不思議な女学生
そろそろ、佐藤君の相談事を解決してから数週間が経っていた。
私は相変わらず、特に変わり映えのしない日常を送っている。
「今日は暖かいな……」
窓から差し込む春の日差しは、心地よくて、どうにも眠気を誘う。
春眠暁を覚えず、という言葉もあるくらいだ。
仕方ない、と自分に言い訳をして、まぶたを閉じかけた、その時。
「斉木さん、ちょっといいか?」
佐藤君の声で、意識が現実に引き戻される。
「うん? 佐藤君、なに?」
「実は……相談があってな」
「また?」
思わずそう返すと、佐藤君は苦笑した。
「ああ。今回は俺のことじゃないんだが……頼れるのが斉木さんしかいなくて」
「役に立てないかもしれないよ?」
「それでも構わない。今のままだと、どうにも手詰まりだからな」
その言葉に、私は小さく息をつく。
「……分かった」
「ありがとう。今日の放課後、前に行った喫茶店でいいか?」
「了解」
こうして私は、また相談に巻き込まれることになった。
⸻
放課後。
「……で、どうして酒井さんも一緒なの?」
喫茶店の席に着くと、私の向かいには佐藤君と、その隣に酒井さんが座っていた。
「実はね、相談を受けたのは私なの」
「相談を?」
「うん。私の友達からでね。それを彩人に話したら、斉木さんなら何か分かるかもって」
なるほど。
間接的な相談、というわけか。
「すまないな」
佐藤君は申し訳なさそうに頭を下げる。
「気にしないで。話を聞くだけだから」
「そうか。ありがとう」
本当に、律儀な人だと思う。
「それじゃあ、本題に入るね」
酒井さんは、少し言いにくそうに話し始めた。
「私の友達のクラスに、不思議な子がいるの。昼休みになると、必ずトイレに行く子がいてね」
「トイレ?」
「うん。そのまま昼休みが終わるまで、ずっと出てこないの」
「……ここまでなら、便所飯で片づけるところだな」
佐藤君が呟く。
「でも、その子ね。友達の昔からの友達なんだけど、そんなことをする子じゃなかったの。心配になってお昼に誘っても、必ず断られるし、放課後も急いで一人で帰っちゃうみたいで……」
「本人には聞いた?」
「聞いたよ。でも、はぐらかされるだけで」
「意味不明だろ?」
私は少し考えてから、口を開く。
「じゃあ、情報を整理しよう」
二人がこちらを見る。
「まず、その子には“人に知られたくない何か”がある」
「うん」
「それから、昼休みは必ずトイレ」
「そう」
「放課後は急いで一人で帰る」
「間違いない」
「トイレには弁当を持って行ってる?」
「うん」
となると、便所飯は確定。
でも、理由が分からない。
「いじめは?」
「それはないみたい」
「友達とのトラブルも?」
「それもない」
前までは普通に仲が良く、昼休みと放課後以外は問題なし。
――おかしい。
私は、ある一点に意識を向けた。
(問題は本人じゃない)
そう、問題があるのは――
その子の“周り”だ
ここまで情報が揃えば、答えは一つだった。
私は、静かに確信する。




