バタフライエフェクトの渦2 [観察]
「「いただきます!」」
私達はお昼ご飯を食べていた。
おばあちゃんは何を二人に言ったのか……
まあ、おばあちゃん家にいる間にわかればいいだろう。
「おいしい!」
「ほほ、そりゃよかった」
佐藤君は満足げに食べていた。
「ねえ、おばあちゃんさっきは二人に何を……」
「おっと、それは秘密じゃ」
言葉を遮られる。
ち、流れで聞く作戦は失敗だ。
「まあ、そんなに気にするな光さん」
「……なんで?」
「……なんとなく」
三船君は視線を逸らす。
これは絶対何かある。
「まあ、まあ、おばあちゃんだし悪いことは言ってないわよ」
「まあ、うん…」
それは分かっているが、やっぱり気になる。
その前の会話が私のお婿さんの話だったのだから。
「はあ、いつものだね?」
「ほほ、そうじゃよ。自分で考え自分で答えを出しなさい」
おばあちゃんはいつもそうだ。
小さなころから肝心なことはすべて私に考えさす。
「いつもこんな感じなの光ちゃん?」
「う、うん」
酒井さんが名前で呼ぶが慣れてない。
変な感じだ。
ただ、いやな感じはしない。少しむず痒いだけだ。
「おばあちゃん私にも教えてはくれないんですか?」
「うーん。そうじゃな……」
おばあちゃんは腕を組み考えていた。
そして、私の方を少し見る。だが、視線はすぐに戻った。
「すまんのう。おぬしだからこそ無理じゃな」
「私だから?」
「うむ。知らぬ方がいいこともあるってことじゃな」
「??」
酒井さんは困惑していた。
それを見ておばあちゃんは追加で言う。
「心配しなくても大丈夫じゃよ。おぬしはいつも通りでいいのじゃよ。そうすればきっと万事うまくいくはずじゃ」
「わ、分かりました」
私は手を口元に持っていく。
これは酒井さんが関係している?
そして、二人と酒井さんは少し複雑な関係だ。
もしかして、おばあちゃんは見抜いたのかもしれない。
おばあちゃんならありえる。
だが、なんて言ったんだ?
「それは、いつも日常の小さな変化の中にあるものじゃよ」
おばあちゃんの口癖だ。
日常の変化の中にを観察しそれを言葉にして紐解いていく。
おばあちゃんはいつも私に言っていた。
「……分かった」
「さあ、お腹がいっぱいになったことだし次はどうしようかね?」
「はい!私、近くにある神社に行きたいです!」
「神社?あそこは古くて何もないがいいのかの?」
「はい!調べたんですけど、そこは恋の成就とかにいいって書いてましたから」
「ほお、そんな神様だったかのう」
嘘だ。知ってたな。
昔よく話してくれていた。
「じゃあ車で行きましょうか」
「はい!」
酒井さんは嬉しそうなのでいいが、二人は何か少し不満そうだった。
「俺は待ってるよ」
「え、彩人行かないの?」
「すまないな」
「別にいいけど……」
酒井さんは少し視線を下に向ける。
自分のせいで恋に後ろ向きなのだろうか?
とか、いろいろ考えてそうだ。
それでも、無理に気を使わないようにしている感じがする。
「分かったよ。じゃあ三人だけで言ってくるよ」
「あら、車はいいの?」
「近くだし歩いていくよ」
「じゃあ、気を付けてね」
そうして私たちは三人で神社に向かう。
外は空気が澄んでおり住宅街とは大違いだ。
「空気がおいしいな…」
「そうだね」
三船君が空気を大きく吸い込む。
そしてゆっくりと吐く。
まるで、自然を堪能しようとしているみたいだ。
「おいし?」
「ああ、新鮮でいい空気だ…」
何となくだが、三船君はリラックスをしようとしているみたいだ。
そうして十分ほど歩くと神社が見えてくる。
そこは古いが、確かに存在感のある神社があった。
草木の揺れる音。鳥の鳴き声。それらが余計にそう思わせる。
「わあ、思った以上に大きいね?」
「うん。古いけど由緒正しいところらしいからね」
「確かに歴史を感じるな」
境内を少し見てまわっていたら飾ってある絵馬を見つけた。
「これ懐かしい……」
「なにそれ?」
「これは、恋のお願い事を書いておくと叶うってやつだね」
「へえ…」
酒井さんは気になる様子だった。
しきりに見ていたが、さすがに友達の前では気まずいのか、なにも言わない。
私は気を遣うように言う。
「書いてみようか?」
「え?」
「書きたいでしょ?」
少し悩むように頭を下に向けていたが覚悟を決めて言う。
「うん…」
「じゃあ、みんなで書こうか」
「……ああ」
少し三船君には悪いことをしたかもしれない。
だけど、私はそれでいいと思った。
その感情に名前はなかった。
いわゆる謎だった。
ただ、それが何となく私の望みのような気がした。
絵馬をかくこと5分。
「できた…」
そうつぶやいて酒井さんは絵馬を見せてくる。
そこには「彩人ともう一度」そうとだけ書かれていた。
「見せてよかったの?」
「うん……知っておいてほしいの」
その目には真剣そのものだった。
「分かったよ」
「ありがとう……」
それを見ていた三船君はなにか決めたように私には見えた。
「なあ、酒井さん」
「うん?なに?三船君?」
「少し話があるんだ」
「話?」
「ああ」
私は真剣な空気を感じ取り少し離れた神社の入り口まで行く。
そうして二人も少し離れた神社の裏に行った。
三船君の後ろ姿からは静かだが確かな覚悟を感じた。
そうしてしばらく経過した。
少し心配だった。
「ここは動物も出るし大丈夫かな……」
話し中だと思い、探していなかったが、さすがに心配になった私は、神社裏に行く。
その途中、絵馬の前を通る。
そこには真新しい絵馬が飾ってあった。
「前を向けるように」と書いてある。
その文字は見覚えがあって目を離せなかった。
「だめだ、二人を探さないと」
そうして神社裏に行くと二人が座り込んでいた。
「二人とも心配したよ?」
「う、うん。ごめんね…」
「ああ」
二人は何かよそよそしかった。
その瞬間にさっきの絵馬を思い出した。
「前を向けるように」か。
「じゃあお参りして帰ろうか」
「うん」
「おお」
私達は賽銭箱の前に行き、お賽銭を入れてお祈りする。
その瞬間、まるでその空間が切り取られたみたいに静かだった。
誰にも邪魔できない空間のようだ。
「さあ、いこうか」
私達は神社を後にする。
そこには確かな静けさと静かな熱を残しているような気がした。




