【2-2-2】
「……レナード?」
「ええ。お変わりなさそうで」
「え、えー! 何でここにいるのさ?」
いやまさか同じ部屋にいたのが彼だったなんて。会うのはいつぶりだろうか。マグシア建国の時? いやでもあの時は直接は会ってはいないし。
「どこかで会えないかと思ってはいたのですがね。そうそう都合良く機会も無くて」
「いや本当にねー。多分そっちも何かと忙しいだろうし」
「いえ俺は言うほどでもないですよ。もちろん昔ほど自由ではないですが」
『あの頃が懐かしいですね』と目を細めながらに遠くを見ている。確かにあの頃のみんなで暮らしていた生活が、なんだか信じられないものに思えた。
「ちょこちょこ帰ってきたらリムさん達も喜ぶんじゃないの?」
「それはどうでしょうね? リム様は気にも止めていないような気もしますが」
「いやーそんなことないって。ああ見えて気にしてると思うけどなー」
あんな態度だが案外気にしいだから。もしレナードに何かあったりしたら一目散に駆け付けたり。……いや流石にそこまではないか。
「そういえばやっぱ大人の身体なんだ?」
今のレナードはあの時のような子供の容姿ではなく大人の姿を取っていた。
「ええ。まあ昔からもそうですが今は圧倒的にこの姿が多いですよ。稀に子供の姿になったりもしますがね」
『その姿の方が都合がいい場合もあるので』なんて言っているがいやどういう場合なのだろうか。
「ふーんー? まあでも私からすると子供の姿の方が見慣れてるかな?」
「そうですか? では姿を変えましょうか? 貴方が言うなら――「――ちょっとちょっと。ええですか?」
コホンと、マーニャさんが話に加わってくる。
「……久々に会って話に花が咲くのは結構なんですが、今は別の話をさせてもろてもいいですか?」
ああそうだった。レナードに会った驚きで少し脱線してしまった。
「それでなんでここにレナードがいるの? マーニャさんと何かを話していたってことでしょ?」
『まあ私とは関係ないことかもしれないけど』と言うが2人は押し黙ったままだ。
「ん? あれえっと?」
「……スーニャ、俺とマーニャレスカが話していた内容はまさしく貴方に関係がある話なんです」
レナードは重たげに口を開く。
「……私に関係ある話?」
彼が頷く。ただ一体なんだろう。マグシアの宰相とギルドの長が私の話をわざわざするなんて。
「ええ。ただその前に今の情勢について説明しましょうか」
レナードはマーニャさんに紙とペンを用意してもらい、目の前に何やら書き始めた。少ししてそれは今私達がいる大陸や国々を描いているのだと分かった。
「今この世界は大きく三つの国に分かれます」
「ああ。マグシアと、フクローラン、それとニンフェアでしょ?」
レナードは頷き話を続ける。
「マグシアの前身はマグノリアとラフェシアです。マグノリアは亜族の国々が、ラフェシアは人族の国々が連なって生まれました」
それも当然知っている。私もそれぞれとの関わりもあったのだから。
「ではその前は? どんな国があったのか? スーニャはご存知ですか?」
「え゙? えっと〜……」
突然の問いに窮する。いやそれは、過去に学んだような記憶はあるけども、まさかこんな所で昔の歴史の授業の知識を掘り起こすことになるなんて。
「確か色んな国々が生まれては消えてってくらいにしか認識ないかなぁ〜?」
曖昧な回答で濁す。だが意外にもレナードは私の回答に満足気だった。
「その通りです。過去幾つもの国が生まれました。……そしてそれらの国の多くはある理由で滅びています」
「ん? ある理由?」
「ええ。ここからですね。スーニャに関わってくるのは」
え滅びる理由に私が関連する? 私はいまだにレナードの意図が読めなかった。
「ある理由とは何か思いつきますか?」
またレナード先生に指名される。
「……普通だったら他国との争いとか。それとは別なら飢餓や病気とかかな?」
「はい。確かにスーニャが言う通りそれらの理由で滅んだ国もあります」
ということはレナードが言っている理由とは違うということか。
「えー、他になんかあるかな?」
そもそも国が滅ぶという事自体が壮大な話すぎてあまりイメージが湧かない。ラフェシアもマグノリアも滅びたわけではないし。頭を捻らせているとレナードが笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「ふふっ。この世界においては至極簡単な理由ですよ。つまりは、太古の神々によって滅ぼされたのです」
「……あー」
確かに太古の神々には幾つかの言い伝えがあった。曰く一夜で国を滅ぼしただったか? もう忘れかけていた。
「ただの言い伝えかと思ってたけど、本当だったんだ?」
「ええ。ある国は彼女達の逆鱗に触れ、ある国は彼女達の気まぐれによって。またある国には彼女達の指揮のもと争い、滅んだ」
いやそれだけ聞くとなんとも迷惑な……。邪神と呼ばれてもおかしくないのでは? こんな事言えばリムさん辺り怒る、いや案外笑ってそうだな。
「彼女達の力は絶対で、他の誰もが抵抗する事は出来ません。……出来ませんでした」
ずっと黙っていたマーニャさんがチラリと私を見てくる。何を言いたいのかは分かった。でも私もあえては反応はしなかった。
「そこに突如現れたのが、貴方スーニャです」
「……うーむむむ」
なんと言うべきか、いやでも言いたい事はわかった。なんとなく話の核心に近づきつつある。
「マグシアは貴方と敵対する事を宣言しています」
『まあ言ってしまえばポーズでしかないですが』なんて言っているが、いやその国の重鎮がそんな易々と……。
「ただ他にも貴方を排除しようとする国がありました」
レナードは窓から外を眺めて、そして視線を私に戻す。
「――それが太古の神々を崇め奉る宗教国家であり、神々の長姉ギィが君臨するフクローランです」




