【1-2-2】
「こりゃまた……。直すのはいいですが、大分コレが掛かることは勘弁してくださいよ?」
マーニャさんは人差し指と親指で丸を作っている。言うまでもなくお金を表しているのだろう。
修復する上で誰に相談するのが適切かを検討した結果、リムさんとも知己であるマーニャさんの名前が挙がった。彼女に相談し、ひとまず現場を見るべきとなり今確認してもらっているのだ。
「元々大樹をくり抜いて作られてましたからね。似たようなのは作れるでしょうが完全に元通りは出来んでしょうね」
「……まあそうですよね」
隣にはリムさんは怒りを隠そうともせず構えていくる。対して張本人のククルはふわぁと欠伸を浮かべていた。それを見てリムさんはさらに青筋をピクピクさせていらっしゃる。お願いククル。リムさん刺激しないで……。
「あとご要望はリム様の研究素材の復旧もでしたよね? いやー集められるのは集めますが、うちらでは無理なものもありますよ?」
「……具体的にどれが無理だ?」
「えーと例えばこれですかね?」
素材を書き出したリストを見ながらに、二人が細かな相談を始める。
「……スーニャお腹減った」
リムさんには従者がおりジーとモノという。今はモノがツンツンと私を突いてきていた。因みに猫耳娘だ。
「そうだよね〜……。終わったらご飯にするからちょっと待ってね〜」
「ねースーニャ、皆んなで遊ぼ?」
「ククルはちょっと黙っててね……」
むーと頬を膨らませる。私は隣でただ溜息を吐くのみだ。いや本当にどうしてこうなってしまったのか。
その後に話は纏まり、私達はひとまずバルディアへと戻る。すぐに食事になったものの、私はうんともすんとも食欲が湧かなかった。
「はいでは、家の修復と素材の収集ですね。しめて聖貨一万二千枚となります」
「え、えっと……」
途方もなさすぎるその金額に耳を疑ってしまう。聖貨はこの世界における最上位の貨幣だ。一枚で一か月は暮すことが出来る。それを一万二千枚……。
「家はどれほどで直る?」
「数ヶ月は掛かるでしょね」
「チッ。まったく」
「これでも超特急でやるんですから勘弁してくださいよ」
二人の会話が進んでいく。ただ私からしたらそれよりもお金のことで頭がいっぱいで話なんて耳に入らない。
「あ、あの……」
「はい?」
「聖貨一万枚って……」
「一万二千枚、ですよ?」
「えっと、それは……」
いやそれは分かっている。ただ本気で……?
「あー大丈夫ですよ? 分割でいいので」
「あり、がとうございます。いやでもそれは……」
「……これ以上はまけられんですよ? 本当こっちも赤字にならんギリギリでやらせてもらってるんです」
「はいそれは……。でも……」
私はモノやジー、ククルを見る。ただモノやククルは状況すら理解していないのか、目の前の食事をフォークで突いて遊んでいる。ジーは巻き込まれたくないのか明後日の方向を見ていた。
「……いやあのリムさん?」
「……安心しろ」
え! やっぱり助けてくれるんだ! あんな言い方していたがやっぱり神様は神様なのだ! 私はほっと胸を撫で下ろす。
「そうですよね!? いやー安心した」
「ああ大丈夫だ。最重要な素材は元々最善の予防策を取っているからな」
「え? いやお金は――「――それは貴様で何とかしろ」
バッサリと切り捨てられる。『どうせこれから先何をするか迷っていたんだろうが。都合もいいだろう?』などと言われて取り付く島もない。そういえばこの人は神様だけれど、悪魔のような人でもあったのだ。
「……マーニャさん、何か稼ぐツテってありますでしょうか」
「私からだと冒険者として働いてもらうことくらいですかね?」
「……じゃあそうします」
いったいどれほどの時間がかかるかも分からないが、他に選択肢もなかった。
「ええ。あ、でも一つだけ」
今度は一体なんだろうか。これ以上事態が悪化する事だけは避けたいのだが。
「今スーニャさんとして冒険者登録してますが、それは使えません」
「……それはまたなんででしょう?」
「今この世界でスーニャって名前はそりゃうちも使えないです。同一人物ではないことにしてはいますが、下手にマグシアを刺激もしたくないですし。名前でも変えてもらって最初からやり直しにして下さいね」
『顔が割れてなくてよかったですほんま』とこともなげに言っている。
「はぁ……。まあもう何でもいいですよ」
「じゃ具体的に月の精算額の話ですが毎月この日に支払いを――、金額はこれくらいで――」
つらつらとマーニャさんが話を進めていく。私はただ力なく頭を垂れることくらいしかできなかった。
結果として、私はFランクの冒険者となった。名前は姉であったリムの名前を名乗ることにした。
リムさんは『名前なんてなんでもいいだろう。スーニャが駄目なら、ニャー◯にすればどうだ?』などと言っていたが、そんな前世でいうところの額に小判をつけた猫みたいな名前はゴメンだ。
ちなみにククルも手伝わせようかとも思ったのだが、所在がバレてしまうと非常にまずいということで、私単独で出稼ぎに行くことになったのだった。
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