破かれるドレスと破れる恋[違和感]
文化祭。
学生生活では大きな行事の一つである。
私には関係ない行事。そのはずだった。
「おーい。そっちは衣装の準備はどうだ?」
「問題ないよ」
私はクラスメイトの呼びかけにそう答える。
今年の文化祭で、うちのクラスは男女合同のミスコンをすることになった。
「そっちも忙しそうだな」
「まあね、でもそっちほどじゃないよ」
「かもしれん」
佐藤君は少し上を見上げて、息を吐いた。
佐藤君はそのコミュニケーション能力を生かして参加者を集める係なのでもっと大変だ。
「どう?参加者の募集は?」
「今のところ面白くてもいいって話込みで十人だな」
「それまずくないかな?」
「ああ、なんせ真面目に参加するのは三人だけだからな」
「しかも一人は酒井さんで二人目は佐藤君だしね」
「ああ、非常にピンチだ……」
のんきに二人の間を秋風が吹いていた。
「うう、寒い。俺もそっちにしとけばよかったな」
「無理だよ。佐藤君以上の適任者はいないから」
「……みんな俺のこと過剰評価しすぎなだけだよ」
そう言う佐藤君の顔には少し影が落ちていた。
だが、すぐに上を向き言う。
「まあ、やるだけやるさ」
「うん。頑張って」
「そうだな、期待に応えないとな?」
「??」
なんのことか分からないが、私にできるのはせいぜい応援だけだ。
そうして何とか当日までに佐藤君は倍の参加者を集めた。
「さすが彩人だね?」
酒井さんが少し佐藤君の肩を軽くたたきながら言う。
「いや、今回は本当に危なかった。友達の友達とかいうとこまで呼びかけたからな」
「それは、友達なのか?」
「……たぶん」
三船君の質問に顔を背けながら答える。
かなり怪しい返答だがそれでよく集められたものだ。
「おめでとう」
「おう、斉木さんのおかげだな」
「うん?なんのこと?」
酒井さんの疑問は同じく私も抱いていた。
私は何にもしていないのだが?
「ああ、斉木さんが俺以上に適任はいないって言ってたからな。期待に応えようと頑張ったんだよ」
「いや、あくまでみんながってことで……」
「じゃあ、斉木さんは適任じゃないと思ってたのか?」
「……適任だと思う」
三船君の質問に肯定しかできず頷く。
「それならよかったな。彩人」
「おう!」
私はなんだか背中がむずがゆくなっていた。
「あ、いた!」
衣装係の子が酒井さんと佐藤君を見つけて駆け寄ってきた。
「二人とも衣装合わせあるからそろそろいいかな?」
「分かった」
「うん」
「じゃあ斉木さんまたね」
「またな斉木さん」
「うん」
二人は衣装を合わせに行ってしまった。残ったのは私と三船君だけだった。
「なあ、斉木さん」
「うん?なに?」
「まだ、酒井さんは彩人のことが好きだと思うか?」
三船君は言葉を選ぶように慎重に話してる。
「……たぶん」
「ちなみに理由は?」
「確かに前より好意が表面上から消えたけど、逆にそれは佐藤君に気を使わせたくないってことの表れなのかなって」
「そうか……」
三船君は顔を下に向けてその場にしゃがむ。
「大丈夫?」
「ああ、すまない。思った以上に人から言われるとショックでな」
そういって顔をあげて立ち上がる。
「斉木さんは勝ち目があるって思うか?」
「それは三船君がってこと?」
「ああ」
私は手を口元に持っていき考える。
「分からないけど、0じゃないよ」
「どうして?」
「だって、まだ三船君は諦めてないから」
「!?」
三船君の肩が微かに上に上がる。
「……そうだったな」
「うん」
二人の間に静かな沈黙が流れる。
「こ、これどうなってるの!?」
沈黙を破るようにクラスメイトの声が聞こえる。
私たちは声の方向に行く。するとそこには酒井さんが着る予定のドレスの裾が破かれていたのだ。
文化祭の喧騒の中、ひとつ小さな異変が生まれていた。




