渡せないプレゼント[違和感]
「……どれがいいんだろう」
私は商品の棚の前で悩んでいた。
「男性陣のことも考えないといけないし」
私は人生初友達にあげるプレゼントを考えていた。
と言うのも12月24日に4人でクリスマスパーティーをすることになってしまったからである。
遡ること数日前。ことの発端は何気ない佐藤君の一言であった。
「なあ、みんなクリスマスって予定あるか?」
「「………」」
この一言で場は凍った。
それもそのはずだ。
酒井さんは佐藤君と別れてしまっているので予定はなし。
三船君はそんな酒井さんのことが好き。
私はぼっちで万年予定はなし。
この状況ではこんな冷たい空気にもなる。
「みんななさそうだな。よし!じゃあクリスマスパーティーをしよう!」
「いいけど、どこでするんだ?」
三船君が私も気になっていたことを聞いてくれる。
「雄一の家」
「は!?そ、それはだめだ!」
「なんでだよ?」
「いや、男の部屋だし汚いし臭いぞ!」
何もそこまで卑下しなくても。
「そうかな。前に入らせてもらったときはそんなことなかったよ?」
「い、いやあれは……」
そうか。
酒井さんは相談していたときに入ったことがあるんだった。
三船君のこの感じだと事前に綺麗にしていたんだな。
「なら、斉木さんの家でも……」
「私!男の子の部屋に一度は行きたかったの!」
「お、おお」
「だから、三船君お願いできないかな?」
私は必死に目線で懇願する。
(お願い三船君!)
「……分かったよ。斉木さんには世話になったしな」
「!。ありがとう!」
よかった。これで私の安アパートが会場になることはない。
「よし!じゃあ、決まりだな!当日はみんなでプレゼントを交換するからプレゼントの用意もしておいてくれ!」
そうしてクリスマスパーティーの開催が決定した。
そういう理由で今私は交換用のプレゼントに困っていた。誰に当たるか分からないうえに男性もいるからそれも考慮しなければいけない。
「……強敵だ」
私は手を口元に持って行って考えていた。
そうしてショッピングモール内を歩いていたら見覚えのある人影を見つける。
「あれ……三船君?」
視線の先には三船君の姿があった。
その手には有名なブランドのロゴが入った紙袋を持っていた。
「クリスマスのプレゼントかな?」
その時の三船君は妙に落ち着きがなく、理由の分からない違和感が残った。
「私もちゃんとしたの選ばないと」
そうして私はプレゼント選びに戻った。
そのあと私は無事店員さんお勧めもあってプレゼントを買えた。
そんなこんなでクリスマスパーティー当日になった。
「おーい。斉木さんこっちだよ」
酒井さんが少し遠くで手を振っていた。
「ここなんだよね?」
「うん。そうだけどうしたの?」
「ここって酒屋だよね?」
私は三船酒屋の看板を指す。
「そう、三船君の家は酒屋さんなんだよ!なんかテンション上がるよね!」
「う、うん」
どちらかと言うと友達の家になんてきたことがないので緊張していた。
「お、きたな。こっちこっち」
佐藤君がお店の裏から出てくる。
そうして裏口のドアまで案内してくれる。
「ほら、はいって」
「お邪魔します!」
「お、お邪魔します」
そうして2階に上がり三船君の部屋に来た。
「ど、どうぞ」
部屋は思った以上に広く片付いていた。
テーブルにはケーキ、お菓子、飲み物などが置かれていた。
「ふふ、お邪魔するね?」
「あ、ああ」
三船君は表情が固まっていた。その手は固く握られていた。
まあ、好きな人が家に来たんだ前とは状況も違う緊張もするはずだ。
「さあ、みんな揃ったことだし始めよう!」
「いいけど、何するの?」
「……楽しく話す?」
「いつもと同じだね」
「……」
みんなの目線が佐藤君に行く。
「ええい!とにかく楽しむんだよ!」
「はーい。じゃあとにかくケーキでも分けようか?」
「うん。そうだね」
「三船君。包丁あるかな?」
「……」
「三船君?」
「お、おう。なに?」
「包丁あるかなって」
「あ、ああ。持ってくるよ」
そうして部屋を出ていく三船君。
