、さっきの子」
「私たちと一緒にいた男の子と女の子見ませんでしたか?」
「ああ、それなら……」
「おい、ちょうどいいんじゃねーか?」
「おお!たしかに」
何か二人で盛り上がっていた。
「なあ、これから女の子たちと会う予定なんだが、少し話を適当に合わせてくんねーか?」
「何でだ?」
「そ、それは言えねーが変な話じゃねーよ」
「分かりました」
「よし!」
私たちは男たちについていくことになった。
でも、心のどこかでざわつくものがあった。
ここは人が多すぎて、もし変なことになったらすぐ逃げられない。
「いや、光さん。やめた方がいい」
三船君の声には少しだけ焦りが混ざっていた。
「大丈夫。私も気を抜かない」
私は肩越しに男たちを見ながら答える。
男たちはにやりと笑った。
私は背筋から冷や汗が出ていた。
足の裏が少し冷たく感じ、草履の感触がいつもより滑りやすく思えた。
だけど、私の手で解決できるかもしれない。それだけで私は踏み出せた。
私は三船君の裾を掴む。
その手はかすかに震えていた。
「大丈夫」
彼は小さくうなずく。
もし何かあっても、私が悪い。
そう思えたことで、足が前に出た。
近づくことで、男たちの熱気が直に伝わってくる。
こうして、私たちは男たちについて歩き始めた。
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