泣く女笑う男の真実[観察・解決]
「何か気になってるんだな?」
佐藤君が私に様子に気付き聞いてくる。
「うん。予想って言葉が妙に気になるんだ」
「ああ、俺も気になってる」
「その人たちには聞かなかったの?」
「いや、聞いたんだけど、「自分が悪いからって」いうだけなんだ」
自分が悪い?
またこれも妙なワードだ。
そのまま繋げると「予想と違ったけど自分が悪いから」になる。
ただ肝心の予想していたことが分からない。
「他に何か聞いてない?」
「えっと、たしか女性の方は最後にこう言ってた「私が悪いから」って」
つまり男性は悪くない?
余計に混乱して来るがとにかく整理しよう。
男性は笑い。女性は泣いていた。
お互いを見ていた。
その後逆転していた。
予想と違う。
そうして並べることで私は気付く。
お互いを見ていたことが重要なんじゃないかと。
「予想が違ったのは相手の表情かも…」
「どういうことだ?」
「例えばだけどね。三船君が好きな人と同じクラスになった。ならどういう反応になる?」
「え?えっと、よ、喜ぶな?」
「うん。で、酒井さんもし自分が泣くような人とクラスが一緒になるとしたらその人はどういう関係の人かな?」
「うーん」
酒井さんは悩んでいた。
それもそのはずだ。
これは「嫌いな人」という単純な答えではない。
「悩むよね。そう私もそこが分からない」
「嫌いな人じゃないのか?」
「普通ならそう思うけど、考えてみて嫌いな人と一緒のクラスになったからって泣くほど嫌なことじゃないよね?」
「そうだな……」
そう、ここがポイントなのだ。
嫌いな人と一緒になったからって泣くほどのことはそうそうない。
「私考えたんだけどね。それは悲しかったから泣いたのかな?」
「え、どういうこと?」
酒井さんの言葉に私は違和感を感じる。
「なくって言ってもいっぱいあると思うんだ嬉しいからとか感動でとか」
「……なるほど」
私は口元に手をもっていって考える。
「泣く理由……」
それは悲しいだけではない。
完全に盲点だった。
「もしかして嬉しかったのか?」
三船君が疑問を持ちながら言う。
「何でそう思うの?」
「ああ、それは……」
三船君が私にだけ聞こえるように言ってくる。
「好きな人がいたらそうなるなって思ってな」
「ああ……」
言葉にしてしまえば単純だ。
でも、その単純さに気づけないほど、人の感情は近くて遠い。
そして、仮に女性が嬉しくて泣いていたとしたら……
「筋が通る…」
「お、何か分かったのか?」
「多分ね」
外の天気は少し曇っていた。
雲が重く連なるように漂っている。
「おそらくだけど二人とも嬉しかったんだよ」
「二人とも嬉しかったってことは、分かったけどなんでそのあと逆転してたんだ?」
「それは簡単。お互いの初めの反応を見て女性は好きな人に喜んでもらえているんじゃないかって嬉しかった。そして男性は勘違いをした。嬉しくて泣いてたのを悲しくて泣いていると思った。だから泣いていた」
「つまり二人はある程度仲が良かったってことだな」
「ああ、俺が聞いた時も顔見知りではあったようだしな」
そこは教室で周りは騒がしいはずなのに妙に静かな気がした。
「つまり勘違いから生まれた違和感だったってこと?」
「そうだね」
「じゃあ、俺それを伝えてくるよ!」
佐藤君は駆けだそうとしていた。
「まって!」
それを酒井さんが止める。
「なんだよ?」
「やめておこう…」
「なんでだよ!?このままだと勘違いしたままで可哀そうだろ?」
「そうかもしれないけど……」
私は酒井さんの言おうとしている感情は分からない。
ただ何となく伝わってくるのだ。
言ってはいけないと。本能で。
「ああ、言わない方がいいぞ」
「雄一まで何でだよ?」
「佐藤君私も反対だよ」
「斉木さんもか?」
「うん。人間の関係って私たちが思っているより難しいと思うんだ。感情やプライド、意地いろんなものが混ざってるから」
「ややこしくするなってか?」
私は静かに首を振る。
「そうじゃないの。ただ当事者しか分からないものもあると思う。私たちもそうでしょ?」
「そうだな……」
その言葉で佐藤君は納得した。
教室のざわめきの中で、私はその二人をもう一度だけ見た。
そこに、さっきまでの違和感はなかった。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
この作品は、派手な答えを出す物語ではありません。
それでも、もしどこか一行でも引っかかるものがあったなら、
それはこの物語が、ちゃんと届いている証だと思っています。
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