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斉木光の観察記録  作者: マモシ
一年生編

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14/26

夏祭り前編[違和感]

夕方の駅前。私は友達を待っていた。


「あ!斉木さん!」

「酒井さん。こんばんは」

「うん!斉木さん浴衣可愛いね!」

「う、うん。ありがとう。酒井さんも似合ってるよ」

「ありがと!」


私は眉がぴくぴくしていた。

言えるわけがない。お母さんが張り切って用意しただけだと。

初めは普段着で行くつもりだったのだから。


そんなことを知らない酒井さんは笑顔が絶えない。


「おーい!」

「すまない。待たせたな」

三船君の声に振り返る。


「全然待ってないから大丈夫。ね、斉木さん」

「うん」


三船君の視線はどこか落ち着かず、あちこちを見渡していた。


「よ、よく似合ってる、酒井さん」

「うん!ありがとう!」

「ああ、よく似合ってるな」


佐藤君も笑顔で褒める。

酒井さんは嬉しそうに顔を輝かせる。

そして、ふと佐藤君の視線がこちらに向く。

私は少し息が詰まった。


「おお!斉木さんも似合ってるな!新鮮だ!」

「そうだよね!」

「おお、確かに新鮮だな!」


みんなに褒められて、のどが渇いたような感覚になる。

「ありがと」と小さく言う。


その後、私たちは夏祭りの会場へ向かう。

雑多な人波、熱気、歓声――全てが入り混じる場所だった。


「わあ!すごいね!」

「ああ、この感じ久しぶりだな」

「去年は受験で行けなかったものな」


私は黙って頷く。初めての夏祭り。

けれど、受験のことは口にしない。


「さあ、遊ぼう!夏祭り!」


そうして行動を開始した――はずだった。


「ここ、どこ……?」


迷子になった私は冷静に考えようと、道端に立つ。


「お母さん!!」


小さな子供が私の浴衣を掴んできた。

顔を見て母親でないとわかると、泣き出す。


「大丈夫、泣かないで」


私は壊れ物に触れるように、そっと子供の頭を撫でる。


「ぐすぐす、お母さんどこ?」

「お母さんはどんな人なの?」

「かいじゅうしろ!」

「う、うん?」


「かいじゅうしろ?」

頭の中で言葉がぐるぐる回る。


「それはなに?」

「かいじゅうしろ!」

「うーん……」


とにかく、他の情報を聞こうとする。


「ほかには?」

「ぷかぷか!」


こめかみに手を当てる。

「あ、風船か」

「うん!」


子供は思い出したようにうなずく。


「つまり、怪獣は白で、風船もある……ってこと?」

「うん!」


でも混乱は深まる。

周りには白い風船がたくさん。どれが本物なのか分からない。

指をさして聞いても、違う、と首を振られるばかり。


「どういうことなんだろう……」


もう一度聞く。


「ねえ、もう一回言ってくれる?」

「うん。かいじゅうしろ、ぷかぷか」


頭の中で整理しようと試みる。

怪獣白、風船……まだ足りない。


「ねえ、他には?」

「みどりかめんらいだー!」


緑の仮面ライダー……さらに混乱する。

胸の奥で小さな焦りがチクリとした。

これだけでは、まだ謎は解けそうにない。

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