甘酒の匂い香る謎2 [解決]
「列が二つ?」
「うん」
私は一息入れて説明する。
「あのね、佐藤君、酒井さん思い出してほしいんだけどね。子供はいつも右手側にいたよね」
「言われてみたらそうかも?」
「ああ、覚えてるぞ」
確認は取れたなら間違いはない。
「それはね右側が米麹を使った甘酒で左が酒粕から作った甘酒なんだよ」
「そういう事だったんだね」
「え?何か違うのか?」
みんなの目線が佐藤君に行く。
「え、本気で言ってる彩人?」
「そりゃ本気だけど?」
私達は呆れていた。
「な、なんだよ!」
「あのね、佐藤君、米麹で作っているのはアルコールが入ってなくて酒粕から作るのは微量だけどアルコールが入っているの」
「え?そうなのか」
「彩人の天然が出たな」
「そうだね」
酒井さんと三船君はよくあるみたいなので慣れっこみたいだ。
「ああ、だから看板が二つあったのか」
「見えてたの?」
「ああ、でもどっちも同じだと思っていたから「味が違うのか?」程度に思ってたよ」
酷い落ちだった。
「で、これ飲んでいいのか?」
「微量だから大丈夫。でも故意には飲まない方がいいね」
「分かった。じゃあこの一杯だけにしとこう」
そうしてみんなで甘酒を飲む。
「……冷えてるね」
「うん……」
「ああ」
「米麹の方もらってくるか」
そうしてみんなで並んで米麹の温かい甘酒を飲んだ。
「やっぱ暖かいのだな」
「うん」
横を見ると三船君が呆気に取られていた。
「どうしたの?」
「ああ、先は冷たくてわからなかったけど、おいしいな」
そういって少し笑う三船君。
「飲んでよかったね」
「ああ、ありがとう」
「何でお礼?」
「いや、何となくな」
そういって黙って飲み続けていた。
何でお礼を言われたか分からないが、何となく胸が温かくなっていた。
「じゃあ行こうか」
「おお」
そうして私たちは初詣を済ました。
「願い事なんにしたの?」
「俺は、お小遣いアップだな」
「彩人らしいな」
「そういう雄一はなんだよ?」
「俺は内緒だ」
「ずるいぞ。人に言わしておいて」
「俺は聞いてないがな」
私は楽しそうな三人の会話を聞き何となく嫌な予感がしていた。
「斉木さんはなにをお願いしたんだ?」
「……お小遣いアップ」
場が沈黙する。
「嘘だな」
「ああ」
「嘘だね」
すぐばれた。
「ほんとだよ?」
「嘘下手過ぎないか?」
「うっ」
私は徐々に追い詰められていく。
「で、ほんとはなんだったんだ?」
私は肩に力が入る。そして深呼吸して言う。
「来年もみんなでこうして初詣に行けますようにってお願いした……」
私は尻つぼみに声が小さくなっていた。
みんなが呆気に取られていた。
「ふふ、私も同じだよ?」
「え?」
「少し違うけど俺も同じだぞ」
「え?俺だけ違うの?」
一人を除いてお願いごとは一緒だった。
「いい願い事だな」
「うん」
三船君は優しい声で伝える。
「お、俺も改めてお願いして来る!」
佐藤君は慌てて改めて列に並んでいた。
「ふふ」
そんな光景に私は笑みがこぼれる。
「斉木さんがちゃんと笑った……」
「………」
酒井さんは驚き、三船君は固まっていた。
私そんなに笑ってなかったのかな?
こうして甘い香りに包まれて初詣はにぎやかに終わる。
きっと来年も同じ香りをかぐことになりそうだ。




