バタフライエフェクトの渦[違和感]
また夏は来た。
つまり夏休みだ。
「光、あなた明後日おばあちゃん家いくでしょ?」
「うん」
毎年家は夏におばあちゃんちに行くことになっている。お盆はお母さんが休みじゃないからこの時期になるのだ。
「誰か連れていきたいなら連れてきていいわよー」
そう言われても友達をおばあちゃん家に連れていっても仕方ないのでは?
そんなことを考えているとメッセージが来る。
佐藤君からだった。
内容は「あさって遊べるか?」という内容だった。
私は明後日は田舎のおばあちゃん家に行くから無理だとメッセージを送る。
すると佐藤君から「え、いいな!自然多いのか?」と来たので「多いよ」と返した。
すぐに返信が来た。「めっちゃいいな!俺ん家おばあちゃん家も都会だから羨ましい」と来ていたので何となくお母さんのさっきの言葉を思い出して「じゃあ来てみる?」と送った。
「え!?」
即返答は来た。まるで待ってたかのように。
「行く!」と一言返ってきたのだ。
「お母さんに言わなきゃ……」
そうして佐藤君の里帰り同行が決定したのだ。
明後日。
「今日はお願いします!」
「お願いします!」
「お願いします」
「ええ、よろしくね」
「何でこんなことに?…」
なぜか話を聞きつけて他の二人も来ることになりいつもの四人で里帰りすることになったのだ。
「それにしてもいいんですか?こんな大勢で」
「いいのよ。おばあちゃんも大勢で言った方が喜ぶから」
「そうなんですか?」
「ええ、こんなに光に友達と彼氏候補がいたらおばあちゃん喜ぶわ」
「え!?」
「「ごほごほ!?」」
酒井さんが驚き、佐藤君と三船君はお母さんのあまりな発言にせき込んでいた。
「気にしないでいつもこういう冗談言う人だから」
「そ、そうか」
「わ、分かった」
「ふふ」
「はあ」
先が思いやられる。
そうして私たちは目的地のおばあちゃん家に出発した。
そうして車の揺られること1時間。
「すごいな!山がこんなに近くだぞ!」
「おお」
「綺麗だね」
みんな自然が珍しいのか、少し興奮気味だ。
「なにもないだけだよ?」
「もう、光は心がすさんでるんだから」
だってコンビニはおろか、スーパーですら歩いて30分かかるところだ。
そんな田舎に素晴らしさは感じない。
「そうだぞ斉木さん!こんなに綺麗なのに!」
「あら、斉木だと二人いるわよ?」
「えっと、ひ、光さん……」
佐藤君は少し顔を下に向けながら名前を呼ぶ。
「もう、お母さん佐藤君をからかわないでよ?」
「い、いや、お母さんの言うとおりだぞ?ひ、光さんと呼んだ方がいいだろ?」
「三船君まで…」
「ふふ、青春ねえ」
「私も名前で呼びたい!」
そうしてみんなが私の名前を呼ぶ。
まるで犬の鳴き声合戦だ。
「ほら、みんなおばあちゃん家が見えてきたわよ」
そこには立派な大きな洋風の家があった。
「「え!?」」
「まあ、そういう反応になるわよねえ」
みんなはおそらく和風を想像していたのかもしれないがおばあちゃんは洋風が好きな人で家は和風ではなく洋風なのだ。
「おばあちゃん来たわよー」
お母さんは玄関のドアを開け叫ぶ。
「ドアは開いてるんだな?」
「ああ、おばあちゃんそういうところは和風だから」
「か、変わったおばあちゃんなんだね?」
「そうかな?」
私は生まれてからこれが普通だったので違いが分からないが変わっているのかもしれない。
「おお、よくきたねえ」
廊下の奥から細身で小さなおばあちゃんが現れる。
「あらあら、話には聞いてたけどいっぱい来たねえ」
「「お世話になります!」」
みんなが頭を下げながら言う。
「ふふ、はいはい」
それを見ておばあちゃんはにっこりしていた。
「で、光のお婿さんになるのはどちらだい?」
「「え!?」」
お母さんと同じくとんでもないこと言うおばあちゃん。
私はすかさずいう。
「おばあちゃん二人は友達だからお婿さんにはならないよ?」
「あら、そうなのかい?」
「そうだよ。ね」
「あ、ああ」
「そ、そうか……」
佐藤君も三船君も慌ててたからなのか少し顔が赤い。
「二人とも気にしないでね?」
「「……」」
二人共は黙ってしまう。
「まあ、まあ!」
それを見ておばあちゃんは何か勘違いをしていたみたいだった。
「おばあちゃん落ち着いて?」
「ふふ、落ち着いてるわよ?」
駄目だ。
この状態のおばあちゃんは止められない。
おばあちゃんはニコニコで二人に手招きをする。
二人は顔合わせて困惑した表情でおばあちゃんのもとに行く。
そうして三人でこそこそ話していた。
「お、おばあちゃん元気なんだね?」
「……ごめん」
私は頭を抱えて謝罪する。
「いいよ。むしろ、可愛らしいおばあちゃんだね?」
「まあ、見た目はね……」
この人は見た目は可愛いが、すごく賢くて聡明な人だ。
「光ちゃんはやっぱり賢いねえ」
いつの間にかおばあちゃんが、二人を解放して後ろに立っていた。
「はあ、おばあちゃんに似たのかもね……」
「ひひひ」
独特な笑みを浮かべるおばあちゃん。
「何を話していたの二人とも?」
私は解放された二人に聞く。
「えっと、秘密だ……な、雄一」
「お、おう……」
「??」
おばあちゃんのことだ何か裏があるのだろうが、気にしても無駄だ。
おばあちゃんはこういう時には敵わない。
私は何も考えないようにするために外に視線を受ける。
そこには一匹の蝶が飛んでいた。
そういえばあれ、なんて言うんだっけ?
あ、そうだ。バタフライエフェクトだ。
小さな現象が波紋のように広がり、事象に大きく影響を与えること。
その時そのこと思い出していた。




