甘酒の匂い香る謎2 [観察]
私たちは人混みをかき分けて何とか甘酒の列に並ぼうとしていた。
だがその光景に呆気にとられていた。
「これは……」
「すごいな……」
列は人混みと混ざりどこまでなのかが分かりにくくなっており周りの状況も分からない。背の低い私は余計に分からなかった。
「三船君どこが列か分かる?」
「あーたぶんこっちだな」
そういって進んでいく三船君。
私もついていこうとするがおいていかれそうになる。
だが、手が誰かに捕まれる。
「ほら、こっちだ」
それは三船君の手だった。
「ありがとう」
「ああ……」
手をつないでくれたおかげで何とか列に並ぶことが出来た。
「三船君」
「うん?どうした?」
「これいつまで握ってるの?」
「あ、ああ!すまん!」
慌てて手を放す三船君。
手には確かなぬくもりが残っていた。
「すまなかった軽率だったな……」
女性には気を遣う誠実な彼のことだから、気軽に触ってしまったことを後悔しているのだろう。少し顔が暗い気がした。
私は首を振る。
「むしろありがとう。また迷子になりそうだったから助かったよ」
私は本音を伝える。
「そ、そうか。それならよかった」
彼の顔に明るい色が戻る。
安心したのだろう。よかった。
「次の方どうぞ」
そうしているうちに私たちの番が来た。
「甘酒二つください」
「はい」
巫女さんは流れるように甘酒を樽からくみ上げコップに注ぐ。
「どうぞ!」
「ありがとうございます」
そうして無事に甘酒をもらえた。
《《もらえてしまった》》。
「何か分かったか?」
「うん。一つは分かったかな」
「何を分かったんだ?」
「それはね、《《見た目で判断》》されているわけではなさそうだってこと」
「……なるほどな」
そう私はもしかしたら、二人が大人びて見えて年齢チェックがなかったんだと思った。だけどそれは違った。
なぜなら、巫女さんはこちらの方をほとんど見ていなかった。
「流れ作業みたいだったし見た目は見てなさそうだったんだよね」
「確かにな」
「だとすると何で子供でももらえる人がいたんだろう?」
「分からない。だけど子供の方はいつも右側の巫女さんに注いでもらってたな」
私は並んでいる間に見ていた光景を思い出す。
「確かにそうだったね」
ここで私の中で一つの仮説が出来上がる。
「何か役立つか?」
「うん。すごく役に立ったよ」
三船君は何も言わずただ嬉しそうに微笑んでいた。
「じゃあ最後に確認したいことがあるからもう一度少し列の前の方に行ってみようか」
「分かった」
私たちは二人で横から列の前の方に行く。
そうして巫女さんが注いでいるテントの近くに来た。
そこには二つの看板があった。
「なるほどな」
三船君はすっきりした顔になっていた。
「じゃあ二人に事の真相を話しに行こうか」
「ああ」
そうして私達は二人のもとに帰る。
「お帰り。どうだった?」
「単なる勘違いだった」
「勘違い?」
「うん。その通り勘違い」
「どういうこと?」
二人の視線が私に集まる。
少しの沈黙。
「つまり列は二つあったんだよ」
私の声は周りの声に飲み込まれながら確かに響いた。