「なんか雄一のやつぼーとしてないか?」
「うん。なんだか様子がおかしいね?」
緊張しているだけかもしれない。でも、私にはそれだけでは説明できない違和感があった。
「プレゼントが喜んでもらえるか心配なのかも」
「ああ、それはありそうだな」
そうして話していると包丁を持って三船君が戻ってきた。
「じゃあ、分けよう!」
そうしてケーキを分け、私たちは普段と同じようにでも確かに浮ついた心で楽しんでいた。
「それじゃあ、そろそろプレゼント交換の時間だな」
「そうだね」
「ああ…」
そうしてみんなプレゼントを用意する。
「よし!じゃあ、みんなでプレゼントを回して音楽が止まったらそれが自分のだ。いいな?」
「うん!じゃあやろう!」
音楽が流れてプレゼントが回る。
そして少ししてから音楽が止まった。
「それじゃあ、目を開けてくれ」
そうしてみんなが目を開ける。
「よし、それじゃあ順番にあけるぞ。まずは美幸!」
「うん!」
酒井さんがプレゼントを開ける。
「わあ!」
酒井さんは驚いていた。そして喜んでいるのは目に見えて分かった。
「くまちゃんだ!」
「おう、俺のプレゼントだな」
「ふふ、だと思った」
二人は幼馴染なだけあってすぐに分かっていたみたいだった。
「じゃあ、次は雄一だな」
「……」
「雄一?」
「お、おう」
三船君がプレゼントを開ける。可愛らしい色だが男性も使えるぐらいのセーターだった。
「私のプレゼントだね」
「……いいなこれ」
「ふふ、気にいってもらえたならよかった」
私はてっきりもっと喜ぶと思っていたが、三船君は静かだった。
「じゃあ次は俺だな」
佐藤君がプレゼントを開ける。そこには紺色のマフラーが入っていた。
「……それ、わたしのです」
「おお!斉木さんのか!」
「店員さんとかとも相談して男女ともに使えるからって選んだの」
「これはあったかくていいな!」
それはもう輝かんばかりに喜んでいる佐藤君。
それを見て私は胸が軽くなった。
気のせいかもしれないけど、心も温かくなった気がした。
「これ毎日冬の間はつけるな!」
「そこまでしなくても、雑く扱っても……」
「それは嫌だ!」
「嫌だって……子供みたい」
「いいんだよ。子供で」
まあ、大切にしてくれるならそれでいいか。
私は少し笑ってしまう。
「じゃあ、最後は私だね」
そうして開けると中には1枚のハンカチが入っていた。緑色で男女兼用の奴みたいだった。端には有名ブランドのロゴが入っていた。
「ああ、それは俺だな」
「おお、気合入れたな雄一!」
「まあな」
「ありがとう。三船君」
「気にすんな」
そうしてプレゼント交換は終わり引き続きパーティーは続いていた。
「そろそろ飲み物がないな」
「買いに行こうか?」
「そうか、なら俺と雄一が行くか」
「私も散歩したいから行くよ」
「斉木さんはどうする?」
佐藤君が聞いてくる。
「私は寒いの苦手だからここで待ってる」
「分かった。じゃあ行くか」
そうしてみんなで買い物に出かけて私一人になった。
いつもならスマホでも見ているところだけど初めての男の子の部屋なのもあって好奇心が湧いていた。
「ほんとに綺麗だな……」
もっと荒れていると思った。
いくら片付けても多少汚いと思っていたので意外だった。
私はひとしきり部屋を見たあと落ち着かなくて簡単に片付けをするためにごみ箱の場所を確認する。
「さすがにゴミ箱までは気が回らなかったんだな」
ゴミ箱にはある程度ゴミが入っていた。
そこで私は気になるものを見つける。
それはさっきもらった有名ブランドのハンカチを買ったときのレシートだった。
「え?」
そのレシートには不思議なことが記載されていた。
私がもらったハンカチは一枚だ。でもそこにはほかに商品を買っている記載があった。
「これは……」
なぜプレゼントを2つ?
それになぜプレゼント交換の時に出さなかったのか?
なぜ、その商品ではなくハンカチを出したのか?
なんとなく私はレシートを見なかったことにできなかった。
聖夜にも謎は降り積もるばかりだ。




