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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第1部】 うつろう世界

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5/9

【1-2-1】贖罪

 私は異世界転生者だ。前世は全く違う世界に生まれ、死んでからはこの世界で生きている。


 碌でもない前世の死に際に願ったのは、『丈夫な身体にしてほしい』だ。あまりパッとしない? もっとチートのような願いがいい? それはそうだ。私だって思う。でも当時の私にはそれが何よりの願いだったんだ。


 そして願いは叶い、異世界に転生した私は望み通りに丈夫な身体を得て、かつ「姉」と呼べる存在や仲間たちと穏やかな日々を手に入れた。


 だけれども、突如現れた何者か達によって自分が暮らす里は滅び、重症を負った私は姉の身体を受け継ぐ事でただ一人生き延びた。


 そして私は復讐を誓った。こんな目に合わせた連中を、元凶を殺してやる。たとえ誰だろうと絶対に。


 黒幕の正体は直ぐに知ることになる。私の里を襲撃するよう指示したのはこの世界に現存する神々の一柱、ミーム=ラフェシアだった。


 この世界はアヌという名の神が作ったものだ。そして彼女とは別に、神と呼ばれるもの達が存在していて、それは六人姉妹で、太古の神々と呼ばれ、世界を長らく牛耳っている。


 私はひょんなことから、同じく太古の神々の第五女、リム=グネフェネに出会い、彼女の力を借りる事で、ミームへの復讐を果たした。神を殺した事から、私は晴れて世界の敵認定も受けたんだけど。


 戦いを終え、私たちはリムさんの住処であるグンネラの隠れ家に戻った。


 これから話すのは、復讐を終えこれからどうしようかと悩んでいた矢先の場面と、そしてリーザとの出会いについてだ。



 「――なんだこれは」

 

 目の前ではリムさんが凄まじい剣幕をしている。いやこれ戦いの最中のミームと同じくらいの迫力じゃない? 弱いモンスターだったらこれだけで倒せるんじゃないかってくらいだ。

 

「なぜ、私の家が燃えている? ――ククル」

 

 リムさんの家はバルディアからは離れた森の中にある。私たちは歩きそこへと向かっていた。途中になんだか焦げ臭さが風に乗り私達の鼻腔に届いてはいたのだけれど、ただリムさんの家への影響はないだろうと考えていた。


 だってまさか太古の神々を狙うものがいるなんて考えにくい。確かに私はミームと相対したけれど、それはこの世界においてはバグのようなものだ。


 ――だから、その太古の神々の所有する家が全焼するなんて、あり得ないことだ。

 

「……馬鹿な」

 

 あのリムさんが目を見開いて呆然としている。かろうじて姿を保っていた家屋が見ている側からパキパキと音を立てながらに崩れる。

 

「いったいどういうことだ? 私の研究が、素材が……」

 

 私はどう声を掛ければいいのか見当もつかない。ただ目の前にはリムさんの姉に当たるククル=マグノリアが項垂れながらにこちらへ背中を向けていた。同じ太古の神々ながらも、彼女は今はこの家で暮らしているのだ。

 

「ククル!? 大丈夫!?」

 

 私は慌てて彼女へと声をかける。銀色に輝く髪の毛が今日はどうにも燻んで見えた。

 

「……」

「ククル?」

 

 彼女は返事をしなかった。本格的に私は何かが起きたのではないか勘繰る。ククルの性格からして、普段通りであればすぐにこちらへ駆け寄ってくるはずだ。それが何も反応しないなんて普通ではなかった。

 

「……ククルどういうことだ?」

 

 リムさんもまた彼女へと声をかける。ただ同じように反応はない。

 

「身体は? 怪我はない?」

 

 私はククルへと近づく。そうすると彼女はビクッと体を震わせた。

 

「ククル? 何があったのかな? いやごめん。落ち着いてからがいいか」

 

