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斉木光ノ観察記録  作者: 雨夜 フレ
一年生編

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35/43

濡れてない傘の秘密[違和感]

それはしとしとと雨が降る六月のある日。


「え、ない?」

「斉木さんどうしたんだ?」


三船君が、後ろから靴を履きながら来ていた。


「えっとね。私の傘がないの…」

「取られたか」

「うん?どうしたの?」

「どうした」


後ろからさらに酒井さんと佐藤君が来る。


「それがね……」


酒井さん達にも説明する。


「それは最悪だね」

「うん……」


少し視線が下を向いてしまう。


「な、なら、俺と一緒に帰るか?」


佐藤君が少し顔を赤くして聞いてくる。


「いや、恥ずかしいでしょ?」


この年で相合傘はさすがに恥ずかしいものだ。


「そ、そんなことない!」

「そ、そう?」


なぜ身を前に出して食い気味に言ってくる佐藤君。


「なら俺の傘にするか?」

「え?」

「俺の傘は俺の大きさに合わせて少し大きいから二人でも行けるぞ?」

「でも、悪いし……」

「そうだぞ。雄一。俺が最初に誘ったんだしな」

「いやそれはどうでもいいでしょ」


酒井さんがあまりの発言にツッコむ。


「そうか……」


なぜかしゅんとする佐藤君。


「二人ともありがとう。でも悪いし走って帰るから……」

「「それはだめだ!」」


二人して圧が強かった。


「ねえ、ただ、誰かが近くのコンビニで傘を買ってくればいいだけじゃない?」


その言葉に皆が沈黙した。

雨の音がやけに大きく聞こえていた。


「そうだな…」

「ああ……」

「じゃあ、私が買ってきてあげるね?」

「ありがとう酒井さん。お金はあとで渡すね」

「うん!じゃあ、まってて」


そうして傘を買ってきてもらいその日は無事帰ることが出来た。


翌日。

雨は翌日も降り続いていた。


「え?」


私は下駄箱に行き傘立てを見て体が固まる。

そこには昨日なくなったはずの傘が立てかけていた。

後ろから佐藤君ものぞいていた。


「え、それ斉木さんの傘だろ?」

「うん……」


私は傘を傘立てからとってよく確認する。

名前もしっかり入っている。

私の傘だ。


「やっぱり誰かが間違えて持って帰って後で名前があることに気付いて返したんじゃないか?」

「……だと思ったんだけどね。不思議な点が一つあるの」

「どこが不思議なの?」

「この傘濡れてないの」

「昨日使って乾かしたんじゃないのか?」

「でも二日連続雨だし乾かせるかな?」


酒井さんの言う事はもっともだ。

昨日も今日も雨で乾かす暇なんてないはずだ。

仮に乾かしても多少は湿っているはずだ。


「どういう事なんだ?」


佐藤君は頭をひねり考えていた。

そうして話していると始業前のチャイムが鳴る。


「いけない!この話はまた後にしよう!」

「ああ、そうだな!」


そうしてみんなで急いで教室に行き朝は雨音のように騒がしかった。


放課後。


「よかった。取られてない」


どうも昨日の時点で傘が間違っていたと気づいていてくれたみたいだ。


「もしかして間違いに気づいて丁寧に拭いてくれたのかもね?」

「うん?朝の話か?」

「うん。濡れたままじゃ申し訳ないでしょ?」

「俺も考えたけどそれも変じゃないかな?」

「え、どうして三船君?」

「えっと、今日も確実に雨は降るって天気予報でも言ってたのにわざわざ拭いて返すかなって」

「……確かにな」


ますます状況は分からないままだ。

まるで雨が真相を隠すかのようになっているように思えた。


「とにかく場所を変えないか?」


佐藤君が提案する。


「そうだね」

「そうするか」

「うん」


私達はみんな賛成だった。

と言う事でみんなで喫茶店に来ていた。

それぞれ飲み物を注文し席に着く。

店内は人気が雨のため多く人の声と熱気で満ちていた。


「ねえ、私考えたんだけど、もしかしたらその子わざと持って帰ったんじゃないかな?」

「どういうことだ?」

「えっとね、斉木さんの傘を気に入って密かに取った。傘をさすと持ち主にばれるから帰りは自分の傘をさして帰っていた。だけど、あとで自分のやったことが怖くなって返したじゃないかな?」

「一応話は分かるが色々不思議だぞ?」

「え?」

「傘を二つ取るってことは目立つ。そして傘を差さなかったとしても二本目を持っている時点で多少目立つ。それに斉木さんの傘には名前が書いてある。それを見られる可能性も考慮したら盗難ははかなり低いんじゃないか?」

「確かに……」


そうなのだ。私もその可能性は考えただけどあまりにも不自然で可能性は低いため除外したのだ。


「あと気になってるんだけど」

「うん?何がだ?」

「三船君もし三船君が故意に傘を盗もうとする場合名前付きは避けない?」

「まあ、そうだな。でも気に入ったとかなら仕方ないんじゃないか?」

「うん。でも考えてみて、もし家に帰って家族の誰かに見つかったら?」

「そうか、大人ならともかく俺達は基本、実家暮らしだ。家族に見られる可能性が高いならまず盗まないってことか」


私は黙ってうなづく。

どうもいまだに謎は雨の中にあるようだった。


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