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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第2部】 重なる足跡

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【2-3-2】

「さーてどうしたものかな」


 まだ距離は離れているしこちらに気づいている様子はない。


「……魔法でも放ちますか?」


 レナードが冗談でもなく真剣に言っている。いやいやいやそんな奇襲みたいな事はー、まあ私も考えないでもなかったけどさ。


「うーんどうしよっか」


 もしそうしてしまえば戦闘は免れないだろう。マーニャさんから大事にはしないようにとも言われているし。


「……ちなみにスーニャは使徒というものの存在を理解していますか?」


 使徒。マーニャさんは彼らをそう呼んでいた。ディーヴァヌ山脈で出会った女性も自分は使徒であると言っていた。その言葉自体は、前世でも聞き覚えがある。


「あーほら。神様に仕えるもの的な?」


「間違ってはいないです。でももっと端的にいうのであれば、彼らはその命自体をアヌに捧げているのですよ」

「どういう意味?」


 命自体を? あれか。出家とかそういう意味合いとか?


「言葉の通りにとってください。話したところで中々理解し難いものです。ただ実際に見ればそれも異なる」


 私の言葉に明確な回答はしないままだ。ただ彼の様子に私は口を挟むことはしなかった。


「では始めましょうか。彼らから得られるだけ情報を搾り取りましょう」

「了解。まあ手荒な事にはならないように極力努力しようか」


 もし戦闘になってもこちらがやられるという事はないだろうが、別に彼ら自体に恨みがあるわけでもない。無駄に命を奪う必要もないだろう。


「……そうですね」


 ありゃ。またレナードが微妙な反応をしている。先ほどから何だか彼の意図を汲み取りきれていないような。彼が言うように実際に接してみれば理解できるのだろうか?


「とにかくやってみ、――あれ?」


 前方を走っていた馬車が急に止まった。そのためにどんどんと距離がつまっていく。……もしかしてこちらの存在がバレてしまっただろうか。


「……レナード?」

「致し方ないでしょうね。警戒しつつ近づきましょう」


 少し速度を落としつつ私たちは彼らへと近づく。ある程度の距離で止まり相手方の様子を見る。


「なんだか何にも動かないね?」

「ええ。ただ止まったということは我々に何か用事があるはずですよ。まずは僕が様子を伺ってきましょうか」


 レナードがそんな提言をしてくれる。まあ確かに私が表に出てしまうと、彼らの目的が自分から現れたのと同義だ。ならば彼に任せた方がスムーズなのかもしれない。もし何か揉めたとしてもレナードであれば全く問題もないだろうし。


「じゃあお願いしようかな?」


 私の言葉に彼は頷き、一人相手方の馬車へと歩み寄っていく。私は自分の姿がバレない程度に身を乗り出しながら様子を伺う。


「失礼。宜しいですか?」


 レナードが声を掛ける。その声に応じ馬車の中からアヌ教徒達が現れる。初めに口を開いたのは、マーニャさんと話していたあの男性だった。


「後ろからつけてきていると思っていたが、お前は確か……」

「ええ。マーニャレスカさんと共にいたものですよ。貴方達のお話をもっと聞けたらと思いましてね」


 いつもは見せない外向き用の笑顔を浮かべている。こうしてみるとそこらの良いとこの少年にしか見えない。


「我々がお前に話をする必要がどこにある?」


 ただまだ子供である彼にアヌ教徒達はどこか訝しんでいた。


「話したところで私達には何も得はない。そもそもがお前は誰だ? 何故話を聞きたがる?」


 それは当然の疑問だ。彼らにとっても機密事項のはずだろうしそう易々と話すわけもない。……まあマーニャさんの時は気にせずに話していた気もするが。


「ええ。仰られている通りかと。なので自分から身を明かしましょう」


 彼は身を翻して姿勢を正す。


「僕はマグシアのレナード宰相の血縁のものになります。そしてお声がけしたのは彼からの依頼のためでもあります」


 レナードの言葉にアヌ教徒達は驚いていた。『本当か?』『いやただ確かに他人にしては似ている』『ただ血縁がいるなど聞いた事など……』と話しているようだ。


 当たり前だが、レナード本人なのだから子供の姿と大人のそれは似ているに決まっている。そのために彼らも正面から否定する事は出来ない様子だった。


「それであのレナード殿のご血縁が何用か?」


 彼らはまだ半信半疑ではあるものの、話を進めようと決めたようだった。……何となくだがレナードが内心ニヤリと笑ったような気がする。


「ええ。ありがとうございます。お尋ねしたかったのは他ならないスーニャのことです」


 無論そうだろうと彼らは頷いていた。


「単刀直入に聞きましょう。スーニャを見つけたというのは本当ですか?」


 その質問にアヌ教徒達は互いに視線を合わせた後に口を開いた。


「……そうだ。かのギィ様が穢らわしき彼奴を見つけられたのだ」

「しかしどうやって? マグシアもスーニャは探し続けていました。今まで我々も見つけられなかったのに、何故貴方達が見つけられたのです?」


 レナードの言葉に彼は誇らしそうに顔を緩ませた。


「それこそ運命。神の導きよ。まさしくアヌ神がお示しになったに違いない」

「神の導きによって、スーニャに出会ったと?」


 彼はまだ喜びに満ちた恍惚とした表情を浮かべていた。


「ああそうだ。アヌ神のご意志でなければなぜこんな事が起きようか。よもやあのリーザが生きていて、更にはスーニャと共にいるなどとはな」

「……リーザ?」


 レナードはあえて惚けているのだと分かった。話を聞き出すつもりなのだろう。


「ああ。何なら話してやってもいい。マグシアの情報次第だがな」


 本気で応じるつもりなのかは分からないが、レナードは『いいですよ』なんて簡単に応じていた。


 ただ私もこの先の話を聞きたかった。リーザが何故あの時狙われたのか。そして彼女自身も知らない伏せられた過去。


 それをとうとう知る事が出来るかもしれない。

 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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