 私は抱き抱えながらにその背を撫でてやる。ククルはリムさんの姉とはいえ精神的に不安定だ。出来るだけ刺激しないよう優しく接してあげる。そして暫くして彼女は口を開いた、

 

「……ったの」

「ん?」

 

 ククルがボソボソと話したためにその声を聞き取ることができなかった。

 

「……えちゃったの」

「……えっと?」

 

 それでもまだ声が聞こえず聞き返す。彼女はスウと息を吸い込んだ。

 

「――燃えちゃったの!!」


 ククルの声は今度こそ私の耳元へもちゃんと聞こえた。

 

「……燃えちゃった、だと?」

 

 リムさんがククルへと詰め寄る。私は慌てて二人の間に入る。


「スーニャ、邪魔だてするな。――殺すぞ?」

 

 わーお。本気だよこれ。本当に殺されかねない殺気を放っていらっしゃる。

 

「いや気持ちは分かります。ただほら事情も聞かないと……」

「事情?」

 

 ハッと笑いながらにリムさんが近づいてくる。

 

「なら聞かせてもらおうか。なんだこれは? なんで私の家が燃えたんだ? ククル」

 

 リムさんの声にククルも流石にまずいと思ったのかフルフルと震えている。

 

「ほらそんな詰め寄ると答えづらいでしょう?」

「……ならスーニャ、貴様が聞け。私は今そんな余裕などない」

 

 まあリムさんの気持ちも分からないではない。家は焼かれ、更には生き甲斐ともいえる研究の道具も全て消失したのだから。心中穏やかとはいかないだろう。

 

「……ククル? えっと何があったのかな?」

 

 ククルには私がミームと戦う時に力を借りた。その為に今は本来の実力を発揮できない状況にある。もし襲われたのであれば抵抗できなくとも無理はない。

 

「……」

「ククル?」

 

 先ほどと同じくククルは黙り込む。私は極力刺激しないように彼女へと声をかける。後ろにはまさしく鬼のような顔面をした神様が控えているのだ。早く理由だけ聞いてしまおう。

 

「……あのね。怒らない?」

「勿論怒らないよー。……ん?」

 

 反射的に答えてしまったがその問いには違和感が残った。

 

「……私ね。スーニャ達がそろそろ帰ってくると思ったの」

 

 確かに元々伝えていた帰り時間とほとんど乖離はなかった。

 

「でね。みんな疲れてると思ってご飯を用意しておこうと思ったの」

 

 あんな情緒不安定だった子がこんなに立派になって……。なんて普通だったら思うが、今はただ嫌な予感しかしない。

 

「それで釜に火をつけたら他のとこにも広がっちゃって、消そうと思ったんだけども、全然消えなくて」

 

 あーやっぱりそーだ。色々なにかあったのかと思ったけども全然そういうことではないらしい。

 

「でも頑張ったんだよ? コップのお水で火を消そうとしたり、フーってして吹き飛ばそうとしたりしたけど、全然ダメだったの!」

 

 そりゃそんなのじゃまさしく焼石に水だ。むしろ悪化させてるんじゃなかろうか。

 

「だんだん火がお家に回ってきてどうしよー!? って思ってたらスーニャ達が帰ってきたの! ね! どうしたら元通りになるかな!?」

「……うん。もう多分元通りにはならないよ」

 

『えー!?』なんて言っているが、もう全焼と言っていいほどには燃えてしまっている。ここから直すのは至難の技だろう。さてどうしたものかと眺めていると、リムさんに肩を叩かれた。

 

「リムさん……?」

「……全部燃えたな」

「……ええ」

 

 確かに燃えた。目の前にはまだ火柱が立っていて住居だったはずのそれを燃やし尽くしている。

 

「……ククルの見張りは、貴様の役目だったな」

「……ええ。……え?」

「……全部残らず元に戻せ。でなければ私が貴様を殺すぞ」

 

 本気の殺意が籠った視線。私は言い訳も反論もできずにただ頷くのみだった。


 そして、私の借金生活が始まったのだ。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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